3:30 PM - 3:45 PM
[T10-O-7] Statistical analyses on global geochemical data structure of deep-sea sediments
Keywords:deep-sea sediments, independent component analysis, statistical analysis, REY-rich mud
レアアース (Rare-earth elements and yttrium, REY) は,特異な磁気的・光学的性質を有するため,様々なハイテク製品に不可欠であり,その消費量は年々増加している.しかしながら,陸上で採掘される既存のREY資源については,供給リスクや採掘時の環境への悪影響が世界的な問題となっている [1].このような状況の中,REYを濃集した海底堆積物「レアアース泥」が太平洋に広く分布することが明らかとなり,新規レアアース資源として有望視されている [2].
レアアース泥を含む深海堆積物は一般に,多種多様な起源物質の混合物である.そこで,多元素組成データの全体構造から,起源物質の情報を分離・抽出し,多元素のデータが持つ地球科学的意味を適切に読み解くことで,レアアース泥の時間的・空間的な分布を支配する要素を明らかにできると期待される.このような多変量の地球化学データの解析には,独立成分分析 (Independent Component Analysis, ICA) が有用であることが近年明らかとなってきている [3]. Yasukawa et al. [3] は,レアアース泥の起源の解析を目的として,太平洋及びインド洋から得られた約4,000試料の全岩化学組成データに対して,ICAによる解析を行った.その結果,レアアースの濃集に関連する成分は海水起源マンガン酸化物, リン酸カルシウムおよび熱水起源鉄酸化水酸化物であり, いずれの成分で特徴づけられるレアアース泥であっても,資源として高いポテンシャルを有するためには,十分に遅い堆積速度の下でゆっくりとREYを濃集する必要があることが示唆された.
しかしながら,これまでの研究では,解析対象試料の採取された海域が太平洋及びインド洋に限られていた.また,試料の種類についても遠洋性粘土および炭酸塩軟泥が大多数を占めていた.深海堆積物のバリエーションの全体像を捉えるためには,より広範なデータの収集が必要と考えられる.そこで本研究では,IODP (International Ocean Discovery Program) による航海で採取された海底掘削コア試料の化学組成データが公開されている「JOIDESデータベース」を中心として,公表されている文献情報をコンパイルし,世界中の様々な海域の多様な堆積物の化学組成データセットを構築する.そして,構築したグローバルデータセットに対して,ICAをはじめとする各種統計解析を行い,深海堆積物の化学組成が示す多元素のデータ構造を包括的に理解することを目的とする.本発表では特に,深海堆積物のグローバルな化学組成データ構造の中におけるレアアース泥の位置づけについて議論する予定である.
[1] N. Dushyantha et al., Ore Geol. Rev., 122, 103521 (2020).
[2] Y. Kato et al., Nat. Geosci., 4, 535-539 (2011).
[3] K. Yasukawa et al., Sci. Rep., 6, 29603 (2016).
レアアース泥を含む深海堆積物は一般に,多種多様な起源物質の混合物である.そこで,多元素組成データの全体構造から,起源物質の情報を分離・抽出し,多元素のデータが持つ地球科学的意味を適切に読み解くことで,レアアース泥の時間的・空間的な分布を支配する要素を明らかにできると期待される.このような多変量の地球化学データの解析には,独立成分分析 (Independent Component Analysis, ICA) が有用であることが近年明らかとなってきている [3]. Yasukawa et al. [3] は,レアアース泥の起源の解析を目的として,太平洋及びインド洋から得られた約4,000試料の全岩化学組成データに対して,ICAによる解析を行った.その結果,レアアースの濃集に関連する成分は海水起源マンガン酸化物, リン酸カルシウムおよび熱水起源鉄酸化水酸化物であり, いずれの成分で特徴づけられるレアアース泥であっても,資源として高いポテンシャルを有するためには,十分に遅い堆積速度の下でゆっくりとREYを濃集する必要があることが示唆された.
しかしながら,これまでの研究では,解析対象試料の採取された海域が太平洋及びインド洋に限られていた.また,試料の種類についても遠洋性粘土および炭酸塩軟泥が大多数を占めていた.深海堆積物のバリエーションの全体像を捉えるためには,より広範なデータの収集が必要と考えられる.そこで本研究では,IODP (International Ocean Discovery Program) による航海で採取された海底掘削コア試料の化学組成データが公開されている「JOIDESデータベース」を中心として,公表されている文献情報をコンパイルし,世界中の様々な海域の多様な堆積物の化学組成データセットを構築する.そして,構築したグローバルデータセットに対して,ICAをはじめとする各種統計解析を行い,深海堆積物の化学組成が示す多元素のデータ構造を包括的に理解することを目的とする.本発表では特に,深海堆積物のグローバルな化学組成データ構造の中におけるレアアース泥の位置づけについて議論する予定である.
[1] N. Dushyantha et al., Ore Geol. Rev., 122, 103521 (2020).
[2] Y. Kato et al., Nat. Geosci., 4, 535-539 (2011).
[3] K. Yasukawa et al., Sci. Rep., 6, 29603 (2016).