129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Poster

T11.[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

[7poster12-18] T11.[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Sat. Sep 10, 2022 9:00 AM - 12:30 PM poster (poster)


フラッシュトーク有り 9:00-10:00頃 ポスターコアタイム 10:30-12:30

[T11-P-4] Reconstruction of Plio-Pleistocene depositional systems in Hachikoku Anticline, Niigata Prefecture, central Japan, based on the studies of lithology, geochemistry and diatom fossils.

*Ayaka TANAKA1, Koichi HOYANAGI1 (1. Shinshu University)


Keywords:Depositional system, Niigata basin, Geochemical analysis, Diatom fossil analysis

【はじめに】
研究地域の新潟県長岡市から柏崎市に位置する八石背斜周辺には,主に鮮新統から更新統の堆積岩類(一部火山岩類)が分布する.この地域ではこれまで多くの研究が進められており,下位から程平層,八石山層,菅沼層,八王子層,魚沼層群が累重することが明らかとされている(小林ほか,1989など).1990年代以降にはシーケンス層序学による堆積盆解析が進められ,新潟堆積盆内各地域におけるシーケンス層序の概要が明らかになっている(荒戸ほか,1994;高野,1998など). しかしながら,本研究地域の堆積システム復元およびシーケンス解析においては,対象を魚沼層群などの砂質及び礫質な地層にしぼったものが多く,下位の泥岩などが卓越する地層の研究例は少ない.また野外調査と分析の両面から堆積システム復元やシーケンス解析を行った研究も多くない.さらに八石背斜の両翼での堆積環境の対比は十分に行われていない.そこで,鮮新統から更新統までの連続的な野外調査と泥質堆積物の化学分析によって,八石背斜両翼での堆積システム復元およびシーケンス解析を行い,八石背斜周辺の堆積環境の変遷を明らかにすることを目的とし研究を行った.

【研究手法】
野外調査を基に1/1000または1/2500のルートマップ,柱状図,地質図を作成した.さらに堆積相解析を行い,両翼での対比を行った.また主に菅沼層から八王子層の泥質試料を厚さ約10 m間隔でサンプリングし,全有機炭素量分析,全窒素量分析,安定炭素同位体比分析,全硫黄量分析,粒度分析,珪藻化石分析を行った.

【岩相に基づく両翼間の堆積システムの違い】
本研究の野外調査において,八石背斜の両翼での八石山層の岩相の違い,菅沼層の岩相の違い,魚沼層群の層厚の違いが認められた.八石山層の岩相は,西翼は主に最大で1m程の角礫を含むハイアロクラスタイト,東翼は主に暗灰色シルトと粗粒凝灰岩であった.このような岩相の違いは,八石山層の供給源である海底火山の中心が西側にあったことを示しており,小林ほか(1989)によって研究地域の南西に噴火の中心があったことが明らかとされている.また菅沼層では背斜の東翼においてのみ,炭質物を多く含むハイパーピクナイト層がみられた.これは菅沼層や八王子層の大部分は地形的な影響を受けずに両翼に同様に堆積したと考えられるが,八石山層堆積時の西翼側の地形的高まりにより東翼側でデルタに接続し堆積場の中心になっていたために生じたと考えられる.さらに魚沼層群堆積時には,引き続き東翼側がデルタに接続していたために,東翼の層厚が西翼に比べて大きくなったと考えられる.

【化学・珪藻化石分析に基づく両翼間の堆積システムの違い】
両翼の菅沼層と八王子層について泥質試料の化学分析を行った.まず全有機炭素量分析では,東翼に比べ西翼の方が値の変動幅が小さく,東翼では複数のピークがみられるのに対し,西翼では大きなピークは見られなかった.また全有機炭素量と全窒素量の比であるC/N比は,全有機炭素量と同様の両翼間での差異がみられた.さらに安定炭素同位体比分析では,両翼共に上位に向かって有機物の起源が陸源になることを示していた.このような化学分析の結果から,西翼に比べて東翼側の方が,海洋環境であっても陸源有機物の影響をより強く受ける環境であったと考えられる.また両翼共に上位に向かって陸源有機物の影響が大きくなることが示されたため,上位ほどプロキシマルな環境で堆積したと考えられる.このような化学分析結果と同様に,現在分析中である珪藻化石分析についても両翼間の堆積環境の共通点や相違が得られることが期待される.

【岩相及び化学・珪藻化石分析に基づく両翼間の堆積システムの考察】
以上の岩相や各分析結果を総合すると,八石背斜地域の堆積環境は八石山層堆積時の西翼側の地形的高まりの形成によって,菅沼層~八王子層堆積時には東翼側でデルタに接続し,より陸源有機物の供給が多かったと考えられる.さらに魚沼層群堆積時にも引き続き東翼側でデルタに接続していたために砕屑物が東翼側に多く供給され,時間スケール全体としてはデルタによる埋積によって両翼共に上位に向かってプロキシマルな環境へと変遷したと考えられる.


引用文献
小林巖雄・立石雅昭・黒川勝己・吉村尚久・加藤碵一,1988,岡野町地域の地質.地域地質研究報告,5万分の1地質図幅,新潟(7),49.
荒戸裕之・亀尾浩司・保柳康一,1994,背弧堆積盆地におけるシーケンス解析新潟県蒲原地域の例.石油技協会誌,59,18−29.
高野修,1998,新潟堆積盆における上部鮮新統~下部更新統のシーケンス層序-研究の現状と今後の課題-.堆積学研究,48,21-39.