14:45 〜 15:00
[G3-O-10] 火山岩岩脈分布に関するデータ収集及び予察的な解析(続報)
キーワード:地層処分、第四紀火山、岩脈、地質図幅、GIS、コールドロン、岩鐘
【背景・目的】
高レベル放射性廃棄物の地層処分事業や安全規制において、地層処分のサイト選定や安全評価における重要な火山・火成活動に関する調査・評価技術における課題の一つとして、マグマの影響範囲を把握するための技術の高度化が挙げられる。特に岩脈の発達が第四紀火山の中心から半径15 km(科学的特性マップにおける好ましくない範囲の基準)以上に及ぶ場合のデータの蓄積が求められるが、現存の火山体下に伏在している火道やそこから派生している岩脈の分布を把握することは現実的に困難である。そのため西山ほか(2022)などでは、火山体が中心火道とそこから放射状に伸びる岩脈の分布を反映しているといった仮定のもと、地理情報システム(GIS)を用いた数値標高データの解析により、岩脈分布のモデル化および火道安定性評価の検討している。しかしながら、本検討では解析の範囲を火山体に限定しているため、火山体を超えた岩脈についてはモデル化や評価ができないという問題がある。
野外で地質踏査をすると、第四紀火山から離れた場所でも小規模ながら岩脈が貫入している露頭が見つかることがある。このような岩脈が近傍の第四紀火山に関連するかどうかは、岩脈の広がりを評価するうえで重要となる。そこで我々は、産業技術総合研究所発行の地質図幅が丹念な地表踏査の結果を記載したものとして着目し、地質図幅から「岩脈類」を抽出し、周辺の第四紀火山との関連性について評価を試みた。本試みは昨年度から実施しており(川村ほか,2021)、本報告はそれの続報である。
【実施内容】
昨年度に引き続き、中国、四国地方及び北海道南部渡島半島の20万分の1の地質図幅を使用した。抽出対象とした「岩脈」は図幅の凡例にある「寄生火山」、「貫入岩」、「岩頸」、「岩脈」及び「岩床」を対象とした。データ抽出作業としては、岩脈の分布についてはデジタルでトレースを行い、GISデータを作成して白地図上に整理したうえで、「位置(緯度・経度)」、「サイズ(長径・短径など)」、「時代」、「岩型」、「岩脈が貫入している地層名、時代」及び「最寄り火山の火山名、火口からの距離」のデータを抽出した。また、中国、四国地方では古い火山活動の痕跡であるコールドロンが存在しており、それらの位置を文献情報に基づきGIS化するとともに「最寄りコールドロン名、コールドロン重心からの距離」もデータ化した。
【結果】
抽出された火山岩岩脈等の数は、中国地方593、四国地方228及び北海道南部渡島半島308であった。全体的には岩脈の長軸長は1 km未満のものが半数以上を占め、2 km未満まで含めると80%を超える。10 kmを超える岩脈もあるが、これはコールドロンの外周に分布しているものである。すなわち過去に形成された火山の地下部の痕跡であると考えられ、活動当時に火山近傍に形成されたものであり、火山から離れた場所に形成されたものではない。
これら3地域において地表に露出している第四紀の岩脈分布は第四紀火山から10 km以内に限られる。第四紀よりも古い岩脈については、第四紀火山と岩脈との距離、その方位と岩脈の伸長方向のなす角の関係を検討し、第四紀よりも古い岩脈と第四紀火山との関係性は低いと考えられた。
四国の石鎚コールドロンを事例として、先第四紀(新第三紀)の火山活動と、それと関連するとされている岩脈との距離についても検討した。その結果、石鎚コールドロンの場合、関連する岩脈との距離は最大で5 km程度であることが示された。一方、中国地方の吉備高原に分布するアルカリ玄武岩の岩鐘群を事例としそれらの分布についても検討した結果、岩鐘の分布は活動の中心点から概ね15kmの範囲内であることが分かった。このような検討は、火山活動に伴う岩脈の進展の程度が、古い火山活動においても第四紀火山と同様であったかどうかを把握する上で重要であると考えられる。
以上のように、中国地方、四国地方及び北海道南西部を事例対象として進めてきた岩脈情報の網羅的な収集及びそれらを用いた統計的な検討は、処分事業においてマグマの影響範囲を調査・評価する上での基礎情報としても有益であると考えられる。例えば、既存の火山の将来的な発達や、新規火山の発生に係る評価を行う際に、岩脈形成に関する地球物理学的モデルの構築や岩脈分布の確率論的な評価を行う際に有用となり得る。
【参考文献】
西山ほか,JpGU2022講演要旨,HCG24-01,2022.
