2:15 PM - 2:30 PM
[G3-O-8] Geological conditions in land subsidence part during 10 years on the Liquefaction-Fluidization area: from a geological survey for land damage by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake on northern part of Tokyo bay reclaimed land
Keywords:human made strata, liquefaction-fluidization, the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake, Tokyo bay reclaimed land, Anthropocene sediments, land subsidence
はじめに:
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の際,東京湾岸埋立地北部では斑状の液状化-流動化に伴う地盤の沈下が多数発生した.この中には,被害から10年経た現在でも地盤の沈下が継続し,地表の変形が進んでいる部分が存在する.その中の浦安市高洲9丁目にて地質調査を行った結果を述べる.
調査地付近では,東日本大震災直後2011年3月~4月の地表調査により,液状化-流動化に伴い45~80cmの建築物の抜け上がりがみられていた(千葉県環境研究センター,2011).その後,グーグルアースの時系列航空写真によれば,2012年4月にはそれらの敷地全体は平らに補修されたが,2016年12月には再び抜け上がりがみられるようになった.2022年3月の実測では,17~18cmにも及んでいる.
オールコアボーリングは抜け上がりがみられた施設から約6m離れた場所(北緯35度37分46秒,東経139度55分3秒,標高3.0m)で深度22.45mまで行った.また,この周囲で4mから8m間隔に動的コーン貫入試験(斜面調査用簡易貫入試験)を深度約9~10mまで行った.
地層構成:
深度9.58mに人自不整合があり,これより上位は人工地層,下位は沖積層である.
沖積層は,層相上,下部(深度17.93m以深)・中部(深度17.93~11.24m)・上部(11.24~9.58m)に細分され,下部は厚さ0.5~7cmの極細粒砂~細粒砂層をまれに挟む黒褐~灰オリーブ色のシルト層,中部は厚さ0.2~1.4mの灰オリーブ色の極細粒砂~細粒砂層と厚さ0.1~0.8mの黒褐~暗灰黄色の泥勝ち砂泥互層との交互層,上部は生痕が多くみられる灰オリーブ~オリーブ黒色の極細粒砂~中粒砂層から構成される.
中部の厚さ0.2m以上の砂層の一部では斜交葉理が不明瞭ないし変形がみられ,これ以外の砂層の多くは斜交葉理が明瞭にみられる.
人工地層は,深度0.69mを境にこの上位が盛土アソシエーション,下位が埋立アソシエーションである.
埋立アソシエーションは,砂層からなる最下部バンドル(深度9.58~8.50m),泥層からなる下部バンドル(深度8.50~7.67m),細粒砂層主体の中部バンドル(深度7.67~4.58m),泥層主体で砂層を挟む上部バンドル(深度4.58~2.00m),貝殻質砂層主体の最上部バンドル(深度2.00~0.69m)から構成される.
最下部バンドルは,オリーブ黒色の塊状の中粒砂層から構成され,硬さはNc=15~30(簡易貫入試験値を以後「Nc=」と略す)とゆるい~中位である.下部バンドルは,灰オリーブ色の泥層から構成され,硬さはNc=6~10と軟らかい~中位である.中部バンドルは,厚さ約0.1mのシルト層をしばしば挟む灰色の極細粒砂~細粒砂層を主体とする.砂層は泥質で,塊状ないし葉理が不明瞭であり変形を伴う.下半部は塊状な砂層が優勢でNc=6~10と非常にゆるい.上半部は葉理が不明瞭な砂層が多くNc=6~15とゆるい場合が多い.上部バンドルは,灰黄褐~暗灰黄色の泥層を主とし,厚さ0.3~1mの灰色の細粒~中粒砂層を挟む.砂層中の葉理は不明瞭ないしほぼ消失している.泥層はNc=3~6と非常にやわらかい~やわらかい.砂層はNc=6~20と非常にゆるい~ゆるい.最上部バンドルは,シルト礫や貝殻片を含む黄褐~オリーブ褐色ないし灰色の葉理がみられる細粒砂~中粒砂層から構成される.硬さはNc=5~15と非常にゆるい~ゆるいが,側方で貝殻片を多く含みNc=25~40となる.地下水面は本層中の深度約1.5mである.
盛土アソシエーションは,灰色の砕石層と黄褐~にぶい黄色の細粒砂層ないし極粗粒砂層との互層である.硬さはNc=10~25とゆるい~中位である.
液状化-流動化に関して:
液状化-流動化の判定は,風岡ほか(1994)・風岡(2003)に基づき,地層断面における初生的な堆積構造の状態により判断した.埋立アソシエーションの最下部・中部・上部バンドルの砂層の大部分では,葉理が不明瞭ないし消失していることから,この部分が液状化-流動化したものと考えられる.特に,中部バンドルの下半部の砂層は現在でも非常にゆるく,この上位の厚い泥層である難透水層により,地震時に上昇した間隙水圧の減衰速度が規制され,沈下が継続している可能性が考えられる.
引用文献:
千葉県環境研究センター,2011,千葉県環境研究センター報告,G-8, 3-1~3-25.
風岡 修・楠田 隆・香村一夫・楡井 久・佐藤賢司・原 雄・古野邦雄・香川 淳・森崎正昭,1994,日本地質学会第101年総会・討論会 講演要旨,125-126.
