[T1-P-3] Spinel-forming reactions of pelitic metamorphic rocks: activity model of spinel-group minerals
Keywords:pelitic metamorphic rocks, spinel, activity, geobarometer, thermodynamics
スピネル類,(Mg, Fe, Zn, Mn) Al2O4は,泥質変成岩によく出現する鉱物のひとつである.泥質変成岩中のスピネル形成反応には,例えば以下のようなものがある.
① Crd = 2(Hc, Spl) + 5Qz
② (Alm, Prp) + 2Als = (Hc, Spl) + Crd
③ (Alm, Prp) + 2Als = 3(Hc, Spl) + 5Qz
④ Alm + 5Crn = 3Hc + 3Als
これらの反応は鉱物増減反応であり,地質圧力計として利用されている(例えば,Harris, 1981; Perchuk et al., 1989; Bohlen et al., 1986; Shulters & Bohlen, 1989; Nichols et al., 1992など).しかし,式①の反応曲線は研究者によって傾斜に正負の違いがあったり,これらの圧力計による値が期待される値よりも低圧になる傾向があったりする事などから,スピネルは変成条件の指標鉱物としては,ざくろ石や菫青石などに比べあまり利用されていないようである.
スピネルの活動度モデルは,地質温度圧力計や熱力学ソフトでは,例えば以下のようなモデルが使われている.
<例1> Holland & Powell (2011) など
XFe = Fe / (Fe + Mg), XMg = Mg / (Fe + Mg) ,
aHc = XFe, aSpl = XMg
<例2> White et al. (2002) など
XFe = Fe2+ / (Fe2+ + Mg), XMg = Mg / (Fe2+ + Mg),YAl = Al / (Al + Fe3+ + 2Ti) ,
aHc = XFe YAl, aSpl = XMg YAl
<例3> Harris (1981),Goscombe et al. (1998) など
XFe = Fe2+ / (R2+ total), XMg = Mg / (R2+ total),XAl = Al / (R3+ total) ,
aHc = XFe XAl2, aSpl = XMg XAl2
スピネル類の化学構造式はR2+ R3+2 O4 と書く事ができ,R2+サイトにはFe2+, Mn, Mg, Zn, Niなどがはいる.R3+サイトにはAl, Cr, Fe3+, Vなどがはいる.前述の式①~④ではFe2+とFe3+の区別が必要で,反応によりAlの移動も伴っている.したがってスピネルのR3+サイト中のAl含有比も考慮しなければならない.しかし例1ではR3+サイトを考慮していない.例2では2モルあるR3+サイトを2乗していない.このため,スピネルが関与する変成反応を解析する際このようなモデルを適用すると,反応曲線の位置や求めた温度圧力の値にずれが生じる事になる.
スピネルが関与する反応曲線のP-T面上での出現順序は,接触変成帯のアイソグラッドの出現順序として検証できる.前述の①~④のほか,Shimura et al. (2016),志村ほか(2021)などよる以下の鉱物増減反応,
⑤ 5Grs + (Alm, Prp) + 12Als = 3(Hc, Spl) + 15An
も含め,島根県の金成変成岩(郷田ほか, 2010),山口県の吉部コールドロン周辺(坂本・志村, 2021)などの接触変成岩について,スピネル出現アイソグラッドの位置を検証した.その結果,例3の活動度モデルを適用した場合,アイソグラッドの出現順序と矛盾せず,圧力計の計算結果も,従来よりも適切な値が得られることがわかった.
スピネルのEPMA分析においては,検出限界以上の元素を全て測定し,R2+:R3+:O = 1 : 2 : 4 になるように,かつFe2+とFe3+も区別した原子比を用いれば,その値はR2+の分母を1,R3+の分母を2とした時のモル分率として利用できる.スピネルの鉱物増減反応を考える場合は,例3の活動度モデルを用い,さらにNichols et al. (1992)の過剰相互作用パラメタを考慮してZnの補正をするのが良い.このようにすれば,スピネルの出現・消滅は,変成度の指標として有効に利用できる.
文献
Bohlen et al. (1986) J.Petrol., 27, 1143–1156.
Goscombe et al. (1998) J.Petrol., 39, 1347-1384.
郷田ほか (2010) 地質学会演旨, P-161.
Harris (1981) CMP, 76, 229–233.
Holland & Powell (2011) JMG, 29, 333-383.
Nichols et al. (1992) CMP, 111, 362–377.
Perchuk et al. (1989) JMG, 7, 599–617.
坂本・志村 (2021) JPGU演旨, SMP25-P13.
Shimura et al. (2016) Goldschmidt Conf., 2833.
