[G8-P-2] OSL dating of extracted quartz in active fault gouge – a case of the Atera fault
Keywords:OSL dating, fault gouge, Atera fault, Tase outcrop
1.はじめに
光ルミネッセンス(OSL)年代測定法を用いて断層活動性評価を試みた.
断層ガウジでOSL年代測定を実施した例として,鴈澤ほか(2013)は跡津川断層(最新活動:1858年飛越地震)から0.2±0.2 kaの年代値を報告している.また,Tsakalos et al.(2020)は,野島断層(最新活動:1995年兵庫県南部地震)から18.5±1.3~62.8±4.3 ka の年代値を報告している.今回,阿寺断層(最新活動:1586年天正地震)の田瀬露頭(遠田ほか,1994)での年代測定例を報告する.
2.測定試料・分析方法
田瀬露頭では厚さ13 cmの断層ガウジが認められる.最新面の走向傾斜はN34°W48°NE,条線方向は20°NWである.断層ガウジは,主として上盤が苗木・上松花崗岩(約60 Ma;山田ほか,1992)のカタクレーサイト(A),下盤が年代不明の砂礫層(E)と接する.断層ガウジは,上盤側から幅8 cmの灰色粘土(B),1cmのチョコレート色粘土(C),4 cmの灰色粘土(D)が帯状に分布する(図1).
試料採取のために灰色粘土(B)と(D)は2cm幅で細分した.砂礫層(E)は,断層ガウジと接する2cm幅を取り出した.年代測定には90-150 µmの石英を用いた.測定では1試料につき別途12個の測定試料を作成した.年代値は12個の平均値とした.
3.結果
図1の右上の表は,年代値の結果を示している.断層ガウジと砂礫層(E)の年代値は数万年前で,苗木・上松花崗岩より若い年代値が得られた.
4.考察
断層ガウジの年代値は,15 kaと30 kaで繰り返している.年代値の繰り返しは,異なる断層活動の時期により主たるせん断面が異なったことを記録している可能性が考えられる.一方,同一時期にせん断した断層ガウジ内でも主たるせん断面では年代値が減少し,その周りは年代値の減少量が少ないせん断影響帯が形成された可能性もある.OSL年代測定は最新活動の年代値は示さないものの,せん断運動の影響を記録し,断層の活動性評価に役立つ可能性が考えられた.
謝辞
本研究は,電力委託研究「破砕部性状等による断層の活動性評価手法の高度化に関する研究」及び「上載地層を必要としない断層活動性評価手法の開発に関する研究」の成果の一部である.ここに記して感謝の意を表する.
【引用文献】
Tsakalos et al., 2020, Journal of Geophysical Research: Solid Earth, vol.125, p.1-18.
鴈澤好博ほか,2013,地質学雑誌, vol.119,p.714-726.
遠田晋次ほか,1994,地震 第2輯,vol.47,p.73-77.
山田直利・柴田 賢・佃 栄吉・内海 茂・松本哲一・高木秀雄・赤羽久忠,1992,地質調査所月報,vol.43,p.759-779.
光ルミネッセンス(OSL)年代測定法を用いて断層活動性評価を試みた.
断層ガウジでOSL年代測定を実施した例として,鴈澤ほか(2013)は跡津川断層(最新活動:1858年飛越地震)から0.2±0.2 kaの年代値を報告している.また,Tsakalos et al.(2020)は,野島断層(最新活動:1995年兵庫県南部地震)から18.5±1.3~62.8±4.3 ka の年代値を報告している.今回,阿寺断層(最新活動:1586年天正地震)の田瀬露頭(遠田ほか,1994)での年代測定例を報告する.
2.測定試料・分析方法
田瀬露頭では厚さ13 cmの断層ガウジが認められる.最新面の走向傾斜はN34°W48°NE,条線方向は20°NWである.断層ガウジは,主として上盤が苗木・上松花崗岩(約60 Ma;山田ほか,1992)のカタクレーサイト(A),下盤が年代不明の砂礫層(E)と接する.断層ガウジは,上盤側から幅8 cmの灰色粘土(B),1cmのチョコレート色粘土(C),4 cmの灰色粘土(D)が帯状に分布する(図1).
試料採取のために灰色粘土(B)と(D)は2cm幅で細分した.砂礫層(E)は,断層ガウジと接する2cm幅を取り出した.年代測定には90-150 µmの石英を用いた.測定では1試料につき別途12個の測定試料を作成した.年代値は12個の平均値とした.
3.結果
図1の右上の表は,年代値の結果を示している.断層ガウジと砂礫層(E)の年代値は数万年前で,苗木・上松花崗岩より若い年代値が得られた.
4.考察
断層ガウジの年代値は,15 kaと30 kaで繰り返している.年代値の繰り返しは,異なる断層活動の時期により主たるせん断面が異なったことを記録している可能性が考えられる.一方,同一時期にせん断した断層ガウジ内でも主たるせん断面では年代値が減少し,その周りは年代値の減少量が少ないせん断影響帯が形成された可能性もある.OSL年代測定は最新活動の年代値は示さないものの,せん断運動の影響を記録し,断層の活動性評価に役立つ可能性が考えられた.
謝辞
本研究は,電力委託研究「破砕部性状等による断層の活動性評価手法の高度化に関する研究」及び「上載地層を必要としない断層活動性評価手法の開発に関する研究」の成果の一部である.ここに記して感謝の意を表する.
【引用文献】
Tsakalos et al., 2020, Journal of Geophysical Research: Solid Earth, vol.125, p.1-18.
鴈澤好博ほか,2013,地質学雑誌, vol.119,p.714-726.
遠田晋次ほか,1994,地震 第2輯,vol.47,p.73-77.
山田直利・柴田 賢・佃 栄吉・内海 茂・松本哲一・高木秀雄・赤羽久忠,1992,地質調査所月報,vol.43,p.759-779.