129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T5.[Topic Session]Glocal stratigraphy and geochronology

[7poster06-11] T5.[Topic Session]Glocal stratigraphy and geochronology

Sat. Sep 10, 2022 9:00 AM - 12:30 PM poster (poster)


フラッシュトーク有り 9:00-10:00頃 ポスターコアタイム 10:30-12:30

[T5-P-3] (Entry) Reexamination of marine seismic stratigraphy in off Tanabe, Southwest part of Wakayama Prefecture

*Seishiro Furuyama1, Takuro Karasawa1, Yoshimugi Kagitani, Sho Yokoyama2 (1. Tokyo University of Marine and Science Technology, 2. Shinnihonkai Ferry Co.,Ltd.)


Keywords:Marine seismic stratigraphy, Seismic reflection survey, Southwest part of Wakayama Prefecture, off Tanabe

沿岸海域の地質情報は、陸域から得られる地質情報を補強し当該地域の地質形成史解明に貢献する(佐藤ほか, 2021)。近年では、再生可能エネルギー導入にともなう沿岸海域開発の促進により、沿岸海域の地質情報は重要度を増している。こうしたなか、1976年から刊行された海上保安庁水路部(現 海上保安庁 海洋情報部)の「沿岸の海の基本図」は、沿岸海域の地質情報を知る上で貴重な資料である。「沿岸の海の基本図」に含まれる海底地質構造図は、反射法音波探査によって取得された海底下の地質断面の解釈に基づいて作成される。反射法音波探査の調査測線は対象海域について高密度に設定され、地質構造の連続性を精度良く追跡できる。しかし、「沿岸の海の基本図」には1970年代〜1980年代に作成されたものも多く、それらにはその後に普及した、例えばシーケンス層序学などの概念は反映されていない。近年の研究成果を「沿岸の海の基本図」に適用し反射断面を再解釈することで、当該地域の地質形成史を詳細に明らかにできる可能性が高い。そこで本研究では、和歌山県南西部田辺市沖(以下、田辺沖)を対象とした「沿岸の海の基本図 日ノ御埼」(海上保安庁水路部, 1987)の作成に用いられた反射断面について再解釈を行った。それらの反射断面は、1986年 (昭和61年) 6~8月にかけてスパーカーを音源とした反射法音波探査で取得されたものである。なおデータは海上保安庁 海洋情報部の許可を得て使用した。

海上保安庁水路部 (1987) の調査海域は、北緯33度53分42.011秒、東経134度54分50.120秒から北緯33度38分12.145秒、東経135度21分49.991秒の範囲である。隣接する陸域では、下位から上部白亜系日高川層群、暁新統〜下部始新統音無川層群、中部始新統〜下部漸新統牟婁層群、下部中新統田辺層群、中部中新統〜上部中新統目津層、下部更新統塔島層、沖積層が分布する。海上保安庁水路部(1987)は、内部反射の特徴に基づき、田辺沖の地層を下位からⅧH層〜ⅠH層に層序区分した。ⅧH層は音響的に不透明な地層または層理面を確認でき、褶曲構造の発達した地層で、日高川層群・音無川層群・牟婁層群・田辺層群を含む地層とされる。ⅦH層およびⅥH層は平行な縞状模様で特徴づけられ、斜交層理があまり認められない地層で、上部中新統〜鮮新統に対比される。ⅤH層、ⅣH層、ⅢH層およびⅡH層では、陸棚上でほぼ水平な反射面が発達し外縁部に向かって斜交層理が発達するとされ、更新統に対比される。ⅠH層は本海域における最上位の地層で、全般にやや白く抜けるパターンを呈し、完新統に対比される。 本研究では、不整合および内部反射の特徴と、地層の形成過程を考慮し、海上保安庁水路部(1987)で8層に区分された田辺沖の地層を、下位から音響基盤、田辺沖ユニット1、田辺沖ユニット2、田辺沖ユニット3の4層に層序区分した。海上保安庁水路部(1987)において最下位層であるⅧH層のうち音響的に不透明とされる地層は、褶曲構造の発達した地層と不整合で区分され、またその分布が日高川層群、音無川層群、牟婁層群の海域延長部に位置する。これらのことから、本研究ではⅧH層を2層に区分し、音響的に不透明な地層を音響基盤、褶曲構造の発達した地層を田辺沖ユニット1とした。ⅦH層〜ⅡH層はその堆積パターンの特徴が一連の海水準変動での形成を示唆する。このことから、本研究ではⅦH層〜ⅡH層を田辺沖ユニット2とし、堆積パターンの特徴から2a, 2b、2c、2d、2eの5層に細分した。田辺沖ユニット2aは田辺沖ユニット1を不整合に覆い、沖でプログラデーションパターンを示す。田辺沖ユニット2bは田辺沖ユニットaに対し平行に重なり、オンラップパターンで特徴づけられる。田辺沖ユニット2c、田辺沖ユニット2d、田辺沖ユニット2eはプログラデーションパターンで特徴づけられる。田辺沖ユニット3は本地域のほぼ全域に認められる最上位の地層でⅠH層に相当する。連続性が良く海底面とほぼ平行な反射面で特徴付けられる。

本講演では、これらの音響層序区分とその堆積パターンに基づいて推定した各ユニットの地質時代と、和歌山県南西部のにおける田辺層群堆積以降の地質形成史について議論する。

[引用文献] 海上保安庁水路部, 1987, 5万分の1沿岸の海の基本図「日ノ御埼」. 日本地質学会, 2009, 日本地方地質誌 5 近畿地方, 朝倉書店, 141−263. 佐藤智之, 2021, 10万分の1相模湾沿岸域海底地質図説明書. 海陸シームレス地質情報集, 相模湾沿岸域, 海陸シームレス地質図S–7.