[T11-P-1] (Entry) Characteristics of Sediments and Their Depositional Conditions in the Offshore Area of the Fuji River, Suruga Bay, Japan
【zoomによるフラッシュトーク有り】9/10(土)9:15-9:20
Keywords:Suruga Bay, Sedimentary Gravity Flow, Fujikawa river
駿河湾はプレートの収束域に位置し,最深部は約2600 mに達する.駿河湾奥部には一級河川富士川(全長約128 km)が流入している.富士川では,台風や梅雨時に浸水や流出災害を伴う氾濫が多く発生している(国土交通省HP).このような氾濫時には,濁度の高い河川水が河口から駿河湾内へ流入する様子が航空写真から観察され,多くの砕屑物を含む河川水が海域へ流出していることが推察される.したがって,洪水による堆積物運搬および海域への影響を検討する上で,富士川沖海域は適した海域であると言える.そこで,本研究では,河川の氾濫による海域への堆積物供給過程の解明に向けて,駿河湾奥部における海洋地質学的調査を行った.
調査は東海大学所有の大型調査船望星丸(2000 t)に搭載されているマルチナロービーム音響測深器を用い,駿河湾の詳細な海底地形および後方散乱強度データの取得と蓄積を行った.沿岸域では同大学所有の小型調査船,北斗・南十字(19 t)を用い,表層堆積物の底質調査を行った.海底地形的特徴から,富士川沖に広がる海底扇状地(池原・西田,2017,Soh et al, 1995)は本調査により,①扇頂部(水深600 m以浅,勾配約16%),②扇央部(水深600~1300m,勾配約12%),③扇端部(水深1300-1400 m,勾配約3%)の3つに区分された.後方散乱強度マップ(2014年取得)からは,粗粒な堆積物を示すと考えられる強反射が南北方向に網状河川のように分布することが確認された.
2021年度は,後方散乱強度マップに基づき,富士川河口から南北方向に設定した測線上の水深110 mから1418 m(河口から約13 km)までの13地点に加え,駿河トラフ沿いの水深1445 m(湾奥部),水深1596 m(湾央部),水深2618 m(湾口部)の3地点の合計16地点において採泥調査を実施した.採泥調査ではスミスマッキンタイヤ式グラブ採泥器を用いた.実施した調査地点のうち,水深560~1418 mに位置する7地点と駿河トラフ沿い(水深1445 m,水深1596 m,水深2618 m)の3地点から柱状アクリルケースを用いて柱状試料(最大20 cm)を採取し,肉眼観察,軟X線写真観察,レーザー回析散乱法による粒度分析,スミアスライドによる堆積物観察を行った. その結果,堆積物試料および海底映像から,以下の6つの特徴が確認された. (1)海底映像からは,水深約100~1400 m付近に至る全域にわたり,海底表面がオリーブ色の泥質堆積物に覆われていた.(2)海底映像や堆積物試料から,水深約1000 mまで大きさ数cm~10 cmの礫が散在している様子が確認された.(3)水深560 m~1343 mまでに位置する7地点から採取した柱状試料では,軟X線写真からラミナの発達が確認される砂質堆積物(粒径約2φ)が採取された.(4)水深1387 mおよび水深1416 mの採泥点では,表面を覆うオリーブ色の泥質堆積物の下位に,厚さ数cmにおよぶポケット状に堆積した黒色植物が観察された.また,水深1416 mの採泥点では,表層1 cmに黒色植物層,その下位にラミナが発達するシルト層が堆積していた.(5)スミアスライドによる観察結果から,湾奥部の堆積物は淡水性プランクトンが多く観察され,海洋性プランクトンは観察されなかった.湾口部の堆積物は海洋性プランクトンが多く観察された.(6)水深1075 mに位置する採泥点では,海底映像から,根のついた緑色の新鮮な状態の植物(全長約20 cm)が海底表面に堆積している様子が観察された.
以上より堆積物特徴,分布範囲などから富士川を起源とする堆積物は,湾奥部に広域に分布することが明らかになった.したがって,駿河湾奥部では台風などの大雨を伴うイベント時には,富士川からの砕屑物を多く含む河川水による堆積物の運搬が起きていたと考えられ,今後この運搬メカニズム解明に取り組む予定である.
