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[G3-O-1] 千葉県九十九里浜におけるガス湧出地点の堆積構造の例
キーワード:ガス湧出、濃青灰色砂、脱ガスパイプ
はじめに
千葉県九十九里浜におけるガス湧出地点の堆積構造の例 はじめに千葉県九十九里平野では,「上ガス」と呼ばれる天然ガスの湧出現象が水田や河川で気泡として見られる.このガスは上総層群中の遊離ガスの可能性が高い(楡井ほか,1978;風岡ほか, 2006).また,九十九里浜南半部の潮間帯(前浜)においても天然ガスの湧出が認められている(吉田ほか, 2008, 2009, 2020).ガスの湧出箇所は上述のような水域以外,目視による確認は難しい.
本発表では九十九里浜においてガス湧出地点の堆積構造を示し,過去の地層中におけるガス湧出痕の可能性の一例として報告する.九十九里平野の表層に分布する潮間帯(前浜)堆積物中,下総層群中の潮間帯(前浜)堆積物中でこの構造を発見できた場合,過去にガス湧出が存在した可能性が高いということができ,計測機器等でガスの存在が認められれば爆発事故や火災等の事故を未然に防ぐ対策が可能となる.
調査地及び手法
調査地は千葉県九十九里平野中央部を流れる真亀川の河口より南方約900mの海岸であり,この地点は2007年にガス湧出が原因で起こる潮溜まりの白濁現象が報告されている.ここでは,常にガスが湧出している地点である(吉田ほか,2012).地表面にある径5cmほどのガス湧出孔の周辺をシャベルで掘削し,堆積構造を壊さぬように採取し,その地層断面を観察した.採取した地層試料は,深度25 cm・幅20 cm・奥行き10-15 cmである.湧出しているガスについてはメスシリンダーで捕集し,その流量を測定した.
調査結果
ガス湧出地点の地層断面について述べる.地表面で認められるガス湧出孔は,湧出部の中心が濃青灰色を呈している(左図).この湧出孔の地層断面を右図に示す.断面の深度17 cm以深は,還元色を示す濃青灰色の砂が分布し,その上位には地表まで平行なラミナを持つ淡褐灰色砂が重なる.濃青灰色砂部には貝殻破片(ヒメバカガイ・フジノハナガイ;径20 mm以下)の密集部があり,この密集部は淡褐灰色砂の中を貝殻破片の脈となって深度2 cmのところまで伸びている.この貝殻破片脈の幅は3-5 cmであり,そこがガスの流路(脱ガスパイプ)となり貝殻破片脈周辺を還元させ濃青灰色となっている.深度2 cm以浅の淡褐灰色の砂層は,貝殻破片脈を浸食もしくは覆い堆積している.この貝殻破片脈を通り湧出していたガスの流量は毎分約500 mLであった.
引用文献
風岡 修ほか,2006,九十九里地域中部における上ガスの発生状況-上ガスに関する地質環境調査結果.地質汚染-医療地質-社会地質学会誌,2,82-91.
楡井 久・矢田恒晴,1978,天然ガス生産に伴う天然ガス(上ガス)湧出被害と天然ガス湧出現象のメカニズムについて(その2).全国公害研究所会誌,2,53–55.
吉田 剛ほか,2008,千葉県長生村一松海岸で起きた潮溜まりの白濁現象.第17回環境地質学シンポジウム論文集,17,41–46.
吉田 剛ほか,2009,天然ガスの湧出する潮溜まりの白濁と色調変化.第19回環境地質学シンポジウム論文集,19,191–196.
吉田 剛ほか,2012,千葉県九十九里浜の天然ガス(上ガス)の湧出する潮溜まりの白濁現象.地質学雑誌, 118, 172-183.
吉田剛, 2020, 九十九里浜南半部における潮溜まりの白濁の発生可能性地域.令和元年度年報
千葉県九十九里浜におけるガス湧出地点の堆積構造の例 はじめに千葉県九十九里平野では,「上ガス」と呼ばれる天然ガスの湧出現象が水田や河川で気泡として見られる.このガスは上総層群中の遊離ガスの可能性が高い(楡井ほか,1978;風岡ほか, 2006).また,九十九里浜南半部の潮間帯(前浜)においても天然ガスの湧出が認められている(吉田ほか, 2008, 2009, 2020).ガスの湧出箇所は上述のような水域以外,目視による確認は難しい.
本発表では九十九里浜においてガス湧出地点の堆積構造を示し,過去の地層中におけるガス湧出痕の可能性の一例として報告する.九十九里平野の表層に分布する潮間帯(前浜)堆積物中,下総層群中の潮間帯(前浜)堆積物中でこの構造を発見できた場合,過去にガス湧出が存在した可能性が高いということができ,計測機器等でガスの存在が認められれば爆発事故や火災等の事故を未然に防ぐ対策が可能となる.
調査地及び手法
調査地は千葉県九十九里平野中央部を流れる真亀川の河口より南方約900mの海岸であり,この地点は2007年にガス湧出が原因で起こる潮溜まりの白濁現象が報告されている.ここでは,常にガスが湧出している地点である(吉田ほか,2012).地表面にある径5cmほどのガス湧出孔の周辺をシャベルで掘削し,堆積構造を壊さぬように採取し,その地層断面を観察した.採取した地層試料は,深度25 cm・幅20 cm・奥行き10-15 cmである.湧出しているガスについてはメスシリンダーで捕集し,その流量を測定した.
調査結果
ガス湧出地点の地層断面について述べる.地表面で認められるガス湧出孔は,湧出部の中心が濃青灰色を呈している(左図).この湧出孔の地層断面を右図に示す.断面の深度17 cm以深は,還元色を示す濃青灰色の砂が分布し,その上位には地表まで平行なラミナを持つ淡褐灰色砂が重なる.濃青灰色砂部には貝殻破片(ヒメバカガイ・フジノハナガイ;径20 mm以下)の密集部があり,この密集部は淡褐灰色砂の中を貝殻破片の脈となって深度2 cmのところまで伸びている.この貝殻破片脈の幅は3-5 cmであり,そこがガスの流路(脱ガスパイプ)となり貝殻破片脈周辺を還元させ濃青灰色となっている.深度2 cm以浅の淡褐灰色の砂層は,貝殻破片脈を浸食もしくは覆い堆積している.この貝殻破片脈を通り湧出していたガスの流量は毎分約500 mLであった.
引用文献
風岡 修ほか,2006,九十九里地域中部における上ガスの発生状況-上ガスに関する地質環境調査結果.地質汚染-医療地質-社会地質学会誌,2,82-91.
楡井 久・矢田恒晴,1978,天然ガス生産に伴う天然ガス(上ガス)湧出被害と天然ガス湧出現象のメカニズムについて(その2).全国公害研究所会誌,2,53–55.
吉田 剛ほか,2008,千葉県長生村一松海岸で起きた潮溜まりの白濁現象.第17回環境地質学シンポジウム論文集,17,41–46.
吉田 剛ほか,2009,天然ガスの湧出する潮溜まりの白濁と色調変化.第19回環境地質学シンポジウム論文集,19,191–196.
吉田 剛ほか,2012,千葉県九十九里浜の天然ガス(上ガス)の湧出する潮溜まりの白濁現象.地質学雑誌, 118, 172-183.
吉田剛, 2020, 九十九里浜南半部における潮溜まりの白濁の発生可能性地域.令和元年度年報