129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

G1-5. sub-Session 05

[2oral601-09] G1-5. sub-Session 05

Mon. Sep 5, 2022 1:30 PM - 3:45 PM oral room 6 (Build. 14, 403)

Chiar:Daisuke Sato, Hideaki NAGAMORI

2:00 PM - 2:15 PM

[G5-O-3] Geochemistry and zircon U-Pb age and Lu-Hf isotope composition of the Jurassic granitoids in the Japanese Islands and eastern margin of Korea

*Kenta Kawaguchi1,2, Chang Whan Oh2, Ji Wan Jeong1, Masaya Furusho3, Satoshi Shibata3, Yasutaka Hayasaka4 (1. Kyushu Univ., 2. Jeonbuk Natl. Univ., 3. OYO Corporation, 4. Hiroshima Univ.)

Keywords:Japanese Islands, Korean Peninsula, Jurassic, Granitoids

日本海拡大以前の原日本列島はアジア大陸東縁において成長した。地理的観点から、原日本列島の少なくとも一部は、韓半島と共通の進化を遂げたと予想できる。従って、東アジアの構造進化を包括的に理解するには、日本列島と韓半島との対比が極めて重要である。しかし、先カンブリア紀の地塊を主体とする韓半島と、古生代以降の沈み込み帯で成長した原日本列島を構成する地体は決定的に異なり、両者の繋がりは不明な点が多い。日本海拡大以前の両者の正確な繋がりを復元するためには、日本列島と韓半島とに共通する「マーカー」を見出し、産状と定量的なデータに基づいた議論が極めて重要である。本研究では、韓半島東縁部と日本列島に分布するジュラ紀弧花崗岩類に着目し、その全岩化学組成、ジルコンU-Pb年代とLu-Hf同位体組成を報告し、ジュラ紀火成弧の進化、また原日本列島と韓半島との繋がりを考察する。
 韓半島東縁部のジュラ紀花崗岩類のジルコンU-Pb年代を包括的に測定し、その重みつき平均年齢を地体ごとにまとめると、南からGyeongsang Basin(GB): 188–186 Ma、Yeongnam Massif (YM): 183–177 Ma、Taebaeksan Basin(TB): 168 Ma、Gyeonggi Massif(GM): 173–166 Maを示す。一方、飛騨帯の宇奈月地域におけるホルンブレンド閃緑岩の同年齢は201 Maを示す。また能登半島西縁部に位置する中新世の火山砕屑岩層から採取した黒雲母花崗岩角礫3試料の重みつき平均年齢は184–183 Maで、周囲に地窓状に産する飛騨花崗岩の産状を考えると、これらは飛騨花崗岩起源であると考えられる。また、鳥取県西部の江尾花崗岩のうち、マイロナイト化したホルンブレンド花崗閃緑岩が247 Ma、ホルンブレンド–黒雲母花崗閃緑岩が192–191 Maの重み付き平均年齢を示した。本研究で測定したポイントは全てCL像下でオシラトリーゾーニングを示し、ジルコンの微量元素は高いTh/U比と右上がりのHREEパターンを持つことから、得られた年齢は火成年代を示す。韓半島東縁部と日本列島のジュラ紀花崗岩は、そのジルコンHf同位体組成から、εHf(t)値により(1) -0.8から+13.2 (飛騨花崗岩、江尾花崗岩、GB)と、(2) -25.0から-13.9 (YM、TB、GM)を示すものとに明瞭に2分される。(1)は201–183 Ma、(2)は183–166 Maの異なる火成年代を示す。ジルコンのTi温度計[1]を適用しジルコンの結晶化温度を求めた結果、(1)は750–830 °Cと高温を示すのに対し、(2)は680–750 °Cの低温を示した。またインヘリテッドジルコンは(1)には皆無、あるいはペルム紀からトリアス紀のものが10 %以未満であるのに対し、(2)には最大50 %程度含まれ、その大部分は古原生代の年代を示す。全岩化学組成は(1)、(2)ともにNb、Ta、P、Tiに涸渇したパターンを示し、微量元素を用いた判別図においてはいずれも火成弧の領域にプロットされる。(1)は低いSr/Y比を有し、典型的な弧火成岩の特徴を持つ一方、(2)の大部分は高いSr/Y比をも持ち、アダカイトの組成を示す。その全岩組成は厚い下部地殻の溶融により形成されたアダカイト[2]と高い類似性を持つ。
 韓半島南部から中部においては北西方向に、また韓半島北部から北東中国にかけては西方向にジュラ紀花崗岩の年代若化が認められ[3]、韓半島東縁部の花崗岩類も同様の年代極性を有する。江尾、飛騨花崗岩もこの極性に調和的である。韓半島全体を見渡すと、(1)と共通のジルコンU-Pb年代、正のεHf(t)値を持つ花崗岩類は南東部のGBと北東部のDumangang Belt(DB)に認められる[4]。一方、半島東縁中部に位置する(2)の花崗岩類のジルコンは著しく低いεHf(t)値を持つことから日本列島とGB、DBの花崗岩類とは区別できる。従って、韓半島南東部のGBから江尾花崗岩、飛騨花崗岩を経て韓半島北東部のDBにかけては共通の年代、地球化学的特徴、Lu-Hf同位体組成を持った花崗岩が狭長かつ弧状に分布しており、このことは江尾、飛騨花崗岩が、韓半島南東部から北東部に続く一連の沈み込み帯で形成されたことを示唆する。
引用文献: [1] Ferry and Watson (2007) Contrib. Mineral. Petrol., 154, 429–437. [2] Atherton and Petford (1993) Nature, 362, 144–146. [3] Kawaguchi and Oh (2021) J. Geol. Soc. Korea, 57, 565–587. [4] Zhang et al. (2021). J. Geol. Soc. Korea, 57, 523–544.