129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Poster

T1.[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

[8poster01-13] T1.[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

Sun. Sep 11, 2022 11:00 AM - 1:00 PM poster (poster)

[T1-P-7] Late Cretaceous-early Paleogene Ryoke belt and Ryoke marginal zone of the Kanto Mountains in central Japan

*Akira ONO1 (1. None)


Keywords:Ryoke belt, Ryoke marginal zone, Atogura nappe, Ryoke nappe, Yorii formation, early Paleogene

三波川変成岩と珪長質火成岩類が関東山地北縁部に分布している.これらは白亜紀後期から古第三紀初期の弧‐海溝系において相互にかなり離れて分布していた地質体である.それらが現在同じ地域に分布している理由は,珪長質火成岩類がナップテクトニクスを被って三波川変成岩の分布域に移動したためである.実際,関東山地には跡倉ナップが存在する.中新世前期には跡倉ナップに重なる領家ナップ[1]も存在していた.これらのナップの研究に基づいて,本州中央部の古第三紀初期ごろの弧‐海溝系が復元されている[2,3].その模式的復元図を少し修正したものがFigure Aである.赤色領域は領家変成岩の分布域で,その南東(海洋側)は領家南縁帯[4]である.領家南縁帯は領家帯の南縁部と誤認される恐れがあるので,ここでは領家外縁帯と呼称する.
 関東山地に領家帯は確認されていないが,領家ナップ由来の礫が小川盆地や秩父盆地の中新世礫岩にみられる[1].花崗岩礫などの鉱物や全岩のK-Ar年代は,約60-75Maであり,伊那山地の領家帯の年代データと調和している.領家外縁帯には非変成のジュラ紀付加複合体や白亜紀後期の珪長質火成岩類や白亜紀後期-古第三紀初期の堆積岩などが分布している.領家外縁帯の海洋側にはおもに白亜紀前期以前の地質体が分布しており,そこでは白亜紀後期以降にナップテクトニクスが起きている.その更に海洋側では三波川変成岩が上昇している(Figure A).
 群馬県下仁田地域での領家外縁帯の地質体は,ジュラ紀付加体の南蛇井層,約95Maや70Maの花崗岩類,67Maの骨立山凝灰岩,73Maの酸性凝灰岩,白亜紀後期-古第三紀初期の神農原礫岩および83Ma-64Maごろに堆積した赤津層などである.年代値はジルコンのU-Pb年代であり[5,6],これらの年代データによって65-75Maごろの火成活動が領家外縁帯で生じていることが判明した.埼玉県寄居-小川地域の領家外縁帯に由来する地質体は,跡倉ナップの寄居層,寄居酸性岩類,寄居花崗岩およびジュラ紀付加体と推定される固結度の高い泥岩や砂岩やチャートの小岩体である(Figures B - F).チャートはおもに微細な石英粒子と少量のセリサイトからなり,放散虫化石の保存状態はかなり良好である(Figure D).顕著な変成作用は被っていない.寄居花崗岩は中粒塊状の黒雲母トーナル岩で,牟礼の市野川沿いの一か所に露出している(Figure C).寄居層はおもに砂岩や礫岩から成るが,寄居町三ケ山や五ノ坪では炭質物に富む黒色泥岩(Figure F)が広範囲に分布している.寄居層の固結度は低く,礫岩の比較的大きい礫は,ハンマーで軽く叩いて取り出せる(Figure E).礫岩の礫は,おもに火砕岩,凝灰岩,花崗岩,花崗斑岩,火山岩などであるが,泥岩,砂岩,珪質岩も多い.砂岩や泥岩の礫は固結度が低いものが多く,放散虫化石の骨格は非晶質シリカである.これらの礫の供給源は,角礫が少なくないことからみて,寄居層の近傍にあった白亜紀末期の堆積岩であろう.流紋岩礫と泥質ホルンフェルス礫のK-Ar全岩年代は,それぞれ80.5Maと66.5Maである[7].このホルンフェルス礫を除いて,変成岩礫は見出されていない.領家帯に由来する領家変成岩,マイロナイト,片麻状トーナル岩の礫は発見されていない.
 寄居町荒川沿いにはチャートに類似する細粒の暗黒色凝灰岩が寄居層の西方に分布している.ジルコンのフィショントラック年代は60.7Maで,火山活動の年代とされている[8].この凝灰岩は寄居酸性岩類という見解もあるが,寄居酸性岩類には細粒の暗黒色凝灰岩はどこにも見あたらない.しかも,寄居酸性岩類はジルコンのU-Pb年代が67Maの骨立山凝灰岩に対比されている[4].したがって,暗黒色凝灰岩は古第三系寄居層の一員と推定される.
[1]小野,2004, 地質雑, v. 110, no. 7, 395-402.[2]小野,2010, JpGU Meeting, SGL046-P10.[3]小野,2014, JpGU Meeting, SMP46-P19.[4]埼玉総会中・古生界シンポ世話人会,1995, 地球科学, v. 49, no. 4, 271-291.[5] 河合ほか,2022, 群馬県立自然史博物館報 (26), 75-90.[6] 佐藤ほか,2020, 群馬県立自然史博物館報 (24), 53-70.[7]小野,2000, 地質雑, v. 1060, no. 9, 620-611.[8] 大平,2004, 地団研専報52号, 51-65.