3:15 PM - 3:30 PM
[T1-O-25] Indialite-staurolite-bearing polymetamorphic hornfelses from Unazuki area, Toyama Prefecture; Evidence for rapid cooling after low-P and high-T thermal metamorphism
Keywords:Unazuki schists, granitic rocks, medium P-type regional metamorphism, low-P and high-T thermal metamorphism, indialite, staurolite
富山県の宇奈月地域に産出する変成岩と深成岩の区分、分布、同位体年代値等について近年著しく情報量が増した。しかし特に花崗岩類の区分と年代値に関しては混乱が見られる(例えば、Horie et al. (2018)と竹内ら(2021))。西上原ら(2005)は中谷上流地域の苦鉄質鉱物に乏しく、マイロナイト化した紅色花崗岩から約250 MaのCHIME年代値を報告するとともに(図参照)、深成岩中の捕獲岩になった宇奈月片岩から約250~180 MaのCHIME年代値も報告している。ここでは中谷上流地域で採集した捕獲岩(多くは転石で、産状の詳細は不明)、特にインド石と十字石を含む複変成泥質ホルンフェルスの記載岩石学的特徴について改めて報告し、花崗岩類の区分と年代値に関する混乱解決の一助とする。 ① 中谷の流域は限定的で、上流部には苦鉄質鉱物に乏しく様々な程度にマイロナイト化した紅色の花崗岩が広範に分布する。この他に少量の角閃石斑レイ岩~閃緑岩も産出する。これらの深成岩中に宇奈月片岩が様々な大きさの捕獲岩となっている。 ② 少なくとも1980年までは、中谷上流部には砂防提や車の通行可能な道はなく、外部の岩石がこの流域に搬入された可能性はない。 ③ 捕獲岩には鉱物の定向配列や角礫化などの変形の痕跡が見られることが多く、熱変成作用時に変形作用があったことを示唆する。 ④ 捕獲岩には多量の白雲母や緑泥石、電気石などを含むものからそれらをほとんど含まないものまであり、「後退変成効果」は多様である。 ⑤ インド石-十字石含有複変成ホルンフェルスには、宇奈月十字石片岩と同様に、石墨を含むものと含まないものとがある。十字石は石墨を含む岩石の方に多量に出現(残存)するが、ホルンフェルス中の十字石は十字石片岩中のもの(長径数㎜から1㎝以上)に比べて細粒である(数㎜以下)。 ⑥ 主要なAl2SiO5鉱物は紅柱石であり、少量の珪線石や藍晶石も出現することがある。紅柱石は十字石を置換する場合でも針状~長柱状結晶の集合体のような産状を示すことが多い。珪線石はフィブロライトとして局所的に産する。藍晶石はインド石や黒雲母によって置換された残晶の産状を示す。 ⑦ コランダムが出現し、アルカリ長石と直接していることがある。 ⑧ 十字石とザクロ石はインド石や紅柱石、スピネル、コランダム、黒雲母などによって置換された残晶状の産状を示す(図参照)。 ⑨ インド石は十字石やザクロ石を置換する産状に加えて、細粒の珪線石、紅柱石、黒雲母、白雲母などを含む不規則な脈状の産状を示す(図参照)。インド石には偽双晶の関係を示す菫青石ラメラが見られ、インド石結晶中で菫青石が核形成し、成長したことを示している(Kitamura&Hiroi, 1982)。 この中でもっとも注目すべき点はインド石の産状と「保存」である。インド石は菫青石の高温型の多形で、火事が起きたインドの炭田の他に火山岩に伴って産する。一方、深成岩体の周辺のホルンフェルス中では、インド石として成長した場合も後に菫青石に転移している(例えば、Kitamura & Yamada, 1987)。したがって中谷の深成岩中の捕獲岩にインド石が産出することは例外的であり、低圧高温での熱変成後、急冷したことを示唆する。この点は、古生代後期の原岩形成後、250Maころの短期間(0.8-9.2Ma)に広域変成作用と熱変成作用が順次進行したとするHorie et al. (2018)の解析結果と調和的である。 引用文献 Kitamura & Hiroi, 1982, CMP, 80, 110-116; Kitamura & Yamada, 1987, CMP, 97, 1-6; 西上原ら, 2005, 地質学会講演要旨O-262; Horie et al., 2018, Chemical Geology, 484, 148-167; 竹内ら, 2021, 地質調査研究報告, 72, 41–64.