129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T11.[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

[1oral411-17] T11.[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Sun. Sep 4, 2022 1:30 PM - 3:30 PM oral room 4 (Build. 14, 401)

Chiar:Dan MATSUMOTO(AIST), Miwa Yokokawa

3:00 PM - 3:15 PM

[T11-O-6] A new chemical weathering index for sediments containing authigenic and biogenic materials: RW index

*Tenichi CHO1, Tohru OHTA1 (1. Waseda University)

Keywords:Chemical weathering, Major elements, Multivariate statistics, Paleoenvironment, W index

大陸地殻の化学風化は,気候条件を反映して進行するため,過去の気候の復元に活用できる指標となる.また,化学風化は大気CO2の消費を通して気候を寒冷化させることで地球環境の温度調整を担うことや,大陸地殻から海洋への栄養塩供給を担うことで,地球表層環境を制御する重要なプロセスである.風化生成物である砕屑物の化学組成は,生成当時の風化強度を反映する.したがって,砕屑物の主要元素を用いた風化指標は,過去の風化度を見積もる際に良く用いられてきた(Nesbitt and Young, 1982).しかし,堆積物・堆積岩の化学組成は,風化強度のみによって規定されるわけではなく,源岩の化学組成の差異によっても変化する.この問題を是正したのが風化指標W値(Ohta and Arai, 2007)であり,化学風化と源岩組成に依存した化学組成情報を独立化させた.しかしながら,W値は,堆積物にしばしば混入する生物源や続成起源物質(シリカ,カルサイト等)による化学組成変化の影響を補正できていない.
そこで,本研究ではこの問題を解決するために,生物源や続成起源物質からの寄与が考えられるSiO2,CaO,P2O5を用いない新たな化学風化指標RW indexを構築した.これは,様々な組成をもつ未風化な火成岩と現世風化プロファイルの主要元素のデータセットに多変量統計解析を適用することにより,SiO2,CaO,P2O5の値を使用せずに源岩組成トレンドと化学風化トレンドを統計的に独立に抽出することで構築されたものである.火成岩のデータはUSGS,GSJの標準試料などを,現世風化プロファイルについては熱帯雨林気候や温帯気候,乾燥気候,氷雪気候に発達するサプロライトやラテライトなどを使用した.この組成データのデータセットについて有心対数比変換を施した後に,独立成分分析を適用し,源岩組成(苦鉄質~珪長質)の差異によるトレンドと化学風化のトレンドの2つの独立成分を抽出した.この主要元素の対数の線形結合で表される2つの軸を,等長対数比変換の逆写像を用いることで,新たなデータを投影することのできる三角図に整備した(mafic-felsic-RW diagram).
RW indexの構築には使用していない現世の風化プロファイルや古土壌のデータにRW indexを適用することで,RW indexの有用性を確認した.花崗岩と玄武岩のサプロライトプロファイルにRW indexを適用したところ,地中の未風化の源岩から風化が進行している表層に近づくに伴いRW indexの値が上昇した.また,RW indexを異なる気候帯に発達する現世土壌に適用した結果,寒冷気候,温暖気候,熱帯雨林気候の順に化学風化度を反映してRW indexの値が増加した.さらに,カルサイトノジュールを多く含む古土壌プロファイルにRW indexを適用した結果,カルサイトの濃度変化傾向とは独立に,土壌表面に近づくにつれて風化度が上昇する傾向を示した.以上の結果より,RW indexは「異なる源岩組成をもつ砕屑物について適用可能」,「多元素を用いているために特定の元素濃度に影響されづらい」といったW値の利点を引き継ぎつつ,シリカ,カルサイト,アパタイトといった生物・続成起源物質の混入の影響にも強固な指標であることが確かめられた.RW indexにより,続成や生物源のシリカ,カルサイトを多量に含む浅海堆積物や陸成堆積物においても,追加の実験や補正を必要とせずにケイ酸塩化学風化度を簡便に算出することが可能となったため,今後の陸成層・海成層双方を用いた複合的な古環境解析においての適用が期待される.
文献:
Nesbitt and Young, 1982, Nature 299, 715-717. Ohta and Arai, 2007, Chem. Geol. 240, 280-297.