4:15 PM - 4:30 PM
[T10-O-10] Analysis of growth history of ferromanganese nodules using the X-ray CT and the multichemical feature map
Keywords:Ferromanganese Nodules, X-ray CT, Elemental Mapping, µXRF, Minamitorishima EEZ
Fe–Mn酸化物は、層厚数cmに達するのに数千万年かけて“ゆっくり”成長するため、組成の濃淡が100 µmオーダーで存在する。このようなFe–Mn酸化物内部の層構造と組成変動を正確に把握するためには、成長方向に直行する断面に記録された微細な組成変動を分析・解析する必要がある。近年、微細組成変動を明らかにするための強力なツールとして微小領域蛍光X線分析装置(µXRF)が注目され、Fe–Mn酸化物試料に応用した例が多く公表されるようになった [例えば1,2,3]。ただし従来の研究では、試料を切断するか割れて現れた面を研磨して分析面を取得するにあたって、内部構造の特徴を予め考慮することは不可能であった。そのため、観察・分析した断面が、その試料の成長履歴を正しく反映しているか、または、その試料が採取した地点を代表するものかどうかを判断する術がなかった。
これらの現状を打破する方法として我々は、地質試料の非破壊内部観察の手段として有用性が高く評価されているX線CTに着目し、調査航海で採取した全試料の網羅的な構造解析 [4] を行っている。例えば、複雑な内部構造を持つマンガンノジュールは、CT値を用いることでFe–Mn酸化物層を定量的に同定することができる。非破壊で構造を3次元で把握し、そのうえで試料を代表する断面を選定して、そこを切断し分析することで、成長履歴を正確に把握することが可能となる。
一方、µXRFを用いた分析の最大のメリットは、エネルギー分散型の特性X線検出器により軽元素(Si, Al等)から重元素(Ba, Mo等)までの各元素の濃度分布(元素組成マップ)を、同時に、かつ、最大幅10 cm以上になることもある断面全体に対し100 µm程度かそれ以下の高い空間分解能で取得できることである。しかし、多元素同時分析であるがゆえのデメリットとして、分析したサンプルが持つ2次元化学層序(化学構造)の情報を客観的に把握するには多くの労力を要することが問題となる。特に、網羅的なCT解析にもとづいて多くの試料をµXRF分析の対象とした場合には、直感的に各サンプルの化学構造を把握すると同時に、多くの試料同士の対比を容易に行うことができるような工夫が必要となってくる。
そこで我々は、マンガンノジュールの分析面においてµXRF分析によって観察された複数の元素の組成分布の情報を、1枚の画像に統合(マージ)して可視化する「化学特徴マップ」を提案した [5]。そして、南鳥島周辺に分布するマンガンノジュール密集域から採取されたサンプルに対し、化学特徴マップを用いて成長履歴を解析した事例を公表した [5,6]。化学特徴マップを導入することによって、広域対比 [5] や大きさの異なる試料間の層同定 [6] が容易になり、マンガンノジュール密集域形成の地質学的な背景を考察することが可能となった。本発表では、化学特徴マップを作成するにあたり重視した点と具体的な画像統合の方法 [5] を解説し、これまでに行った解析事例 [4,5,6] を紹介するとともに、CTと化学特徴マップの組み合わせを用いた統合解析の今後の展望について議論する。
[1] Hein et al. (2020) Nature Reviews Earth & Environment, 1, 158–169. [2] Usui et al. (2016) Ore Geology Reviews, 87, 71–87. [3] Benites et al. (2018) Minerals, 8, 488. [4] Nakamura et al. (2021) Minerals, 11, 1100. [5] Machida et al. (2021) Island Arc, 30, e12395. [6] Machida et al. (2021) Minerals, 11, 1246.
これらの現状を打破する方法として我々は、地質試料の非破壊内部観察の手段として有用性が高く評価されているX線CTに着目し、調査航海で採取した全試料の網羅的な構造解析 [4] を行っている。例えば、複雑な内部構造を持つマンガンノジュールは、CT値を用いることでFe–Mn酸化物層を定量的に同定することができる。非破壊で構造を3次元で把握し、そのうえで試料を代表する断面を選定して、そこを切断し分析することで、成長履歴を正確に把握することが可能となる。
一方、µXRFを用いた分析の最大のメリットは、エネルギー分散型の特性X線検出器により軽元素(Si, Al等)から重元素(Ba, Mo等)までの各元素の濃度分布(元素組成マップ)を、同時に、かつ、最大幅10 cm以上になることもある断面全体に対し100 µm程度かそれ以下の高い空間分解能で取得できることである。しかし、多元素同時分析であるがゆえのデメリットとして、分析したサンプルが持つ2次元化学層序(化学構造)の情報を客観的に把握するには多くの労力を要することが問題となる。特に、網羅的なCT解析にもとづいて多くの試料をµXRF分析の対象とした場合には、直感的に各サンプルの化学構造を把握すると同時に、多くの試料同士の対比を容易に行うことができるような工夫が必要となってくる。
そこで我々は、マンガンノジュールの分析面においてµXRF分析によって観察された複数の元素の組成分布の情報を、1枚の画像に統合(マージ)して可視化する「化学特徴マップ」を提案した [5]。そして、南鳥島周辺に分布するマンガンノジュール密集域から採取されたサンプルに対し、化学特徴マップを用いて成長履歴を解析した事例を公表した [5,6]。化学特徴マップを導入することによって、広域対比 [5] や大きさの異なる試料間の層同定 [6] が容易になり、マンガンノジュール密集域形成の地質学的な背景を考察することが可能となった。本発表では、化学特徴マップを作成するにあたり重視した点と具体的な画像統合の方法 [5] を解説し、これまでに行った解析事例 [4,5,6] を紹介するとともに、CTと化学特徴マップの組み合わせを用いた統合解析の今後の展望について議論する。
[1] Hein et al. (2020) Nature Reviews Earth & Environment, 1, 158–169. [2] Usui et al. (2016) Ore Geology Reviews, 87, 71–87. [3] Benites et al. (2018) Minerals, 8, 488. [4] Nakamura et al. (2021) Minerals, 11, 1100. [5] Machida et al. (2021) Island Arc, 30, e12395. [6] Machida et al. (2021) Minerals, 11, 1246.