129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T1.[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

[8poster01-13] T1.[Topic Session]Metamorphic rocks and tectonics

Sun. Sep 11, 2022 11:00 AM - 1:00 PM poster (poster)

[T1-P-11] (Entry) Deformation and hydrothermal alteration processes of the basal peridotites in the Palawan Ophiolite: Effects on subduction initiation process

*Hiyori ABE1, Ken-ichi HIRAUCHI1 (1. Shizuoka University)


Keywords:subduction initiation, Palawan Ophiolite, basal peridotite, mantle wedge, olivine, dislocation creep, talc

沈み込み帯域オフィオライトは,海洋プレートの沈み込み開始時におけるマントルウェッジの様子を観察できる天然の例として挙げられる(Prigent et al., 2018b).オフィオライトの下位にみられるメタモルフィックソールはスラブ物質を起源とし,両者の境界は沈み込み開始当時のプレート境界に相当する.したがって,オフィオライトの基底部かんらん岩の変形・熱水変質作用の特徴を調べることは,スラブ直上のマントルウェッジのレオロジー的性質を理解する上で重要である.本研究では,マントルウェッジ基底部における変形・熱水変質作用が沈み込み開始過程に及ぼす影響を理解することを目的として,フィリピン共和国のパラワン島に露出するパラワンオフィオライトの基底部かんらん岩体について構造岩石学的解析を行った.
 パラワン島のUlugan Bay東岸にはメタモルフィックソールを構成する角閃岩が分布し,直上に位置する基底部かんらん岩と断層を介して接する(Keenan et al., 2016).Valera et al. (2021)は,メタモルフィックソールの角閃岩の変成ピークが約700 °C,13 kbarであることを明らかにした.Keenan et al. (2016)は,オフィオライト構成岩石と角閃岩の年代測定結果から,約34 Maに中央海嶺の拡大軸付近で強制的沈み込みが起こったことを指摘している.
 本研究で採取した基底部かんらん岩はダナイトおよびハルツバージャイトまたはレルゾライトから構成され,少なくとも幅約2 kmにわたってかんらん石の動的再結晶による細粒化が進んでいることを明らかにした.細粒化の程度はメタモルフィックソールに近い地点ほど高く,細粒なかんらん岩は,より低温下でのかんらん石の溶解と滑石の析出を経験していた.滑石はネットワーク状に析出しており,かんらん石以外の鉱物はほとんど認められなかった.
 オフィオライト基底部において,かんらん石の変形機構が転位クリープであったことが示唆される.また,滑石の析出は,スラブ脱水に由来する水流体の供給に伴って起こったことが示唆される.摩擦係数の低い滑石が片理面に沿ってネットワーク状に析出していることは,基底部かんらん岩の強度を低下させると考えられ,このことから,沈み込み初期のマントルウェッジ基底部における熱水変質作用は,剪断帯を弱化させ,海洋プレートの継続的な沈み込みを促進していたことが示唆される.

引用文献:Keenan et al. (2016), Proceedings of the National Academy of Sciences, 113, 7379-7366. Prigent et al. (2018b), Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 123, 7529-7549. Valera et al. (2021), Journal of Metamorphic Geology, 40, 717-749.