10:15 AM - 10:30 AM
[T13-O-7] The Middle-Upper Pleistocene under metropolitan areas related to aquifer thermal energy storage
Keywords:aquifer thermal energy storage, Pleistocene, aquifer, ATES, metropolitan area
都市域の夏季・冬季の熱需要に対して,エネルギー緩和策技術の一つとして,地中熱利用がある.深度10mを超えると地中温度は,地上の季節変動を受けにくくなり,年中ほぼ一定で,冬季は大気より高く,夏季は低いので,温熱・冷熱として活用できる.また,地中の蓄熱特性を利用することで,季節間蓄熱によるエネルギーの循環的利用が行える.建物内での汎用性のある地中熱利用としては,ヒートポンプを介するシステムが一般的である.地中熱ヒートポンプシステムには,井戸内にヒートパイプを挿入し,熱媒体となる流体を循環さるクローズドループ方式と地下水をくみ上げ,その熱を直接利用するオープンループ方式がある.オープンループ方式には,熱交換後の地下水を地下に戻さない放流方式と地下に還元する還元方式に分かれ,帯水層に蓄熱して循環的な熱利用を行う帯水層蓄熱(ATES)も含まれる.イニシャルコストは,オープンループの方がクローズドループよりも低いとされる(環境省,2018).しかし,オープンループ方式は,地下水揚水を伴うため,地下水揚水規制がなされる地域では,その実施が困難で,これまでの地中熱ヒートポンプシステム設置実績として,クローズドループ方式が圧倒的に多い(環境省,2018).オープンループ方式の一つであるATESは,位置の離れた同じ帯水層に介在する地下水を,交互に揚水・注水し,その熱利用と熱貯留を行うもので,一方的な揚水による熱利用ではないため,地盤沈下への影響は抑えられる方式となっている.ATESは,ヨーロッパなどで実用化され,オランダでは,2015年には2500サイトを上回る導入が行われている(Heekeren & Bakema, 2015).
ATES活用のために地下水地盤に求められる基本的要件として,①地下水流動が小さく熱貯留に耐えられること,②地下水揚水・注水が容易に行えるための高い透水性を有すること,③地盤沈下・地下水汚染拡大などにつながらないこと,③帯水層分布が安定していることなどである.熱需要の盛んな大都市の多くが,日本では厚い第四紀層が伏在する沖積平野に位置し,環境省(2018)によると,地中熱ポテンシャルも高い地域となっている.これは,平野地下に存在する更新統が良好な帯水層となりえるためである.
東京・大阪・名古屋など熱需要の高い大都市圏が位置する沿岸部の沖積平野では,沖積層が分布し,完新世海進に伴ういわゆる沖積粘土層は,正規圧密状態にあり,地下水の水位変動で容易に地盤沈下を生じる.このため,沖積層直下にある帯水層のATES活用は,地盤沈下誘発や地下水汚染拡大の危惧から避けざるを得ない.ATESでは,構築する井戸の掘削は,イニシャルコストの面から通常100mの深さまでが一般的であるとされる.このような沿岸沖積平野下とその周辺地域では,帯水層を分ける粘土層が過圧密状態にあり,深度100m程度までに存在する帯水層として中‐上部更新統がその対象となりえる.該当する帯水層は,関東平野では下総層群,濃尾平野では熱田層下位の更新統,大阪平野では田中層上部などに挟まれる砂礫層となる.
大都市圏は,かつて揚水過剰による地盤沈下が生じ,その対策として地下水揚水規制がなされている地域でもある.しかし,ATESでは,このような規制地域は,稼働する井戸施設が少なく,地下水停滞の状況が見込まれる地域で,むしろ好適地として位置づけられる.試験的運用での実証実験を進め,地盤沈下や周辺井戸への影響評価をもとに,行政の理解が得られれば,特例的に規制緩和への道が開かれるものと考える.
ATESの導入に関わる基本的資料として,中‐上部更新統に関わる帯水層の上・下面深度(標高),層厚,上・下位層の状況,地下水規制の有無,既設井戸状況など,平野地下における帯水層の明確な区分や分布状況をまとめた水理地質図の充実が望まれる.今回は,大阪平野での例を紹介する.
引用文献
環境省 (2018) 地中熱利用にあたってのガイドライン 改訂増補版, 148p.
Heekeren & Bakema (2015) The Netherlands Country Update on Geothermal Energy, Proceedings World Geothermal Congress 2015, 1-6.
ATES活用のために地下水地盤に求められる基本的要件として,①地下水流動が小さく熱貯留に耐えられること,②地下水揚水・注水が容易に行えるための高い透水性を有すること,③地盤沈下・地下水汚染拡大などにつながらないこと,③帯水層分布が安定していることなどである.熱需要の盛んな大都市の多くが,日本では厚い第四紀層が伏在する沖積平野に位置し,環境省(2018)によると,地中熱ポテンシャルも高い地域となっている.これは,平野地下に存在する更新統が良好な帯水層となりえるためである.
東京・大阪・名古屋など熱需要の高い大都市圏が位置する沿岸部の沖積平野では,沖積層が分布し,完新世海進に伴ういわゆる沖積粘土層は,正規圧密状態にあり,地下水の水位変動で容易に地盤沈下を生じる.このため,沖積層直下にある帯水層のATES活用は,地盤沈下誘発や地下水汚染拡大の危惧から避けざるを得ない.ATESでは,構築する井戸の掘削は,イニシャルコストの面から通常100mの深さまでが一般的であるとされる.このような沿岸沖積平野下とその周辺地域では,帯水層を分ける粘土層が過圧密状態にあり,深度100m程度までに存在する帯水層として中‐上部更新統がその対象となりえる.該当する帯水層は,関東平野では下総層群,濃尾平野では熱田層下位の更新統,大阪平野では田中層上部などに挟まれる砂礫層となる.
大都市圏は,かつて揚水過剰による地盤沈下が生じ,その対策として地下水揚水規制がなされている地域でもある.しかし,ATESでは,このような規制地域は,稼働する井戸施設が少なく,地下水停滞の状況が見込まれる地域で,むしろ好適地として位置づけられる.試験的運用での実証実験を進め,地盤沈下や周辺井戸への影響評価をもとに,行政の理解が得られれば,特例的に規制緩和への道が開かれるものと考える.
ATESの導入に関わる基本的資料として,中‐上部更新統に関わる帯水層の上・下面深度(標高),層厚,上・下位層の状況,地下水規制の有無,既設井戸状況など,平野地下における帯水層の明確な区分や分布状況をまとめた水理地質図の充実が望まれる.今回は,大阪平野での例を紹介する.
引用文献
環境省 (2018) 地中熱利用にあたってのガイドライン 改訂増補版, 148p.
Heekeren & Bakema (2015) The Netherlands Country Update on Geothermal Energy, Proceedings World Geothermal Congress 2015, 1-6.