[T5-P-4] Subsurface Quaternary stratigraphy in the Okinosu area, coastal area of the Tokushima Plain
Keywords:Tokushima Plane, Quaternary stratigraphy, Radiocarbon age, Pollen
徳島平野は紀伊水道西岸に位置し,海岸部では南北に約10 km,西方へ約75 kmの奥行きを有する.平野北縁は東北東-西南西方向に伸びる中央構造線断層帯によって,讃岐山地を形成する上部白亜系和泉層群と区切られる.徳島平野は,中央構造線断層帯の活動によって形成された構造盆地であると考えられ,その地下地層は,上位から第四系の徳島層および北島層,三波川変成岩類に由来する基盤岩から構成される.徳島層は沖積層に相当し,その堆積環境や年代について,先行研究によって議論されてきた.一方,徳島層の下位に分布する北島層については,その年代や堆積環境についての記録に乏しい.北島層の層序を明らかにすることは,中央構造線断層帯の活動履歴や徳島平野の発達史を議論する上で重要である.
近年,徳島平野地下の北島層の分布を明らかにする試みがなされている.西山ほか(2017)は,既存ボーリング資料を用いて,北島層の分布形態を考察した.その結果,北島層中に,平野南部から北に向かって分布深度が大きくなる3枚の海成泥層を認めた.佐藤・水野(2021)は,平野北部の徳島県鳴門市から掘削された坂東観測井コアの深度90 m以深から,海洋酸素同位体ステージ(MIS)5〜13に対比される海成層を報告した.また,中谷ほか(2021)は,吉野川南岸に位置する中徳島町から掘削された80 mオールコアボーリングの層序を検討し,北島層の堆積開始がMIS 13まで遡る可能性を示した.しかし,海成層の認定やMISとの対比については議論の余地がある.そこで,本発表では,徳島平野沿岸部に位置する沖洲地区から掘削した131 mオールコアボーリング(GS-TKS-1)について,層相観察,放射性炭素年代測定,火山灰分析,珪藻・花粉化石分析を行い,徳島平野南部における地下層序を検討した.
層相観察、放射性炭素年代測定などに基づいて,GS-TKS-1コアを13の堆積ユニットに区分した.ユニット12(深度5.00〜39.54 m)は,塊状泥層、砂質泥層、泥質砂層、細粒〜中粒砂層からなり,Kawamura (2006)における徳島層下部〜上部に相当する.深度30.5 m付近に,屈折率n=1.508〜1.513(モード:n=1.509〜1.511)の火山ガラス濃集層が挟まり,含まれる木片からは約7,000〜7,300 cal BPの放射性炭素年代値が得られた.そのため,本層はK–Ah火山灰層(町田・新井 2003)に対比が予想される.徳島層基底は砂礫層と礫混じり泥層から構成されるユニット11(深度39.54〜53.14 m)に位置すると考えられるが,徳島層最下部と北島層の礫層を岩相で判別することはできなかったため,その深度は不明である.
北島層は礫層,砂質層,塊状泥層,有機質泥質層から構成され,その基底は深度130.43 mである.泥層を含む細粒堆積物は下位から,深度109.00〜125.49 m(ユニット3〜4),深度92.50〜101.00 m(ユニット6),深度70.20〜74.39 m(ユニット8),および深度53.14〜66.20 m(ユニット10)に分布する.塊状泥層のユニット10および有機質泥層のユニット4は,それぞれ貝殻片と海生〜汽水生珪藻化石が認められることから,海成層と考えられる.また,花粉化石分析の結果,ユニット10からは低率ながらサルスベリ属が,ユニット4からはコナラ属アカガシ亜属が20%を超えて産出した.そのため,ユニット10および4は,ぞれぞれMIS 5eおよび11に対比される.また,ユニット6および8は坂東観測井コアの花粉群集との対比から,それぞれMIS 9および7に相当すると考えられる.しかし,これら堆積ユニットからは貝殻片や珪藻化石を認めることができず,現状では堆積環境の判断はできない.
