129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T9. [Topic Session] Oil, Gas and Coal Geology and Organic Geochemistry Contributing to Zero Carbon Emissions

[3oral501-08] T9. [Topic Session] Oil, Gas and Coal Geology and Organic Geochemistry Contributing to Zero Carbon Emissions

Tue. Sep 6, 2022 9:15 AM - 12:00 PM oral room 5 (Build. 14, 402)

Chiar:Yoshikazu Sampei, Shun Chiyonobu, Yuya Yamaguchi(JAPEX)

11:45 AM - 12:00 PM

[T9-O-8] Hydrogen index of coal and terrestrial organic matter: case study on sedimentary system of Hii River-Lake Shinji and Iinashi River-Lake Nakaumi, southwest Japan

*Yoshikazu SAMPEI1, Nami UCHIBORI2, Takahiro ISHIDA2 (1. Graduate School of Natural Science and Technology, Shimane Univ., 2. Faculty of Science and Engineering, Shimane Univ.)

Keywords:lignite, terrestrial organic matter, hydrogen index, total organic carbon, Shinjiko-Nakaumi

【はじめに】
 化石燃料は水素を取り出せる新たな資源物質として期待されている。天然ガスから水素が生成されるシステムは既に確立されており,また,これまで使われてこなかった低品位の石炭のうち褐炭は日本とオーストラリアの共同開発「褐炭水素プロジェクト」によって新たな水素資源になろうとしている。水素の原料となる炭化水素を多く発生させるケロジェンなどの起源有機物は,一般に単位有機炭素あたりの水素含有量が多い傾向がある。本講演では,本邦における褐炭を含む石炭の分布とその特徴について,旧来の元素組成(炭素・水素含有量)・発熱量と熱分解Rock Eval法で計測される水素指数(Hydrogen Index: HI値)との関係を考察し,褐炭や亜炭などの未熟成石炭の特質を再評価する。また,褐炭・亜炭よりも続成作用の進んでいない現世陸源有機物の陸上-河川-湖沼堆積システムにおける水素指数の変化の特徴について,斐伊川-宍道湖および飯梨川-中海水系を対象として考察する。

【本邦の石炭の水素指数:文献値によるまとめ】
 本邦の石炭の分布および元素組成などの基本データについては,地質調査所(1960)「日本鉱産誌(BV-a)石炭」に詳しくまとめられておりその後の新しい炭田開発等はほとんどないため,この文献が日本の石炭資源に関する最も包括的で網羅的な資料と位置づけられる(この資料をもとに日本の炭田図が1973年に作られている)。この資料には日本のほぼ全ての石炭層が記載されており主要な炭田での石炭の水分,灰分,揮発分,TOC濃度,発熱量,イオウ濃度などの個々のデータが記録されている。褐炭は燃焼時の発熱量が低いためにこれまで石炭としては低品位とされてきた。しかし泥炭・褐炭の水素含有量は大きいため水素資源としての期待は高い。地質調査所(1960)では本邦の泥炭,褐炭,瀝青炭,無鉛炭の水素濃度をそれぞれ5.5%,約5%,4.5-5.5%,3-4%,TOC濃度をそれぞれ60%,65-75%,75-90%,92-94%,と総括している。一般に,水素濃度とHI値の間には正の相関関係が認められるため(例えば,HI = 691(H/C) – 378: Tissot and Welte 1984に基づき算出;HI=895.7(H/C)2 – 514.3(H/C) +77.6: Lewan and Pawlewicz 2017),水素濃度の高い泥炭・褐炭・亜炭は水素資源としての価値は高いことが予想される。この関係式で計算される泥炭・褐炭のHI値は最大約400mgHC/gCとかなり高く,水素資源としてのポテンシャルの高さが伺われる。

【斐伊川-宍道湖および飯梨川-中海水系の陸源有機物のRock Eval等の分析結果】
 両水系をまとめると,植物,腐植化植物(土壌と一体化していない表層の枯葉枯草等),その下の土壌,その直近の沢・河川の泥,宍道湖・中海の表層1cmの泥の分析結果は以下のとおりである。(TOC濃度)植物のTOC濃度は平均値42.2%(範囲33.4-50.4),腐植化植物は41.3%(22.7-52.2),土壌は4.9%(0.8-14.4),河川泥は4.2%(1.4-8.4),湖底泥は3.3%(1.9-3.9)であった。灰分は植物(0.05-17%)よりも腐植化植物(1.8-39 %)で多いので腐植化に伴った有機物分解の程度が分かる。(C/N比)腐植化と土壌化に伴って窒素濃度は減少したがC/N比(重量比)も減少した。このことは,タンパク質分解速度よりもセルロース分解速度のほうが大きいことを示唆する。土壌・河川泥のC/N比は約15を示し,起源植物の数分の1に減少していた。(HI値)植物は平均値383mgHC/gC(範囲53-823),腐植化植物は440mgHC/gC(127-898),土壌は221mgHC/gC(62-453),河川泥は212mgHC/gC(90-425),湖底泥は286mgHC/gC(137-382)であった。陸上植物は腐植化に伴い水素指数が増加している。なお,湖沼泥には自生性の植物プランクトンが優勢に加わっている。

 以上のことから,陸源有機物はこれまで考えられていたよりも潜在的に大きな水素指数を有するものと考えられる。

(文献)地質調査所(1960)日本鉱産誌(BV-a)石炭.775pp.東京地学協会.砧書房. Lewan, M.D. and Pawlewicz, M.J. (2017) AAPG, 101 (12), 1945-1970. Tissot, B.P. and Welte, D.K. (1984) Petroleum formation and occurrence. 699pp., Springer-Verlag.