引用文献 西田尚央,池原 研(2017)駿河湾北部沿岸域の海底堆積物の特徴とその堆積プロセス,海陸シームレス地質情報集,駿河湾北部,海陸シームレス地質図S-5, 2016
Soh,W., Tanaka,T. and Taira, A. (1995)Geomorphology and processes of a modern slope-type fan delta(Fujikawa fan delta), Suruga Trough, Japan, Sedimentary Geology, 98, 79-95.
調査は東海大学所有の大型調査船望星丸(2000 t)に搭載されているマルチナロービーム音響測深器を用い,駿河湾の詳細な海底地形および後方散乱強度データの取得と蓄積を行った.沿岸域では同大学所有の小型調査船,北斗・南十字(19 t)を用い,表層堆積物の底質調査を行った.海底地形的特徴から,富士川沖に広がる海底扇状地(池原・西田,2017,Soh et al, 1995)は本調査により,①扇頂部(水深600 m以浅,勾配約16%),②扇央部(水深600~1300m,勾配約12%),③扇端部(水深1300-1400 m,勾配約3%)の3つに区分された.後方散乱強度マップ(2014年取得)からは,粗粒な堆積物を示すと考えられる強反射が南北方向に網状河川のように分布することが確認された.
2021年度は,後方散乱強度マップに基づき,富士川河口から南北方向に設定した測線上の水深110 mから1418 m(河口から約13 km)までの13地点に加え,駿河トラフ沿いの水深1445 m(湾奥部),水深1596 m(湾央部),水深2618 m(湾口部)の3地点の合計16地点において採泥調査を実施した.採泥調査ではスミスマッキンタイヤ式グラブ採泥器を用いた.実施した調査地点のうち,水深560~1418 mに位置する7地点と駿河トラフ沿い(水深1445 m,水深1596 m,水深2618 m)の3地点から柱状アクリルケースを用いて柱状試料(最大20 cm)を採取し,肉眼観察,軟X線写真観察,レーザー回析散乱法による粒度分析,スミアスライドによる堆積物観察を行った. その結果,堆積物試料および海底映像から,以下の6つの特徴が確認された. (1)海底映像からは,水深約100~1400 m付近に至る全域にわたり,海底表面がオリーブ色の泥質堆積物に覆われていた.(2)海底映像や堆積物試料から,水深約1000 mまで大きさ数cm~10 cmの礫が散在している様子が確認された.(3)水深560 m~1343 mまでに位置する7地点から採取した柱状試料では,軟X線写真からラミナの発達が確認される砂質堆積物(粒径約2φ)が採取された.(4)水深1387 mおよび水深1416 mの採泥点では,表面を覆うオリーブ色の泥質堆積物の下位に,厚さ数cmにおよぶポケット状に堆積した黒色植物が観察された.また,水深1416 mの採泥点では,表層1 cmに黒色植物層,その下位にラミナが発達するシルト層が堆積していた.(5)スミアスライドによる観察結果から,湾奥部の堆積物は淡水性プランクトンが多く観察され,海洋性プランクトンは観察されなかった.湾口部の堆積物は海洋性プランクトンが多く観察された.(6)水深1075 mに位置する採泥点では,海底映像から,根のついた緑色の新鮮な状態の植物(全長約20 cm)が海底表面に堆積している様子が観察された.
以上より堆積物特徴,分布範囲などから富士川を起源とする堆積物は,湾奥部に広域に分布することが明らかになった.したがって,駿河湾奥部では台風などの大雨を伴うイベント時には,富士川からの砕屑物を多く含む河川水による堆積物の運搬が起きていたと考えられ,今後この運搬メカニズム解明に取り組む予定である.
引用文献 西田尚央,池原 研(2017)駿河湾北部沿岸域の海底堆積物の特徴とその堆積プロセス,海陸シームレス地質情報集,駿河湾北部,海陸シームレス地質図S-5, 2016
Soh,W., Tanaka,T. and Taira, A. (1995)Geomorphology and processes of a modern slope-type fan delta(Fujikawa fan delta), Suruga Trough, Japan, Sedimentary Geology, 98, 79-95.