129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Oral

G1-2.sub-session02

[1oral501-07] G1-2.sub-session02

Sun. Sep 4, 2022 9:00 AM - 10:45 AM oral room 5 (Build. 14, 402)

Chiar:Masami WATANABE, Yoshihiro Takeshita, Muneki Mitamura, Yoshitaka Nagahashi(Fukushima University)

9:45 AM - 10:00 AM

[G2-O-4] Paleovegetation change in the midstream area of the Shimada River, Southeast Yamaguchi prefecture, Southwest Japan - Highland colonies and farming in the Yayoi period -

*Masami WATANABE1,2, Naohiko TABATA3 (1. Archaeological Research Consultant, Inc., 2. Shimane Univ., 3. Yamaguchi Univ.)

Keywords:Pollen analysis, Yayoi period, Highland colonies, Paleovegetation change, farming

はじめに
 山口県南東部、周南市を流れる島田川中流域右岸(北岸)の丘陵上には、弥生時代中期~終末期の高地性集落跡である石光遺跡、天王遺跡、追迫遺跡、岡山遺跡が分布する(谷口編,1988など)。一方、丘陵上に立地する高地性集落出現の背景には、「戦争」をはじめとする何らかの社会的緊張が想定されている(小野編,1953)が、現在まで結論が得られていない(田畑,2006)。また、高地性集落の研究において、周辺の低地に立地する遺跡との関係や生業についても不明な点が多い。
 今回の講演では、追迫遺跡,天王遺跡と岡山遺跡の間(安田地区)の低地で採取したボーリング試料を対象とした花粉分析及び14C年代測定結果について報告し、高地性集落の眼下に広がる沖積平野と生業の場について考察するとともに、弥生時代以降の古植生変遷について考察する。
調査地点・調査方法
 図1にボーリング地点と遺跡の関係、及び各地点のボーリング柱状図を示す。SKY-1、2の2地点で機械ボーリングを用いた、トリプルサンプラーによるオールコアサンプルを実施した。また、全ての採取試料は文化財調査コンサルタント(株)の試験室に持ち帰り、アクリル管から抜き取り、観察後、試料の粒度によって1cm~5cmの厚さで分割を行った。その後、試料観察を基に図1の柱状図を作成した。
 SKY-1では地表下4mまでの試料を採取したが、表層を除きほとんどが砂礫層であった。一方、SKY-2では地表下2.3m付近まで腐植に富む砂質粘土~シルトが分布し、下位に礫混じり粘土~中粒砂層が続いた。試料観察結果を基に、SKY-2について花粉分析(渡辺;2010による)を行った。
分析結果・考察
 花粉分析結果から、Ⅰ~Ⅴ帯の5局地花粉帯を設定し、更にⅠ帯をa~c亜帯、Ⅲ帯をa、b亜帯に細分した。以下に、下位(Ⅴ帯)から、概要を示す。
 Ⅴ~Ⅳ帯では花粉・胞子化石の含有量が少なく、統計処理に十分な200粒の木本花粉化石が検出できなかった。また、シダ類胞子化石の占める割合が高かった。Ⅴ帯ではアカガシ属、シイノキ属-マテバシイ属などの照葉樹林要素の木本花粉化石が多く検出され、Ⅳ帯では温帯針葉樹のコウヤマキ属花粉化石が多く検出された。
 Ⅲ~Ⅰ帯では十分な量の木本花粉が検出されたものの、b亜帯とした下部2試料の花粉・胞子化石含有量はやや少なかった。Ⅲ帯を通してマツ属(複維管束亜属)花粉化石が増加傾向を示すほか、スギ属花粉化石が増加(b亜帯)、減少(a亜帯)傾向を示す。また、Ⅲ帯から上位では、栽培種であるイネを含むイネ科(40ミクロン以上)花粉化石が多量に検出されるほか、栽培種のソバ属花粉化石が低率であるが連続して検出されており、調査地を含む近辺でイネやソバの栽培が連綿と行われていたものと考えられる。Ⅲ帯基底部からは弥生時代早期後半に相当する2,725±25 yrBP(913-813 cal BC)の年代測定値が得られている。Ⅱ帯でも引き続きマツ属(複維管束亜属)花粉化石が増加傾向を示す。Ⅰ帯ではマツ属(複維管束亜属)花粉化石が高率を示し、その他の木本花粉化石は低率である。下位のc亜帯では栽培の可能性が指摘できるアカザ科-ヒユ科、アブラナ科花粉化石が増加し、ソラマメ属花粉化石も検出される。b亜帯ではスギ属花粉化石が高率になり、近・現代のスギ植林の影響が示唆される。a亜帯では、再びマツ属(複維管束亜属)花粉化石が高率になり、その他の木本本花粉化石は低率になる。
謝辞
 本研究を進めるに際し、ボーリング用地の御提供を頂いた地権者、耕作者の方々、ボーリング作業を実施していただいた株式会社宇部建設コンサルタント、試料の分割・整理、データ整理、図面作成など本研究の多くの部分に協力いただいた文化財調査コンサルタント株式会社 平佐直子氏、以上の方々に厚くお礼申し上げます。
 また、本研究には日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(C) 課題番号20K01074(代表者 田畑直彦)を利用した。
引用文献
小野忠凞編(1953)『島田川 周防島田川流域の遺跡調査研究報告』,谷口哲一編(1988)『天王遺跡』,田畑直彦(2006)日本考古学協会2006年度愛媛大会 発表要旨集, 177-198,渡辺正巳(2010)『必携考古資料の自然科学調査法』,174-177.