志村ほか (2021) JPGU演旨, SMP25-11.
Shulters & Bohlen (1989) J.Petrol., 30, 1017–1031.
White et al. (2002) JMG, 20, 41-55.
① Crd = 2(Hc, Spl) + 5Qz
② (Alm, Prp) + 2Als = (Hc, Spl) + Crd
③ (Alm, Prp) + 2Als = 3(Hc, Spl) + 5Qz
④ Alm + 5Crn = 3Hc + 3Als
これらの反応は鉱物増減反応であり,地質圧力計として利用されている(例えば,Harris, 1981; Perchuk et al., 1989; Bohlen et al., 1986; Shulters & Bohlen, 1989; Nichols et al., 1992など).しかし,式①の反応曲線は研究者によって傾斜に正負の違いがあったり,これらの圧力計による値が期待される値よりも低圧になる傾向があったりする事などから,スピネルは変成条件の指標鉱物としては,ざくろ石や菫青石などに比べあまり利用されていないようである.
スピネルの活動度モデルは,地質温度圧力計や熱力学ソフトでは,例えば以下のようなモデルが使われている.
<例1> Holland & Powell (2011) など
XFe = Fe / (Fe + Mg), XMg = Mg / (Fe + Mg) ,
aHc = XFe, aSpl = XMg
<例2> White et al. (2002) など
XFe = Fe2+ / (Fe2+ + Mg), XMg = Mg / (Fe2+ + Mg),YAl = Al / (Al + Fe3+ + 2Ti) ,
aHc = XFe YAl, aSpl = XMg YAl
<例3> Harris (1981),Goscombe et al. (1998) など
XFe = Fe2+ / (R2+ total), XMg = Mg / (R2+ total),XAl = Al / (R3+ total) ,
aHc = XFe XAl2, aSpl = XMg XAl2
スピネル類の化学構造式はR2+ R3+2 O4 と書く事ができ,R2+サイトにはFe2+, Mn, Mg, Zn, Niなどがはいる.R3+サイトにはAl, Cr, Fe3+, Vなどがはいる.前述の式①~④ではFe2+とFe3+の区別が必要で,反応によりAlの移動も伴っている.したがってスピネルのR3+サイト中のAl含有比も考慮しなければならない.しかし例1ではR3+サイトを考慮していない.例2では2モルあるR3+サイトを2乗していない.このため,スピネルが関与する変成反応を解析する際このようなモデルを適用すると,反応曲線の位置や求めた温度圧力の値にずれが生じる事になる.
スピネルが関与する反応曲線のP-T面上での出現順序は,接触変成帯のアイソグラッドの出現順序として検証できる.前述の①~④のほか,Shimura et al. (2016),志村ほか(2021)などよる以下の鉱物増減反応,
⑤ 5Grs + (Alm, Prp) + 12Als = 3(Hc, Spl) + 15An
も含め,島根県の金成変成岩(郷田ほか, 2010),山口県の吉部コールドロン周辺(坂本・志村, 2021)などの接触変成岩について,スピネル出現アイソグラッドの位置を検証した.その結果,例3の活動度モデルを適用した場合,アイソグラッドの出現順序と矛盾せず,圧力計の計算結果も,従来よりも適切な値が得られることがわかった.
スピネルのEPMA分析においては,検出限界以上の元素を全て測定し,R2+:R3+:O = 1 : 2 : 4 になるように,かつFe2+とFe3+も区別した原子比を用いれば,その値はR2+の分母を1,R3+の分母を2とした時のモル分率として利用できる.スピネルの鉱物増減反応を考える場合は,例3の活動度モデルを用い,さらにNichols et al. (1992)の過剰相互作用パラメタを考慮してZnの補正をするのが良い.このようにすれば,スピネルの出現・消滅は,変成度の指標として有効に利用できる.
文献
Bohlen et al. (1986) J.Petrol., 27, 1143–1156.
Goscombe et al. (1998) J.Petrol., 39, 1347-1384.
郷田ほか (2010) 地質学会演旨, P-161.
Harris (1981) CMP, 76, 229–233.
Holland & Powell (2011) JMG, 29, 333-383.
Nichols et al. (1992) CMP, 111, 362–377.
Perchuk et al. (1989) JMG, 7, 599–617.
坂本・志村 (2021) JPGU演旨, SMP25-P13.
Shimura et al. (2016) Goldschmidt Conf., 2833.
志村ほか (2021) JPGU演旨, SMP25-11.
Shulters & Bohlen (1989) J.Petrol., 30, 1017–1031.
White et al. (2002) JMG, 20, 41-55.