川村ほか,日本地質学会第128年学術大会要旨,R23-P-1,2021.
謝辞:本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和3年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部である。
高レベル放射性廃棄物の地層処分事業や安全規制において、地層処分のサイト選定や安全評価における重要な火山・火成活動に関する調査・評価技術における課題の一つとして、マグマの影響範囲を把握するための技術の高度化が挙げられる。特に岩脈の発達が第四紀火山の中心から半径15 km(科学的特性マップにおける好ましくない範囲の基準)以上に及ぶ場合のデータの蓄積が求められるが、現存の火山体下に伏在している火道やそこから派生している岩脈の分布を把握することは現実的に困難である。そのため西山ほか(2022)などでは、火山体が中心火道とそこから放射状に伸びる岩脈の分布を反映しているといった仮定のもと、地理情報システム(GIS)を用いた数値標高データの解析により、岩脈分布のモデル化および火道安定性評価の検討している。しかしながら、本検討では解析の範囲を火山体に限定しているため、火山体を超えた岩脈についてはモデル化や評価ができないという問題がある。
野外で地質踏査をすると、第四紀火山から離れた場所でも小規模ながら岩脈が貫入している露頭が見つかることがある。このような岩脈が近傍の第四紀火山に関連するかどうかは、岩脈の広がりを評価するうえで重要となる。そこで我々は、産業技術総合研究所発行の地質図幅が丹念な地表踏査の結果を記載したものとして着目し、地質図幅から「岩脈類」を抽出し、周辺の第四紀火山との関連性について評価を試みた。本試みは昨年度から実施しており(川村ほか,2021)、本報告はそれの続報である。
【実施内容】
昨年度に引き続き、中国、四国地方及び北海道南部渡島半島の20万分の1の地質図幅を使用した。抽出対象とした「岩脈」は図幅の凡例にある「寄生火山」、「貫入岩」、「岩頸」、「岩脈」及び「岩床」を対象とした。データ抽出作業としては、岩脈の分布についてはデジタルでトレースを行い、GISデータを作成して白地図上に整理したうえで、「位置(緯度・経度)」、「サイズ(長径・短径など)」、「時代」、「岩型」、「岩脈が貫入している地層名、時代」及び「最寄り火山の火山名、火口からの距離」のデータを抽出した。また、中国、四国地方では古い火山活動の痕跡であるコールドロンが存在しており、それらの位置を文献情報に基づきGIS化するとともに「最寄りコールドロン名、コールドロン重心からの距離」もデータ化した。
【結果】
抽出された火山岩岩脈等の数は、中国地方593、四国地方228及び北海道南部渡島半島308であった。全体的には岩脈の長軸長は1 km未満のものが半数以上を占め、2 km未満まで含めると80%を超える。10 kmを超える岩脈もあるが、これはコールドロンの外周に分布しているものである。すなわち過去に形成された火山の地下部の痕跡であると考えられ、活動当時に火山近傍に形成されたものであり、火山から離れた場所に形成されたものではない。
これら3地域において地表に露出している第四紀の岩脈分布は第四紀火山から10 km以内に限られる。第四紀よりも古い岩脈については、第四紀火山と岩脈との距離、その方位と岩脈の伸長方向のなす角の関係を検討し、第四紀よりも古い岩脈と第四紀火山との関係性は低いと考えられた。
四国の石鎚コールドロンを事例として、先第四紀(新第三紀)の火山活動と、それと関連するとされている岩脈との距離についても検討した。その結果、石鎚コールドロンの場合、関連する岩脈との距離は最大で5 km程度であることが示された。一方、中国地方の吉備高原に分布するアルカリ玄武岩の岩鐘群を事例としそれらの分布についても検討した結果、岩鐘の分布は活動の中心点から概ね15kmの範囲内であることが分かった。このような検討は、火山活動に伴う岩脈の進展の程度が、古い火山活動においても第四紀火山と同様であったかどうかを把握する上で重要であると考えられる。
以上のように、中国地方、四国地方及び北海道南西部を事例対象として進めてきた岩脈情報の網羅的な収集及びそれらを用いた統計的な検討は、処分事業においてマグマの影響範囲を調査・評価する上での基礎情報としても有益であると考えられる。例えば、既存の火山の将来的な発達や、新規火山の発生に係る評価を行う際に、岩脈形成に関する地球物理学的モデルの構築や岩脈分布の確率論的な評価を行う際に有用となり得る。
【参考文献】
西山ほか,JpGU2022講演要旨,HCG24-01,2022.
川村ほか,日本地質学会第128年学術大会要旨,R23-P-1,2021.
謝辞:本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和3年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部である。