8:45 AM - 9:00 AM
[G6-O-1] Characteristics of fault rocks in Koujaku granite using the weathering index W value
Keywords:Koujaku granite, fault rocks, W value, Plagioclase, Groundwater
はじめに:岩石の風化に関する研究はこれまで地質学,地形学,鉱物学等の多岐にわたる分野で進められてきた.風化作用とは,岩石が地表条件のもとで,気圏,水圏,あるいは生物圏の影響で変化していく現象であり,物理的風化作用,化学的風化作用,鉱物学的風化作用に大別される (木宮, 1991).このうち,化学的風化作用は,岩石と水,酸素や二酸化炭素を主とするガスとの反応による岩石の化学変化であり(関, 1998),その尺度をあらわす指標としてAl2O3, Na2O, CaOなどの不安定な鉱物の分解に着目した多くの風化度指数がこれまで提案されている.Ohta and Arai (2007) は,単一鉱物の溶解過程ではなく,風化過程における平均的な地球化学的反応を把握することを目的とした風化度指標W値とMFWダイアグラム (M:苦鉄質源, F:珪長質源, W:風化物質) を提案した.本稿では,若狭湾東方陸域に分布する江若花崗岩中の断層岩を対象とし,断層岩のW値について検討し,風化の進行度等の諸特性についてMFWダイアグラムを用いて検討した.また,江若花崗岩と美濃丹波帯変玄武岩との地質境界の断層についても同様の検討を行い,江若花崗岩中の断層岩との特徴の相違について検討した.
断層岩試料およびXRF分析:今回の検討には江若花崗岩の断層岩試料 (n=33) および美濃丹波帯変玄武岩の断層岩試料 (n=8),合計41試料を用いた.江若花崗岩の断層岩試料は,活断層の白木丹生断層,非活断層の高速増殖原型炉もんじゅおよび美浜発電所の各敷地内の破砕帯において採取した.一方,変玄武岩の断層岩試料は,活断層の敦賀断層において採取した.XRF分析は,日本原子力研究開発機構所有のZSX Primus II (X線管球フィラメント:Rh) (㈱リガク製) を使用し,ガラスビート法により行った. W値は,Ohta and Arai (2007) にしたがい,XRF分析で得られた10成分の酸化物の重量%データのうち,一般的に検出限界以下となる MnO, P2O5を除く8成分 (SiO2, TiO2, Al2O3, Fe2O3, MgO, CaO, Na2O, K2O) の総量が100wt.%になるよう設定した重量%データを用いて算出した.
結果:江若花崗岩:母岩 (No.33,転石) は,F値=94.2%,W値=4.9%であり,珪長質でほとんど未風化である.断層岩試料は,活断層・非活断層にかかわらずM値が約3%でほぼ一定であり,風化が進展するとF値が減少し,W値が増加する.8成分の酸化物について,W値への影響度とW値の変動傾向との整合性の観点から検討した結果, 特にNa2OとCaOがW値の増減に大きな影響を与えることが確認できた.また,母岩No.33の Al2O3を不変と仮定し,マスバランス法により母岩に対する各酸化物の絶対量変化率を算出した結果,Na2OはW値の増加に伴い減少するのに対し,CaOはW値が40%程度までは母岩に比べて増加するものの,40%を超えると減少する傾向がみられた.さらに,別途実施したXRD分析の結果,W値が大きい断層ガウジでは斜長石のピークが減少する.以上より,江若花崗岩のW値は,F成分の斜長石の増減と関係すると考えられる.なお,白木丹生断層では,地下水位以下のボーリングコア試料 (No.5, 6, 7) のW値 (15.0%-18.4%) は,地下水位以浅の露頭試料 (No.1, 2, 3, 4) のW値 (29.2%-48.7%) に比べて小さい.これは,CaOの絶対量変化率の傾向の違い (露頭:-60~-86%,ボーリングコア:+45~+61%) が要因であり,W値およびCaOは地下水の影響 (斜長石の溶脱、方解石の沈殿等) を大きく受けると考えられる.なお,別途実施したTiO2を不変とした場合の絶対量変化率の検討では,風化の進行に伴い酸化物の総重量%が増加する等,Al2O3と異なる結果が得られたが,これは元々のTiO2含有量が少ないことによる誤差が要因と考えられる. 変玄武岩:母岩 (No.38,転石) は,M値=88.2%,W値=6.6%であり,苦鉄質でほとんど未風化である.カタクレーサイト (No.36, 37) まではF値がほぼ一定であり,風化が進展するとM値が減少し,W値が増加するが,断層ガウジ (No.34, 35, 39, 40, 41) ではW値の増加に伴いF値の増加もみられた.これは,薄片観察において断層ガウジ中に石英のフラグメントの混在がみられたこと,XRD分析により石英とカリ長石の混在がみられたことから,断層活動による江若花崗岩の岩片の混入が要因と考えられる.
