129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T13.[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments

[3oral413-19] T13.[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments

Tue. Sep 6, 2022 1:30 PM - 3:30 PM oral room 4 (Build. 14, 401)

Chiar:Tsutomu Nakazawa, Takahiro KOJIMA

3:00 PM - 3:15 PM

[T13-O-18] Geological Characteristics and Sustainability of Spring use Water Supply in Kirishima City

*Hiroshi TAKASHIMA1 (1. Daiichi Insutitute of Technology)

Keywords:Spring use Water Supply, Sustainability of spring water use, Hot spring, Kakuto and Ito pyroclastic flow deposit, Kirishima city Kagoshima prefecture

水は循環性資源であり,都市において上水道は重要な生活インフラである.近年,日本の人口減少に伴い,水道経営が厳しさを増す中,持続可能な水道システムの構築が喫緊の課題となっている.身近な上水道水源としては,地下水が注目されているが,とりわけ湧水は,地盤沈下など地下への負荷がなく,組み上げに係る電力を必要としないなど,環境面で低負荷な水源として期待される.一方,地表に接する地下水であるため,汚染や渇水,湧水停止などのリスクを有し,持続的に利用するためには,土地利用に係る脆弱性の検討や地下水の涵養・湧出機構の解明及び湧水のモニタリングなどが重要となると考えられる.
湧水を利用する上水道は,水道統計の水道水質データベースが公表されており,浄水場別,原水の種類別に1日平均浄水量が確認される(日本水道協会, 2021).最新データは令和元年度のものであるが,原水の種別が湧水に限定される1日平均浄水量を集計し,水道事業体別に湧水利用量を調べた結果,日本最大の湧水利用量を誇る水道事業体は鹿児島県霧島市であることが判明した.人口125,000人を擁する霧島市は,浄水量の8割近くが湧水起源であり,極めて高い湧水ポテンシャルを有する地域と考えられる.また,2位は鹿児島市,4位は鹿屋市,5位が熊本県人吉市,9位が宮崎県小林市であり,南九州の自治体が10位以内に多くリストされることが判明した.一方,日本最大の柿田川湧水を有する静岡県は,3位に伊東市,8位に伊豆の国市,10位に富士宮市が確認された. 鹿児島県霧島市の主要な水源は,台明寺や奥新川などが認められ,いずれも日量1万トン以上を湧出する(日本水道協会, 2021).このうち,奥新川水源地には,地区内に数多くの湧水が確認されるほか,日量30,000トンを湧出し,観光地となっている「大出水の湧水」が存在するなど,極めて湧水が豊富な地域である.当地区の湧水は,霧島市の国分平野を北北東から南南西に流下する天降川の中流域において,これに接続する久留味川沿いに分布する.奥新川水源地で最大の湧水量を誇る奥新川第3水源地や大出水の湧水は,いずれも加久藤火砕流堆積物の中から地下水が湧出している.当地区の加久藤火砕流堆積物は,概ね水平の堆積層で弱~中溶結を呈し,目が詰まった断裂が数mおきに発達するが,湧出口は1m程度の孔となっている(霧島市上下水道部聞き取り).当該地区は広く入戸火砕流堆積物に覆われ,加久藤火砕流堆積物は河床付近にのみ認められ(大木・湯浅, 2012),露出が少ない.また,入戸火砕流堆積物が100m以上厚く堆積しており,観測可能な井戸も認められない.このため,地下水湧出機構の具体的な研究事例は確認できていない. 
一方,当該地区は,露木(1969)が示した北北東-南南西方向に発達する鹿児島地溝帯内に存在し,数多くの温泉湧出箇所が天降川沿いに分布する.湧水が集中する奥新川周辺では,河川は北西-南東方向に流路を持つが,妙見温泉や安楽,日の出,新川温泉など河床から直接湧出する温泉が多数観察される.平面的には,久留味川が天降川に合流する地点付近を境に湧水地帯と温泉湧出地帯が明確に区分され,これより北西側には湧水のみが認められ,南東側には温泉湧出が分布する.温泉は炭酸泉で鉄分を含み,飲用には適さないため,これらを明確に区分する地質構造が,地域の湧水を保全しているものと考えられる.
本論では,都市を支える湧水の存在と,その地質状況および水文地質構造を概観し,持続可能な水道水源の特性と在り方を考察する.

(公社)日本水道協会, 2021, 水道水質データベース, http://www.jwwa.or.jp/mizu/(20220627閲覧).
大木公彦・湯浅秀隆, 2012, 天降川中流・上流域の地形・地質に関する一考察. 鹿児島大学理学部紀要, 45, 19-29.
露木利貞, 1969, 九州地方における温泉の地質学的研究(第5報) 鹿児島地溝内の温泉-特に温泉貯留体について. 鹿児島大学理学部紀要, 2, 85-101.