以上より,徳島平野沿岸部・沖洲地区では,MIS 11以降の中・上部更新統〜完新統が分布し,沖積層を含めて,少なくとも3枚の海成層が分布することが明らかになった.今後,既存ボーリング資料との対比を進めることで,徳島平野の発達史の解明を試みる.
<引用文献>
Kawamura, 2006, Jour. Geoscience, Osaka City Univ., 49, 103–117.
町田・新井,2003,東京大学出版会,336p.
中谷ほか,GSJ速報, 82, 7–20.
西山ほか,2017, 日本地質学会第124年学術大会講演要旨集,135.
佐藤・水野, GSJ速報,82,21–27.
近年,徳島平野地下の北島層の分布を明らかにする試みがなされている.西山ほか(2017)は,既存ボーリング資料を用いて,北島層の分布形態を考察した.その結果,北島層中に,平野南部から北に向かって分布深度が大きくなる3枚の海成泥層を認めた.佐藤・水野(2021)は,平野北部の徳島県鳴門市から掘削された坂東観測井コアの深度90 m以深から,海洋酸素同位体ステージ(MIS)5〜13に対比される海成層を報告した.また,中谷ほか(2021)は,吉野川南岸に位置する中徳島町から掘削された80 mオールコアボーリングの層序を検討し,北島層の堆積開始がMIS 13まで遡る可能性を示した.しかし,海成層の認定やMISとの対比については議論の余地がある.そこで,本発表では,徳島平野沿岸部に位置する沖洲地区から掘削した131 mオールコアボーリング(GS-TKS-1)について,層相観察,放射性炭素年代測定,火山灰分析,珪藻・花粉化石分析を行い,徳島平野南部における地下層序を検討した.
層相観察、放射性炭素年代測定などに基づいて,GS-TKS-1コアを13の堆積ユニットに区分した.ユニット12(深度5.00〜39.54 m)は,塊状泥層、砂質泥層、泥質砂層、細粒〜中粒砂層からなり,Kawamura (2006)における徳島層下部〜上部に相当する.深度30.5 m付近に,屈折率n=1.508〜1.513(モード:n=1.509〜1.511)の火山ガラス濃集層が挟まり,含まれる木片からは約7,000〜7,300 cal BPの放射性炭素年代値が得られた.そのため,本層はK–Ah火山灰層(町田・新井 2003)に対比が予想される.徳島層基底は砂礫層と礫混じり泥層から構成されるユニット11(深度39.54〜53.14 m)に位置すると考えられるが,徳島層最下部と北島層の礫層を岩相で判別することはできなかったため,その深度は不明である.
北島層は礫層,砂質層,塊状泥層,有機質泥質層から構成され,その基底は深度130.43 mである.泥層を含む細粒堆積物は下位から,深度109.00〜125.49 m(ユニット3〜4),深度92.50〜101.00 m(ユニット6),深度70.20〜74.39 m(ユニット8),および深度53.14〜66.20 m(ユニット10)に分布する.塊状泥層のユニット10および有機質泥層のユニット4は,それぞれ貝殻片と海生〜汽水生珪藻化石が認められることから,海成層と考えられる.また,花粉化石分析の結果,ユニット10からは低率ながらサルスベリ属が,ユニット4からはコナラ属アカガシ亜属が20%を超えて産出した.そのため,ユニット10および4は,ぞれぞれMIS 5eおよび11に対比される.また,ユニット6および8は坂東観測井コアの花粉群集との対比から,それぞれMIS 9および7に相当すると考えられる.しかし,これら堆積ユニットからは貝殻片や珪藻化石を認めることができず,現状では堆積環境の判断はできない.
以上より,徳島平野沿岸部・沖洲地区では,MIS 11以降の中・上部更新統〜完新統が分布し,沖積層を含めて,少なくとも3枚の海成層が分布することが明らかになった.今後,既存ボーリング資料との対比を進めることで,徳島平野の発達史の解明を試みる.
<引用文献>
Kawamura, 2006, Jour. Geoscience, Osaka City Univ., 49, 103–117.
町田・新井,2003,東京大学出版会,336p.
中谷ほか,GSJ速報, 82, 7–20.
西山ほか,2017, 日本地質学会第124年学術大会講演要旨集,135.
佐藤・水野, GSJ速報,82,21–27.