引用文献:木宮一邦, 1991,応用地質, 32, 22-31. 関陽児, 1998,地質調査月報, 49, 639-667. Ohta T, Arai H, 2007, Chemical Geology, 240, 280-297.
断層岩試料およびXRF分析:今回の検討には江若花崗岩の断層岩試料 (n=33) および美濃丹波帯変玄武岩の断層岩試料 (n=8),合計41試料を用いた.江若花崗岩の断層岩試料は,活断層の白木丹生断層,非活断層の高速増殖原型炉もんじゅおよび美浜発電所の各敷地内の破砕帯において採取した.一方,変玄武岩の断層岩試料は,活断層の敦賀断層において採取した.XRF分析は,日本原子力研究開発機構所有のZSX Primus II (X線管球フィラメント:Rh) (㈱リガク製) を使用し,ガラスビート法により行った. W値は,Ohta and Arai (2007) にしたがい,XRF分析で得られた10成分の酸化物の重量%データのうち,一般的に検出限界以下となる MnO, P2O5を除く8成分 (SiO2, TiO2, Al2O3, Fe2O3, MgO, CaO, Na2O, K2O) の総量が100wt.%になるよう設定した重量%データを用いて算出した.
結果:江若花崗岩:母岩 (No.33,転石) は,F値=94.2%,W値=4.9%であり,珪長質でほとんど未風化である.断層岩試料は,活断層・非活断層にかかわらずM値が約3%でほぼ一定であり,風化が進展するとF値が減少し,W値が増加する.8成分の酸化物について,W値への影響度とW値の変動傾向との整合性の観点から検討した結果, 特にNa2OとCaOがW値の増減に大きな影響を与えることが確認できた.また,母岩No.33の Al2O3を不変と仮定し,マスバランス法により母岩に対する各酸化物の絶対量変化率を算出した結果,Na2OはW値の増加に伴い減少するのに対し,CaOはW値が40%程度までは母岩に比べて増加するものの,40%を超えると減少する傾向がみられた.さらに,別途実施したXRD分析の結果,W値が大きい断層ガウジでは斜長石のピークが減少する.以上より,江若花崗岩のW値は,F成分の斜長石の増減と関係すると考えられる.なお,白木丹生断層では,地下水位以下のボーリングコア試料 (No.5, 6, 7) のW値 (15.0%-18.4%) は,地下水位以浅の露頭試料 (No.1, 2, 3, 4) のW値 (29.2%-48.7%) に比べて小さい.これは,CaOの絶対量変化率の傾向の違い (露頭:-60~-86%,ボーリングコア:+45~+61%) が要因であり,W値およびCaOは地下水の影響 (斜長石の溶脱、方解石の沈殿等) を大きく受けると考えられる.なお,別途実施したTiO2を不変とした場合の絶対量変化率の検討では,風化の進行に伴い酸化物の総重量%が増加する等,Al2O3と異なる結果が得られたが,これは元々のTiO2含有量が少ないことによる誤差が要因と考えられる. 変玄武岩:母岩 (No.38,転石) は,M値=88.2%,W値=6.6%であり,苦鉄質でほとんど未風化である.カタクレーサイト (No.36, 37) まではF値がほぼ一定であり,風化が進展するとM値が減少し,W値が増加するが,断層ガウジ (No.34, 35, 39, 40, 41) ではW値の増加に伴いF値の増加もみられた.これは,薄片観察において断層ガウジ中に石英のフラグメントの混在がみられたこと,XRD分析により石英とカリ長石の混在がみられたことから,断層活動による江若花崗岩の岩片の混入が要因と考えられる.
引用文献:木宮一邦, 1991,応用地質, 32, 22-31. 関陽児, 1998,地質調査月報, 49, 639-667. Ohta T, Arai H, 2007, Chemical Geology, 240, 280-297.