[T11-P-2] (Entry) Provenance discrimination of quartz grains based on the characteristics of cathodoluminescence spectrum using peak separation
【zoomによるフラッシュトーク有り】9/10(土)9:20-9:25
Keywords:CL, quartz, source rock discrimination, provenance analysis, sedimentary rock, metamorphic rock
【はじめに】
カソードルミネッセンス (Cathodoluminescence: CL) は,物質に電子線を照射した際に生じる発光現象である.その特性は結晶中の格子欠陥や不純物元素を反映するため,石英のCLを利用した後背地解析手法が提案されてきた (Zinkernagel, 1978; Augustsson and Reker, 2012).しかし,これらの研究の多くはCL組織や発光スペクトルの概形に基づく分類にとどまっているため,一部の岩種は識別が困難である,発光中心の形成要因に関する議論に乏しいといった課題がある.本研究では,火成岩および変成岩に含まれる石英粒子のCLスペクトルを測定し,ピーク分離を用いてCL特性を定量的に評価することで源岩判別指標の構築を試みた.
【分析試料・手法】
分析には火山岩,深成岩,高温変成岩,高圧変成岩の計16試料を用いた.CLスペクトルは,回折格子型分光器 (Gatan社製,MonoCL4) を組み込んだ走査型電子顕微鏡 (日立ハイテク社製,S-4300N) によって250-950 nmの波長範囲で測定した.得られたスペクトルをVoigt関数の利用により5個のピークへと分離した.設定した5個の発光中心は,主に結晶中の構造欠陥や不純物元素による発光とされている1.60 eV (770 nm),1.95 eV (620 nm),2.80 eV (450 nm),2.95 eV (420 nm),3.30 eV (380 nm) である.
【結果・議論】
火山岩では1.60 eV,2.95 eV,3.30 eVのピークが相対的に大きな発光強度を示した.Stevens-Kalceff (2009) では1.65 eV,Götze et al. (2001) では1.75 eVの発光がFe3+によるSi4+の置換に起因するとしている.また,3.30 eVの発光はAl3+によるSi4+の置換に因る (Stevens-Kalceff, 2009).したがって,本研究で確認された1.60 eVと3.30 eVの発光も急速な結晶の成長によって取り込まれた不純物元素としてのFe3+やAl3+に起因すると考えられる.深成岩および高温変成岩では2.80 eVのピークが最も大きな発光強度を示した.高圧変成岩では1.95 eVの発光が特徴的であった.Stevens-Kalceff (2009) は1.95 eVのCL発光が非架橋酸素正孔中心に関連するとしており,圧力で歪んだSi-O結合がこの前駆体となり得る (Slitter and Götze, 2018). 以上より,1.60 eV+2.95 eV+3.30 eV,2.80 eV,1.95 eVの相対的な発光強度がそれぞれ,不純物元素,被熱,圧力の影響を反映した指標となることが示唆された.そこで,これらを端成分に持つ三角ダイヤグラムを作成した.火山岩と高圧変成岩のプロットは明瞭に分離された.深成岩と高温変成岩は一部重複があるものの,前者は火山岩に近い領域,後者は高圧変成岩に近い領域へプロットされる傾向が見られた.したがって,本ダイヤグラムによって,石英粒子に含まれる不純物元素および被った温度や圧力の程度を復元し,一定の範囲内で源岩を判別できることが示された.本研究結果を砕屑物中の石英粒子に適用することで,後背地解析に有用となる可能性がある.
文献
Augustsson and Reker, 2012, J. Sediment. Res., 82, 559-570. Götze et al., 2001, Mineral. and Petrol., 71, 225-250. Slitter and Götze, 2018, Minerals, 8, 190. Stevens-Kalceff, 2009, Mineral. Mag., 73, 585-605. Zinkernagel, 1978, Contrib. sedimentol., 8, 1-69.
カソードルミネッセンス (Cathodoluminescence: CL) は,物質に電子線を照射した際に生じる発光現象である.その特性は結晶中の格子欠陥や不純物元素を反映するため,石英のCLを利用した後背地解析手法が提案されてきた (Zinkernagel, 1978; Augustsson and Reker, 2012).しかし,これらの研究の多くはCL組織や発光スペクトルの概形に基づく分類にとどまっているため,一部の岩種は識別が困難である,発光中心の形成要因に関する議論に乏しいといった課題がある.本研究では,火成岩および変成岩に含まれる石英粒子のCLスペクトルを測定し,ピーク分離を用いてCL特性を定量的に評価することで源岩判別指標の構築を試みた.
【分析試料・手法】
分析には火山岩,深成岩,高温変成岩,高圧変成岩の計16試料を用いた.CLスペクトルは,回折格子型分光器 (Gatan社製,MonoCL4) を組み込んだ走査型電子顕微鏡 (日立ハイテク社製,S-4300N) によって250-950 nmの波長範囲で測定した.得られたスペクトルをVoigt関数の利用により5個のピークへと分離した.設定した5個の発光中心は,主に結晶中の構造欠陥や不純物元素による発光とされている1.60 eV (770 nm),1.95 eV (620 nm),2.80 eV (450 nm),2.95 eV (420 nm),3.30 eV (380 nm) である.
【結果・議論】
火山岩では1.60 eV,2.95 eV,3.30 eVのピークが相対的に大きな発光強度を示した.Stevens-Kalceff (2009) では1.65 eV,Götze et al. (2001) では1.75 eVの発光がFe3+によるSi4+の置換に起因するとしている.また,3.30 eVの発光はAl3+によるSi4+の置換に因る (Stevens-Kalceff, 2009).したがって,本研究で確認された1.60 eVと3.30 eVの発光も急速な結晶の成長によって取り込まれた不純物元素としてのFe3+やAl3+に起因すると考えられる.深成岩および高温変成岩では2.80 eVのピークが最も大きな発光強度を示した.高圧変成岩では1.95 eVの発光が特徴的であった.Stevens-Kalceff (2009) は1.95 eVのCL発光が非架橋酸素正孔中心に関連するとしており,圧力で歪んだSi-O結合がこの前駆体となり得る (Slitter and Götze, 2018). 以上より,1.60 eV+2.95 eV+3.30 eV,2.80 eV,1.95 eVの相対的な発光強度がそれぞれ,不純物元素,被熱,圧力の影響を反映した指標となることが示唆された.そこで,これらを端成分に持つ三角ダイヤグラムを作成した.火山岩と高圧変成岩のプロットは明瞭に分離された.深成岩と高温変成岩は一部重複があるものの,前者は火山岩に近い領域,後者は高圧変成岩に近い領域へプロットされる傾向が見られた.したがって,本ダイヤグラムによって,石英粒子に含まれる不純物元素および被った温度や圧力の程度を復元し,一定の範囲内で源岩を判別できることが示された.本研究結果を砕屑物中の石英粒子に適用することで,後背地解析に有用となる可能性がある.
文献
Augustsson and Reker, 2012, J. Sediment. Res., 82, 559-570. Götze et al., 2001, Mineral. and Petrol., 71, 225-250. Slitter and Götze, 2018, Minerals, 8, 190. Stevens-Kalceff, 2009, Mineral. Mag., 73, 585-605. Zinkernagel, 1978, Contrib. sedimentol., 8, 1-69.