[T2-P-2] (Entry) The paleomagnetic record of the lava flows effused during the opening stage of the Sea of Japan: examples in the Hokutan Group, Tango Peninsula, western Honshu, Japan
Keywords:Japan sea opening, Southwest Japan, tectonic rotation, paleomagnetism, Hokutan Group; Yoka Formation, Toyooka Formation
はじめに
西南日本は日本海拡大初期(19-18Ma)に回転を伴わずに大陸から分裂・ドリフトし,18-16Maのある時期に約40° 回転して現在の位置に移動したと考えられている[1;2].これらのテクトニクスのアプローチと共に,そこに噴出するマグマの性質や関連性を明らかにする第一歩として,日本海拡大初期に噴出した玄武岩を含む北但層群八鹿累層と,西南日本の時計回り回転時に形成された北但層群豊岡累層(共に京都府北部丹後半島に分布)の,古地磁気方位測定及び全岩化学組成の分析を行った.
地質概要
八鹿累層は20-17Ma[3]のピクライト質玄武岩~安山岩溶岩と火砕岩からなり,このピクライト質玄武岩は日本海拡大初期に形成されたと考えられている[4].古地磁気方位はSakamoto[5]により測定されているが,溶岩のクリンカー部を測定しているためかサイト平均にばらつきが見られる.豊岡累層は,下位は溶岩層,上位は堆積層[3]で形成され,丹後半島では不規則な割れ目の入った流紋岩質の塊状溶岩が観察された.また堆積層には15Maの中新統に見られる動物化石群を含む[6].豊岡累層の古地磁気方位測定結果は,下位の溶岩層が偏角D=23.8° を示し,上位の堆積岩層の偏角がほぼ北向きを示すことから,西南日本の時計回り回転を記録していると考えられている[6].ただしIshikawa et al.[6]で示された回転量は,[1]による西南日本の総回転量である約40° と比較するとかなり小さい.
手法
本研究では,八鹿累層の塊状溶岩3露頭と豊岡累層の塊状溶岩2露頭から,それぞれ8-10個のサンプルを採取し,段階熱消磁実験による古地磁気方位測定を行った.また同試料を用いて全岩化学組成分析も行った.古地磁気方位測定は,神戸大学のスピナー磁力計 (夏原技研製SMM-85)を用い,段階熱消磁実験にはTDS-1を使用した.全岩化学組成分析は,神戸大学の蛍光X線分析装置(リガク製ZSX Primus II)を用い,主成分と微量元素の測定を行った.
古地磁気方位測定結果
八鹿累層は,走向傾斜を得られていないため傾動補正を行っていないが,得られた平均古地磁気方位は下位から上位にかけて偏角D=36.3°, 35.9°, 24.0° と東偏から北偏へ変化していた.伏角はI=68.2°,15.1°,57.5° が得られた.豊岡累層は,同地域に分布する豊岡累層の砂礫層から得られた走向傾斜(N16°E, 9°E)を用いて傾動補正を行い,下位から偏角D=40.5°, 33.0°,伏角I=70.4°, 14.7° を得られた.豊岡累層の古地磁気方位の結果は,現在の磁北の位置より東偏であり,先行研究で得られている古地磁気方位の結果[6]と整合的である.
全岩化学組成分析結果
八鹿累層の3露頭から得られた溶岩の全岩化学組成及び微量元素の測定結果は,下位の溶岩で約50-52 wt% のSiO₂量を示し,上位の溶岩で約58 wt% のSiO₂量を示した.またピクライト質玄武岩ではNb値に強い負の異常が見られた.これは石渡, 今坂[4]と整合的である.豊岡累層下位の2露頭から得られた全岩化学組成及び微量元素の結果は,SiO₂量が約68-76 wt% の非アルカリ性のデイサイトから流紋岩を示し,こちらも先行研究[3]と一致する結果が得られた.
議論
本研究において,豊岡累層から得られた古地磁気方位測定の結果は,Ishikawa et al.[6]が測定した豊岡累層の溶岩の古地磁気方位(D=23.8°)より大きな東偏を示した.このことから,本研究で測定した豊岡累層は,Ishikawa et al.[6]が調査を行った豊岡累層の溶岩よりも下位の層に相当すると考えられる.また傾動補正を行っていないものの,八鹿累層の古地磁気方位測定結果からも偏角に変動の兆候が見られた.このことは,八鹿累層が日本海拡大初期のみならず,西南日本の時計回り回転も記録している可能性があることを示す.古地磁気方位を物差しとした溶岩層序の再検討を行うことで, テクトニクスに対応したマグマ組成の変遷を明らかにできる可能性がある.
引用文献
1.Otofuji, Y. 1996, Isl, Arc 5, 229-249.
2.星博幸 2018, 地質雑 124, 675-691.
3.山元孝広, 星住英夫 1988, 地質雑 94, 769-781.
4.石渡明, 今坂美絵 2002, 地質雑 108, 671-684.
5.Sakamoto, M. 1992, J Geomag. Geoelectr., 44, 55-63.
