129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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symposium

S2. [Symposium]Geology in the Anthropocene: Frontiers in boundary studies on age and material

[2oral213-27] S2. [Symposium]Geology in the Anthropocene: Frontiers in boundary studies on age and material

Mon. Sep 5, 2022 1:30 PM - 5:45 PM oral room 2 (Build. 14, 101)

Chiar:Yukio Isozaki, Hodaka Kawahata, Azumi KUROYANAGI

3:30 PM - 3:45 PM

[S2-O-8] A boundary study in making discrimination diagrams for detrital zircon

*Yusuke SAWAKI1 (1. The University of Tokyo)

Keywords:Granite, Zircon, Trace elements

花崗岩は惑星地球を特徴づける岩石の一つであり、その成因を明らかにするために数多の研究が為されてきた。上部大陸地殻は概ね花崗岩質であるとされるが、大陸形成史の解明において砕屑性ジルコンが2000年代以降注目を集めている。砂岩中に含まれる砕屑性ジルコンの大半は花崗岩由来であり、その年代頻度分布から、過去には花崗岩形成時期にいくつかのピークがある事が明らかになってきた(Rino et al., 2008)。これに加えて、ジルコンを供給した母岩組成などに関する情報も得る事ができれば、大陸形成史の理解がさらに深まると期待できる。花崗岩を分類する方法は多々あるが、本研究では花崗岩をI-, S-, M-, A-型に分類する方法に着目し、各型に含まれるジルコンの化学組成を調べ、母岩の違いを反映する元素の特定を行い、ジルコンの母岩推定図の作成を試みている。この判別図を作成するにあたって、2度の境界問題に直面する。1度目は母岩をどのような基準に沿ってI-, S-, M-, A型に分けるかであり、2度目は得られたデータから判別図を作成する際、どこに境界を引くかである。  最初に提案されたI-, S型は、オーストラリア・ラクラン褶曲帯に露出する花崗岩のうち、堆積岩の寄与が少ないものと多いものに対して使われたのがその始まりである(Chappell and White, 1974; White and Chappell, 1977)。その中では花崗岩の構成鉱物(Ca角閃石―白雲母)、Na濃度, Al濃度、Sr同位体比や捕獲岩等が分類時に重視され、これを多くの研究者が他の岩体にも適用した。その際、両型にまたがる性質を示す花崗岩も存在し、その都度分類指標の見直しが繰り返され(Chappell and White, 2001)、一般化されたような印象を受ける。1979年にM-, A型が追加された(Loisell & Wones, 1979; White, 1979)後も、各型の特徴は洗練されつつあるものの、一つの花崗岩が複数の型の性質を示してしまう問題は解消されていない。そのような状況下において、本研究ではアルカリ岩をA型に分類し、非アルカリ岩をSr同位体比に基づいてM-, I-, S型に分類した。その際重視したことは結晶分化による影響を受けにくい指標である。
 上記分類に基づいてジルコンの化学組成を眺めた時、NbもしくはTaとCe濃度に基づいて、上記4型中のジルコンが上手くわかれる事が明らかになった。想定されるメカニズムは以下のとおりである。A型ではマグマ中でのジルコン晶出が早いために、上記元素が他の鉱物に吸収される前にジルコンに分配されるために濃度が高くなる。反対にS型ではマグマ中でのジルコン晶出が遅く、先に上記元素が他の副次鉱物に吸収されてしまうためにジルコン中濃度が低くなる。M-, I型中のジルコンはA型と S型の中間に位置する。M型とI型で若干のNb及びTa濃度に違いが見られ、それは母岩が取り込んだ堆積岩量を反映していると思われる。メカニズムが想定されつつも互いに領域が重複している部分も存在し、明確な境界線を引くことは難しい。現状は確立頻度分布を用いて統計学的に境界を引いているがその妥当性については再検討の余地が残る。
 境界を定めるとき、数字で分けるのが簡便であって、分ける事自体には議論の余地はさほどなくなるが、数値そのものにそれほどの意味を込められない事が多い。一方であまりに意味を持たせた境界を用いると、その適用範囲に対して議論の余地が生じる。いつ何時も使える完璧な境界は存在しないため、その時々の目的に応じた使い分けが大事だと思われる。

[引用文献] Rino et al., (2008) Gondwana Research, 14(1-2), 51-72. Chappell and White, (1974) Pacif. Geol., 8, 173-174. White and Chappell, (1977) Tectonophysics, 43(1-2), 7-22. Chappell and White, (2001) Australian journal of earth sciences, 48(4), 489-499. Loisell & Wones, (1979) GSA Abstracts with Programs, 11, 468. White, (1979) GSA Abstracts with Programs, 11, 539.