129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T1.[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

[8poster01-13] T1.[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

Sun. Sep 11, 2022 11:00 AM - 1:00 PM poster (poster)

[T1-P-1] (Entry) Deciphering the prograde metamorphic evolution of the kyanite-bearing eclogite from the Pohorje Mountains, eastern Alps, Slovenia

*Harui NISHI1, Tomoki TAGUCHI1, Tomoyuki KOBAYASHI2 (1. Waseda University, 2. Nagoya Gakuin University)


Keywords:Ultrahigh-pressure metamorphic rock, Garnet, Compositional zoning, Inclusion, Magnesium staurolite

プレート収束域に産出する超高圧変成岩は、地殻物質がかつて地球深部まで沈み込み、その後上昇したことを示す直接的な証拠である(Gilotti, 2013 Elements)。ポホリェ山地は東アルプス・スロベニア北東部に位置し、とりわけ南東部には超高圧変成作用を経験した藍晶石エクロジャイトやざくろ石橄欖岩、泥質片麻岩が露出している。これら超高圧変成岩類の相平衡岩石学的研究は多く実施されているが(e.g. Janák et al., 2015 JMG; Vrabec et al., 2012 Lithos)、プログレード変成期の詳細については不明な点が多い。また近年、本地域では超高圧変成作用を経験した岩体は限定的であり、変成ユニットの多くは超高圧変成条件に達していないという指摘もある(Li et al., 2021 JMG)。本研究ではポホリェ山地産の藍晶石エクロジャイトを対象に、そのプログレード変成作用の詳細復元を目的として、ざくろ石の微細組織、化学組成、包有鉱物の特徴を検証した。
 当地域の藍晶石エクロジャイトは、後退変成作用の影響が比較的小さく、ピーク変成作用期の情報をよく保持すると考えられている(e.g. Janák et al., 2004 Tectonics)。熱力学的解析により見積もられたピーク変成条件は、P/T = 3.0–3.7 GPa/710–940 °Cである(Vrabec et al., 2012)。研究対象の藍晶石エクロジャイトについて、基質ではエクロジャイト相を特徴づける鉱物共生(Grt + Omp + Ky + Qz + Rt ± Ms ± Zo)が認められる。ざくろ石は半自形の結晶(数mm–3 cm程度)をなし、その外縁は部分的に角閃石に置換されている。オンファス輝石の外縁は、斜長石と角閃石からなるシンプレクタイトが僅かに発達する。ざくろ石は主要4元素(Fe・Mn・Mg・Ca)で組成累帯構造を示し、まずスペサルティン成分は周縁部で微増する特徴がある。グロシュラー成分は最外縁部に向かい僅かな単調減少を示す。パイロープ成分は中心部から周縁部に向かい減少した後、最外縁部で再び増加する。一方、アルマンディン成分は周縁部で極大を示し、最外縁部で減少する。今回、これら組成累帯構造の特徴と包有物共生を組み合わせ、コア・マントル・リム部に区分した。ざくろ石コアでは、粗粒な包有物(150 µm前後)が多く分布する。その形状と包有物共生(Zo + Ky)より、原岩に由来する斜長石の初期分解生成物と考えられる。次に、ざくろ石マントルに包有される鉱物共生(Zo + Ky + Mg-St + Ts + Chl)の中で、典型的なMg十字石(XMg = 0.56–0.64)はポホリェ山地で初めて確認された。緑泥石包有物は比較的粗粒かつ角張った形状を示す。今回認められた共生関係(Mg-St + Ky + Chl)とMg十字石形成に関連する反応(Simon et al., 1997 Lithos)を考慮すると、このMg十字石の形成時期は超高圧変成作用に先立つ可能性がある。なお中村(2004 岩石鉱物科学)により報告された組成範囲を参照すると、本Mg十字石は高圧かつSiO2不飽和環境下で形成されたことを示唆する。これは、ざくろ石マントルで石英が観察されない事実と矛盾しない。最後に、ざくろ石リムの包有物共生(Zo + Ky + Ts + Chl + Ms + Qz + Omp)は基質でも一部観察される。ざくろ石リムに取り込まれた包有物の量は、コアやマントルと比べ減少している。また、リム部ではMg十字石が認められないが、放射状亀裂を伴う多結晶質石英(コース石仮像)は観察される。白雲母は亀裂を伴う包有物が大半を占め、変質が進行している。緑泥石の産状もマントル部と異なり、細粒かつ亀裂が基質と繋がっている。そのため、この緑泥石包有物は、ざくろ石リム成長時に取り込まれた初生的なものではないと判断できる。
 今回見出されたざくろ石内の包有物共生の変化は、藍晶石エクロジャイトのプログレード変成進化を記録したものと解釈できる。さらに、ざくろ石リムでのみ石英(コース石仮像)が観察されたことは、マントルからリム成長にかけてSiO2不飽和から飽和環境へと移行したことを暗示する。Mg十字石の発見は、東アルプス地域における高圧−超高圧変成進化とその環境場を読み解く上で有用と考えられる。