日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

G1-7. ジェネラル サブセッション海洋地質

[7poster37-40] G1-7. ジェネラル サブセッション海洋地質

2022年9月10日(土) 10:30 〜 12:30 ポスター会場 (ポスター会場)

[G7-P-1] 熊野沖南海トラフ地すべり表層堆積物の堆積構造

*福地 里菜1、浜橋 真理2、村山 雅史3、白石 和也4、大熊 祐一5、芦 寿一郎5、山口 飛鳥5 (1. 鳴門教育大学、2. 山口大学、3. 高知大学、4. 海洋研究開発機構、5. 東京大学)


キーワード:南海トラフ、海底地すべり、ピストンコア試料

海山などの地形的高まりの沈み込みによってもたらされる付加体の発達過程の変化と地震活動の関係はこれまで数多く議論がされており(Scholz and Small, 1997; Cloos, 1992; Cloos and Shreve, 1996; Wang and Bilek, 2014 ほか),近年ではスロー地震との関係性も明らかになってきた(Sun et al., 2020ほか)。海底面の凹凸よりもプレート境界断層面の摩擦が付加体前縁部の構造発達に寄与するとの議論もなされているが,その原因や発達過程と時空間的な情報についてはデータが少ない。 熊野灘の付加体前縁部では磁気異常データから,南海トラフの北西側に地形的高まりが沈み込んでいることがわかっており,国際深海掘削計画(IODP)C0006地点,C0007地点,C0024地点では掘削がなされ,層序と年代により構造発達がわかってきた(Yamaguchi et al., 2020)。断層の西側では,約10 km平方におよぶ窪んだ地形と地すべり地形が発達し,地形的高まりの沈み込みによるものと考えられる。 そこで,2022年3月に東北海洋生態系調査研究船(学術研究船)「新青丸」KS-22-3次航海において,この場所の海底面の地形的高まりの沈み込みによって引き起こされた地すべり地点で採泥した。採泥には,パイロットコアラーを装着したピストンコアラーを用いた。採泥長は約2.8 m であった。採取したピストンコア試料は高知コアセンターにてX線C T分析を行い,半割し,岩相記載,スミアスライド観察,マルチセンサーコアロガー(MSCL)による物理計測とXRFコアスキャナー(ITRAX)による元素分析をそれぞれ行った。MSCLによるガンマ線密度は約1.5–2.0 g/cm3の範囲を示し,海底下0-1.4 mまでは増加傾向を示す。それ以深は礫が入ってくるために測定値に誤差が大きい。帯磁率は約0.66–2.9×10-3 SIを示し,海底下1.38 mで最も高い値を示した。この層準は極粗粒砂を含むシルト質砂であり,不透明鉱物やスコリア質のものが多く見られたため,火山性砕屑物を含むと考えられる。コアの帯磁率は,付加体前縁部のC0024地点では1.5–4×10-3 SI(Yamaguchi et al., 2020),一方で四国海盆堆積物であるC0012地点のUnit I ~Vに対して低い値を示す(Saito et al., 2010)。ガンマ線密度や帯磁率は付加体前縁部浅部と物性値の範囲が重複した。 海底下1.4-1.7mの礫は砂岩であるのに対し,1.7m以深では緑色粘土を基質に持つ泥岩礫であった。泥質礫はITRAXにおけるCaやFeの増加としても反映されていた。コアでは1.7 mを境に礫の岩相が違うことがわかったが,この地すべり堆積物自体はさらに深部にも続く。そのため,本地点では複数回または大規模な地すべりによって地形が形成したと考えられる。今後,本研究の礫と付加体前縁部の堆積物の複数対比によって礫の後背地が明らかにできると期待する。

【謝辞】 X線C Tの解析は阿久津紗梨氏(高知大学)の協力を得て行われた。

【引用文献】
Cloos, M. (1992), Geology, doi:10.1130/0091-7613(1992)020<0601:TTSZEA>2.3.CO;2
Cloos, M. and Shreve, R.L. (1996), Geology, doi:10.1130/0091-7613(1996)024<0107:SZTATS>2.3.CO;2
Saito et al.(2010), IODP Expedition 322 C0012, doi:10.2204/iodp.proc.322.104.2010
Scholz and Small, (1997) ,Geology, doi: 10.1130/0091-7613(1997)025<0487:TEOSSO>2.3.CO;2
Sun et al. (2020), Nat. Geosci., doi: 10.1038/s41561-020-0542-0 Y
amaguchi et al., 2020;IODP Expedition 358 C0024, doi: 10.14379/iodp.proc.358.104.2020
Wang and Bilek (2014), Geology, doi: 10.1130/G31856.1