6.Ishikawa, N., et al. 2017, Evolutionary Models of Convergent Margins Origin of Their Diversity Edited by Itoh, Y. 155-176.
西南日本は日本海拡大初期(19-18Ma)に回転を伴わずに大陸から分裂・ドリフトし,18-16Maのある時期に約40° 回転して現在の位置に移動したと考えられている[1;2].これらのテクトニクスのアプローチと共に,そこに噴出するマグマの性質や関連性を明らかにする第一歩として,日本海拡大初期に噴出した玄武岩を含む北但層群八鹿累層と,西南日本の時計回り回転時に形成された北但層群豊岡累層(共に京都府北部丹後半島に分布)の,古地磁気方位測定及び全岩化学組成の分析を行った.
地質概要
八鹿累層は20-17Ma[3]のピクライト質玄武岩~安山岩溶岩と火砕岩からなり,このピクライト質玄武岩は日本海拡大初期に形成されたと考えられている[4].古地磁気方位はSakamoto[5]により測定されているが,溶岩のクリンカー部を測定しているためかサイト平均にばらつきが見られる.豊岡累層は,下位は溶岩層,上位は堆積層[3]で形成され,丹後半島では不規則な割れ目の入った流紋岩質の塊状溶岩が観察された.また堆積層には15Maの中新統に見られる動物化石群を含む[6].豊岡累層の古地磁気方位測定結果は,下位の溶岩層が偏角D=23.8° を示し,上位の堆積岩層の偏角がほぼ北向きを示すことから,西南日本の時計回り回転を記録していると考えられている[6].ただしIshikawa et al.[6]で示された回転量は,[1]による西南日本の総回転量である約40° と比較するとかなり小さい.
手法
本研究では,八鹿累層の塊状溶岩3露頭と豊岡累層の塊状溶岩2露頭から,それぞれ8-10個のサンプルを採取し,段階熱消磁実験による古地磁気方位測定を行った.また同試料を用いて全岩化学組成分析も行った.古地磁気方位測定は,神戸大学のスピナー磁力計 (夏原技研製SMM-85)を用い,段階熱消磁実験にはTDS-1を使用した.全岩化学組成分析は,神戸大学の蛍光X線分析装置(リガク製ZSX Primus II)を用い,主成分と微量元素の測定を行った.
古地磁気方位測定結果
八鹿累層は,走向傾斜を得られていないため傾動補正を行っていないが,得られた平均古地磁気方位は下位から上位にかけて偏角D=36.3°, 35.9°, 24.0° と東偏から北偏へ変化していた.伏角はI=68.2°,15.1°,57.5° が得られた.豊岡累層は,同地域に分布する豊岡累層の砂礫層から得られた走向傾斜(N16°E, 9°E)を用いて傾動補正を行い,下位から偏角D=40.5°, 33.0°,伏角I=70.4°, 14.7° を得られた.豊岡累層の古地磁気方位の結果は,現在の磁北の位置より東偏であり,先行研究で得られている古地磁気方位の結果[6]と整合的である.
全岩化学組成分析結果
八鹿累層の3露頭から得られた溶岩の全岩化学組成及び微量元素の測定結果は,下位の溶岩で約50-52 wt% のSiO₂量を示し,上位の溶岩で約58 wt% のSiO₂量を示した.またピクライト質玄武岩ではNb値に強い負の異常が見られた.これは石渡, 今坂[4]と整合的である.豊岡累層下位の2露頭から得られた全岩化学組成及び微量元素の結果は,SiO₂量が約68-76 wt% の非アルカリ性のデイサイトから流紋岩を示し,こちらも先行研究[3]と一致する結果が得られた.
議論
本研究において,豊岡累層から得られた古地磁気方位測定の結果は,Ishikawa et al.[6]が測定した豊岡累層の溶岩の古地磁気方位(D=23.8°)より大きな東偏を示した.このことから,本研究で測定した豊岡累層は,Ishikawa et al.[6]が調査を行った豊岡累層の溶岩よりも下位の層に相当すると考えられる.また傾動補正を行っていないものの,八鹿累層の古地磁気方位測定結果からも偏角に変動の兆候が見られた.このことは,八鹿累層が日本海拡大初期のみならず,西南日本の時計回り回転も記録している可能性があることを示す.古地磁気方位を物差しとした溶岩層序の再検討を行うことで, テクトニクスに対応したマグマ組成の変遷を明らかにできる可能性がある.
引用文献
1.Otofuji, Y. 1996, Isl, Arc 5, 229-249.
2.星博幸 2018, 地質雑 124, 675-691.
3.山元孝広, 星住英夫 1988, 地質雑 94, 769-781.
4.石渡明, 今坂美絵 2002, 地質雑 108, 671-684.
5.Sakamoto, M. 1992, J Geomag. Geoelectr., 44, 55-63.
6.Ishikawa, N., et al. 2017, Evolutionary Models of Convergent Margins Origin of Their Diversity Edited by Itoh, Y. 155-176.