129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T6.[Topic Session]The origin of the Japanese Islands revisited

[3oral201-13] T6.[Topic Session]The origin of the Japanese Islands revisited

Tue. Sep 6, 2022 8:45 AM - 12:00 PM oral room 2 (Build. 14, 101)

Chiar:Yukio Isozaki, Tomohiko Sato, Yusuke Sawaki

10:15 AM - 10:30 AM

[T6-O-7] Origin of the Hida belt: a failed suture between the two China blocks

*Yukio Isozaki1 (1. University of Tokyo)

Keywords:Hida belt, granitoids, Greater South China, Jurassic, continental suture, North China block

日本列島のほぼ中央部に産する飛騨帯には、かつて先カンブリア時代基盤岩と想像された高度変成岩類や圧砕花崗岩類が産する。南側の美濃帯からの18億年前花崗岩礫の発見などもあって、先カンブリア時代基盤岩を持つアジア東部(特に朝鮮半島)と飛騨帯との対比がかつて盛んに試みられた。しかし、その後の岩石学的・年代学的研究は、飛騨帯の花崗岩や片麻岩がいずれも顕生代(大部分は中生代)の年代を持つ岩石であることをつきとめ、先カンブリア時代基盤の存在は否定された。一方、隣接する中国の主要な地体構造がプレートテクトニクスの視点から徐々に解明され、1980年代には中国主部が北中国(中朝)地塊と南中国(揚子)地塊からなること、また両者は超高圧変成岩を伴う約2億3000万年前の衝突型造山帯(秦嶺-大別山-蘇魯suture)で接することが判明した(Maruyama et al., 1989)。このアジア東縁の地体構造の大枠の中で、両地塊間の境界通過位置が朝鮮半島内で未特定ゆえに、古生代日本がどちらの地塊に近縁なのかは長く自明ではなかった。その後2000年代になって砂岩中の砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定が普及し、大量のデータが得られた結果、古生代の日本および極東ロシア沿海州主部は、北中国とは無縁であり、南中国地塊の太平洋側縁辺の弧-海溝系造山帯(Nipponides)として成長したことが判明した(Isozaki, 2019)。ただし、成長核であった古生代初頭の南中国地塊は揚子・カタイシア・東シナ海・日本主部・沿海州などの部分を含むGreater South China (GSC)を形成していたとみなされ、そのサイズは古典的な南中国地塊の2倍以上と見積もられる。 沿海州のハンカ(Khanka)地塊はGSCの北方延長とみなされるが、その西側の約100 km幅の領域(ロシア・中国・北朝鮮間の3国境界)の地体構造上の意味は長く不明であった。そこで、ウラジオストックの南西50-100 kmの海岸沿い、ハンカ地塊の西側に隣接するLaoelin-Grodekov(L-G)帯において、従来ジュラ紀花崗岩と一括されていた花崗岩類のジルコンU-Pb年代測定を行なった。その結果、新たに複数のペルム・三畳紀の年代が得られた(Isozaki et al., 2021)。沿海州の西隣りの中国吉林省の花崗岩類から報告された多数のジルコンU-Pb年代に基づくと、朝鮮半島北部から沿海州までペルム・三畳紀花崗岩類とジュラ紀花崗岩類とが共存し、その分布東限はL-G帯・ハンカ帯境界の西沿海州断層(WPF)で画される。一方で、WPF以東の沿海州には前期古生代の花崗岩類が多産するが、ジュラ紀・三畳紀花崗岩は皆無である。WPFは明瞭に年代が異なる2つの花崗岩分布域を隔てる重要な地体構造境界にあたり、日本海中央部の大和堆をへて、飛騨帯東限まで追跡される(同上)。広大な先カンブリア時代の基盤岩を持たない飛騨帯・大和堆・L-G帯は、北中国地塊と南中国地塊のどちらにも属さず、大局的にはGSC西縁と北中国地塊東縁とに挟まれた大陸衝突域の周辺域だったと判断される。古生代末の両地塊は互いに接近しつつあったとはいえ、北中国の北方にまでGSC北端が伸びていたので、GSC北部の西側では大陸衝突は起きなかった。おそらく飛騨帯・大和堆・L-G帯は古アジア海の東縁で収束が凍結された”failed suture”の一部だったとみなされる。すなわち、GSCの太平洋側縁辺のNIpponides 造山帯の一部をなす日本列島主部に対して、飛騨帯はGSCの古アジア海側に起源を持ち、前者に二次的に接合した異地性単元と理解される。

文献 Isozaki (2019) Island Arc, vol. 28, e12296; Isozaki et al. (2021) Bull. Nat. Mus. Nature Science, ser. C, vol. 47, 25-39; Maruyama et al. (1989) In Ben-Avraham, Z. ed. The evolution of Pacific ocean margins. Oxford Monog. Geol. Geophys., 75-99.