風岡 修,2003,液状化・流動化の地層断面.アーバンクボタ40号,5-13.
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の際,東京湾岸埋立地北部では斑状の液状化-流動化に伴う地盤の沈下が多数発生した.この中には,被害から10年経た現在でも地盤の沈下が継続し,地表の変形が進んでいる部分が存在する.その中の浦安市高洲9丁目にて地質調査を行った結果を述べる.
調査地付近では,東日本大震災直後2011年3月~4月の地表調査により,液状化-流動化に伴い45~80cmの建築物の抜け上がりがみられていた(千葉県環境研究センター,2011).その後,グーグルアースの時系列航空写真によれば,2012年4月にはそれらの敷地全体は平らに補修されたが,2016年12月には再び抜け上がりがみられるようになった.2022年3月の実測では,17~18cmにも及んでいる.
オールコアボーリングは抜け上がりがみられた施設から約6m離れた場所(北緯35度37分46秒,東経139度55分3秒,標高3.0m)で深度22.45mまで行った.また,この周囲で4mから8m間隔に動的コーン貫入試験(斜面調査用簡易貫入試験)を深度約9~10mまで行った.
地層構成:
深度9.58mに人自不整合があり,これより上位は人工地層,下位は沖積層である.
沖積層は,層相上,下部(深度17.93m以深)・中部(深度17.93~11.24m)・上部(11.24~9.58m)に細分され,下部は厚さ0.5~7cmの極細粒砂~細粒砂層をまれに挟む黒褐~灰オリーブ色のシルト層,中部は厚さ0.2~1.4mの灰オリーブ色の極細粒砂~細粒砂層と厚さ0.1~0.8mの黒褐~暗灰黄色の泥勝ち砂泥互層との交互層,上部は生痕が多くみられる灰オリーブ~オリーブ黒色の極細粒砂~中粒砂層から構成される.
中部の厚さ0.2m以上の砂層の一部では斜交葉理が不明瞭ないし変形がみられ,これ以外の砂層の多くは斜交葉理が明瞭にみられる.
人工地層は,深度0.69mを境にこの上位が盛土アソシエーション,下位が埋立アソシエーションである.
埋立アソシエーションは,砂層からなる最下部バンドル(深度9.58~8.50m),泥層からなる下部バンドル(深度8.50~7.67m),細粒砂層主体の中部バンドル(深度7.67~4.58m),泥層主体で砂層を挟む上部バンドル(深度4.58~2.00m),貝殻質砂層主体の最上部バンドル(深度2.00~0.69m)から構成される.
最下部バンドルは,オリーブ黒色の塊状の中粒砂層から構成され,硬さはNc=15~30(簡易貫入試験値を以後「Nc=」と略す)とゆるい~中位である.下部バンドルは,灰オリーブ色の泥層から構成され,硬さはNc=6~10と軟らかい~中位である.中部バンドルは,厚さ約0.1mのシルト層をしばしば挟む灰色の極細粒砂~細粒砂層を主体とする.砂層は泥質で,塊状ないし葉理が不明瞭であり変形を伴う.下半部は塊状な砂層が優勢でNc=6~10と非常にゆるい.上半部は葉理が不明瞭な砂層が多くNc=6~15とゆるい場合が多い.上部バンドルは,灰黄褐~暗灰黄色の泥層を主とし,厚さ0.3~1mの灰色の細粒~中粒砂層を挟む.砂層中の葉理は不明瞭ないしほぼ消失している.泥層はNc=3~6と非常にやわらかい~やわらかい.砂層はNc=6~20と非常にゆるい~ゆるい.最上部バンドルは,シルト礫や貝殻片を含む黄褐~オリーブ褐色ないし灰色の葉理がみられる細粒砂~中粒砂層から構成される.硬さはNc=5~15と非常にゆるい~ゆるいが,側方で貝殻片を多く含みNc=25~40となる.地下水面は本層中の深度約1.5mである.
盛土アソシエーションは,灰色の砕石層と黄褐~にぶい黄色の細粒砂層ないし極粗粒砂層との互層である.硬さはNc=10~25とゆるい~中位である.
液状化-流動化に関して:
液状化-流動化の判定は,風岡ほか(1994)・風岡(2003)に基づき,地層断面における初生的な堆積構造の状態により判断した.埋立アソシエーションの最下部・中部・上部バンドルの砂層の大部分では,葉理が不明瞭ないし消失していることから,この部分が液状化-流動化したものと考えられる.特に,中部バンドルの下半部の砂層は現在でも非常にゆるく,この上位の厚い泥層である難透水層により,地震時に上昇した間隙水圧の減衰速度が規制され,沈下が継続している可能性が考えられる.
引用文献:
千葉県環境研究センター,2011,千葉県環境研究センター報告,G-8, 3-1~3-25.
風岡 修・楠田 隆・香村一夫・楡井 久・佐藤賢司・原 雄・古野邦雄・香川 淳・森崎正昭,1994,日本地質学会第101年総会・討論会 講演要旨,125-126.
風岡 修,2003,液状化・流動化の地層断面.アーバンクボタ40号,5-13.