3:15 PM - 3:30 PM
[G4-O-8] Network-based Remote Laboratory in Distance Education: Scanning Electron Microscopy Experiment
Keywords:distance education, scanning electron microscope, desktop sharing, remote laboratory
放送大学の遠隔教育における,ネットワークを利用したリモート実験室を紹介し,走査型電子顕微鏡観察実験の実施例と学生評価の結果を紹介する。
機器を使用した分析実験体験は,科学教養教育の一環として重要である。放送大学では,各都道府県に配置された学習センターにおけるスクーリング(面接授業)で,各種実験科目を開講し,教養としての科学実験科目を提供している。しかし,各学習センターで,高額でメンテナンスの必要な機器を利用した実習に対応することは,予算,スペース,人員的な問題を含んでいる。以上の遠隔教育の状況をふまえ,私たちは,最近の分析・観測機器の特性を活用して,リモート・オンラインで機器を用いた実験実習を提供することを目指して,リモート実験室の構築を計画した。その背景には,多くの分析・観測機器がコンピュータコントロールに移行しており,ネットワーク経由での遠隔操作で主な機能を操作することが可能になったことが挙げられる。リモート実験室は,実際に機器を操作するという点で,コンピュータ上に仮想実験室を構築するバーチャルラボとは性格が異なる。
この計画の第一弾として,走査型電子顕微鏡観察実験を面接授業,およびオンライン講義で実現する方法を紹介する。使用機器には,電源のオンオフと試料交換以外の分析操作をWindows のアプリケーション上で行う走査型電子顕微鏡(日立ハイテック製TM3030型)を用いた。TM3030は,USB接続されたPC上で操作ソフトを介して操作する。PCのOSは,MS-Windows 8.1proである。 このPCをリモートでコントロールすることで,TM3030を外部から利用することが可能となる。本研究では,Microsoft Remote Desktop を利用する方法と,zoomの共有機能を利用する方法の2通りの方法で,リモート実験を実現した。
Microsoft Remote Desktop は,MS-Windows 8.1proに標準で搭載されているデスクトップ共有機能である。接続のクライアント側は,MS-Windows,MacOS, iOS, Android が利用可能で,MS-Windows 以外の環境では,マイクロソフト社が無料で提供するクライアントアプリを使用する。リモートデスクトップ機能により接続した後は,TM3030操作ソフトを起動して,あたかも装置の側に座っているかのように,TM3030を操作可能である。およそ5Mbps程度のインターネット回線速度であれば直接操作とほぼ同じ感覚で操作できる。
2021年度よりZoomを用いたオンライン授業が開始されたため,あらたな共有形態としてzoomによるアプリケーション画面の共有とコントロール機能を用いた実験方法を導入した。この方法では,複数の受講者が同時に実習を行うことが可能であり,実習中に講師が解説を付与したり,受講生間で議論・提案しながら観察を進めるなど,より双方向性の高い実習が可能である。
放送大学では,2015年度から地球科学に関する面接授業において,および2020年度からはオンライン授業においても,これらの方法によるリモート実験を実施してきた。接続,操作方法は手順書や動画により説明している。観察の対象は,火山灰,砂漠の砂粒子,微小化石(有孔虫,珪藻),温泉沈殿物などで,探索と形態観察に基づく考察を課題としている。受講生の感想では,電子顕微鏡という装置を操作するという経験,バーチャル実験とは異なり本当に自由に操作できること,探索操作の面白さ,高倍率観察による感動などが,ポジティブな評価としてあげられる。一方で,一部の受講者からは,自由すぎて途方に暮れた。ガイドツアーつきの観察を希望するという感想が寄せられた。受講生の多様なリテラシーレベルへの対応が今後の検討課題であると言える。
機器を使用した分析実験体験は,科学教養教育の一環として重要である。放送大学では,各都道府県に配置された学習センターにおけるスクーリング(面接授業)で,各種実験科目を開講し,教養としての科学実験科目を提供している。しかし,各学習センターで,高額でメンテナンスの必要な機器を利用した実習に対応することは,予算,スペース,人員的な問題を含んでいる。以上の遠隔教育の状況をふまえ,私たちは,最近の分析・観測機器の特性を活用して,リモート・オンラインで機器を用いた実験実習を提供することを目指して,リモート実験室の構築を計画した。その背景には,多くの分析・観測機器がコンピュータコントロールに移行しており,ネットワーク経由での遠隔操作で主な機能を操作することが可能になったことが挙げられる。リモート実験室は,実際に機器を操作するという点で,コンピュータ上に仮想実験室を構築するバーチャルラボとは性格が異なる。
この計画の第一弾として,走査型電子顕微鏡観察実験を面接授業,およびオンライン講義で実現する方法を紹介する。使用機器には,電源のオンオフと試料交換以外の分析操作をWindows のアプリケーション上で行う走査型電子顕微鏡(日立ハイテック製TM3030型)を用いた。TM3030は,USB接続されたPC上で操作ソフトを介して操作する。PCのOSは,MS-Windows 8.1proである。 このPCをリモートでコントロールすることで,TM3030を外部から利用することが可能となる。本研究では,Microsoft Remote Desktop を利用する方法と,zoomの共有機能を利用する方法の2通りの方法で,リモート実験を実現した。
Microsoft Remote Desktop は,MS-Windows 8.1proに標準で搭載されているデスクトップ共有機能である。接続のクライアント側は,MS-Windows,MacOS, iOS, Android が利用可能で,MS-Windows 以外の環境では,マイクロソフト社が無料で提供するクライアントアプリを使用する。リモートデスクトップ機能により接続した後は,TM3030操作ソフトを起動して,あたかも装置の側に座っているかのように,TM3030を操作可能である。およそ5Mbps程度のインターネット回線速度であれば直接操作とほぼ同じ感覚で操作できる。
2021年度よりZoomを用いたオンライン授業が開始されたため,あらたな共有形態としてzoomによるアプリケーション画面の共有とコントロール機能を用いた実験方法を導入した。この方法では,複数の受講者が同時に実習を行うことが可能であり,実習中に講師が解説を付与したり,受講生間で議論・提案しながら観察を進めるなど,より双方向性の高い実習が可能である。
放送大学では,2015年度から地球科学に関する面接授業において,および2020年度からはオンライン授業においても,これらの方法によるリモート実験を実施してきた。接続,操作方法は手順書や動画により説明している。観察の対象は,火山灰,砂漠の砂粒子,微小化石(有孔虫,珪藻),温泉沈殿物などで,探索と形態観察に基づく考察を課題としている。受講生の感想では,電子顕微鏡という装置を操作するという経験,バーチャル実験とは異なり本当に自由に操作できること,探索操作の面白さ,高倍率観察による感動などが,ポジティブな評価としてあげられる。一方で,一部の受講者からは,自由すぎて途方に暮れた。ガイドツアーつきの観察を希望するという感想が寄せられた。受講生の多様なリテラシーレベルへの対応が今後の検討課題であると言える。