129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T1.[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

[2oral314-28] T1.[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

Mon. Sep 5, 2022 1:30 PM - 5:30 PM oral room 3 (Build. 14, 102)

Chiar:Nobuhiko NAKANO, Tatsuro Adachi, Kazuki Yoshida

5:15 PM - 5:30 PM

[T1-O-32] A mechanism for cyclic back-arc spreading

*Kazuhiko Ishii1, Simon R. Wallis2 (1. Department of Geosciences, Osaka Metropolitan University, 2. Department of Earth and Planetary Science, The University of Tokyo)

Keywords:Cyclic back-arc spreading, 660 km boundary, Numerical model, Stress, Subduction dynamics

トンガ弧の南フィジー海盆とラウ海盆やマリアナ弧のパレスベラ海盆とマリアナトラフの周期的な拡大に見られるように,背弧拡大は非定常的な過程である(文献1,2)。これらの背弧拡大は,火山弧でのリフティングに始まり,典型的な背弧拡大に移行する。本研究では,プレート沈み込みの2次元数値モデルを用いて,周期的背弧拡大のメカニズムとそれに必要な条件について検討した。モデルは,水平距離7000km,深さ2900kmの領域で,深さ410 kmと660 kmの相転移を考慮し,温度・圧力依存の粘性,圧力依存の摩擦強度,および最大降伏応力を組み合わせた構成則を用い,低粘性かつ低密度のマントルウェッジを仮定している。また,上盤の大陸プレートはモデル側面に固定しているのに対し,沈み込む海洋プレートは密度と粘性の分布に応じて自由に動くように設定している。本研究では,沈み込む海洋プレートの年齢,スラブの最大降伏応力,島弧リソスフェアの強度をパラメータとして,その効果を検討した(文献3)。
 海洋プレート年齢100Ma,最大降伏応力200MPaの条件では,ほぼ鉛直に傾斜するスラブが660 km不連続面に衝突したときに,傾斜方向の圧縮応力がスラブに沿って上方に伝わり,島弧リソスフェアに引張応力が生じることにより背弧拡大が始まる。背弧拡大に伴う海溝の後退によって,スラブの傾斜が減少しスラブが座屈すると背弧拡大は停止する。座屈したスラブのほぼ鉛直に傾斜した‘踵’が再び660 km境界に衝突したときに,リフティングが再び始まる。この2回目のリフティングは島弧で始まるが,次第に背弧域に移動し,新しい背弧拡大となる。島弧リソスフェアの応力状態は,拡大停止時から島弧リフティングの時期に引張で,背弧拡大時はニュートラルから弱い引張である。また,周期的背弧拡大に伴って,海洋プレートの移動速度も周期的に変化する。我々のモデルでは,スラブの曲げに対して中程度の抵抗力をもつ,厚く(年齢が古く)弱い(最大降伏応力が小さい)スラブの沈み込みが周期的な背弧拡大になることが予測される。対照的に,曲げに対する抵抗力が大きい厚く(年齢が古く)強い(最大降伏応力が小さい)スラブでは連続的な背弧拡大が予測され,曲げに対する抵抗力が小さい薄く(年齢が若く)弱い(最大降伏応力が小さい)スラブでは背弧拡大が起こらないと予測される。
 これらの結果は,①海洋プレートの沈み込みを駆動するスラブの負の浮力のほか,②低粘性かつ低密度のマントルウェッジの存在と③スラブとマントル遷移層との相互作用に伴う島弧リソスフェアの応力状態の変化が,周期的背弧拡大に重要な役割を果たすことを示している。本研究の2次元モデルでは考慮していないスラブ端の側方を回り込むマントルの流れ,浮揚性リソスフェアの衝突,第三のプレートとの相互作用などの過程が,特定の状況での周期的背弧拡大に重要な役割を果たす可能性がある。しかし,約2000万年という共通する時間スケールの存在は,すべてではないにしても多くの沈み込み帯に共通する普遍的なメカニズムが背弧海盆形成に寄与していることを示唆している。本論文の新しいモデルは,トンガ-ケルマデック弧とカラブリア弧に見られる周期的な背弧拡大と現在のスラブの形状(文献4,5)の関係を説明することができる。
文献
1)Sdrolias, Müller, 2006, doi:org/10.1029/2005G C0010 90
2)Clark et al., 2008, doi:org/10.1016/j.pepi.2008
3)Ishii, Wallis, 2022, doi:org/10.1186/s40645-022-00486-3
4)van de Lagemaat, et al., 2018, doi:org/10.1029/2017T C0049 01
5)Piromallo, Morelli, 2003, doi:org/10.1029/2002J B0017 57