[T4-P-2] The restoration of sedimentary environment of mudstone sequences in Goto Group, Nagasaki Prefecture, Japan
Keywords:Late-Middle Miocene, Goto group
五島列島は日本列島の最北西に位置し,日本海拡大時に関連する下部-中部中新世の五島層群からなる.五島層群は層厚2000-3000mとされ,下部ユニット,中部ユニット,上部ユニットの3つに分類される.下部ユニット:玄武岩質の火山性物質からなる緑色火山砕屑岩.中部ユニット:泥岩主体の砂岩泥岩互層からなり,リップルラミナや氾濫原泥岩層を含む.上部ユニット:大型の斜交層理からなる砂岩主体の砂岩泥岩互層.五島層群は陸生層として知られており,中新世における環境変動の鍵となる,温暖性を示す台島型植物化石群が報告されている(植田,1961).しかし台島型よりも涼しい環境を示す植物化石も発見されている(安永ほか,2007).植物化石の詳細な研究は4か所しかなく,3000mに及ぶ地層層序の変化に伴う環境変化についての情報は得られていない.本研究では有機物を伴う泥岩層について,詳細な柱状図作成/ファシス解析によりどのような堆積場かを認定し,五島層群における下位から上位にかけての泥岩層の変化を観察した.
調査場所
下部ユニット(カヤバ浦):緑色の火山砕屑岩からなる.20-50cmの火山角礫岩を含むが,上方になるにつれ細粒化し,平行葉理が発達する.火山砕屑層には数10cmの泥岩を挟む.鏡下観察ではマトリックスの中にシルトサイズの石英粒子や30μmの棒状黒色有機物が確認された. 中部ユニット中部(戸岐―久賀島):厚い泥岩勝ちの砂岩泥岩互層からなる.5-10cmの互層が規則的に繰り返し,薄い砂岩層を挟む.砂岩層にはリップルが発達する部分もある.泥岩層にはシルトサイズの石英を含んでおり,シリカやアルミニウムに富む粘土鉱物や有機物の粒子も多く含まれる.層内ではコンボリューションが発達する層も見られる. 中部ユニット上部(戸楽):リップルや地域的な斜交層理を伴う砂岩主体の砂岩泥岩互層からなる.戸楽海岸では,3次元的に砂岩層中にチャネル構造が見られ,ラグブレッチャーを伴うカットバンク構造も顕著に残る.厚い砂岩層の間に厚さ50cmの泥岩層を挟む.この泥岩層はカットバンクの外側に分布しており,砂岩層を挟まない事より氾濫原堆積物であると思われる.鏡下観察ではほとんど石英粒子が入らない粘土であり,10-40μm黒色の紐状の有機物が確認された. 上部ユニット(打折):5-10mの厚い砂岩主体と50cm-1mの泥岩層が繰り返し,上方粗粒化が少なくとも3回観察される.鏡下観察ではシルトサイズの石英粒子は少なく,10-30μm棒状黒色有機物を多く含む.
堆積場復元
下部ユニットは基本火山砕屑岩であり,薄い泥岩層は火山砕屑岩の供給がなくなる時に火山周辺にできる氾濫原などで堆積していたと思われる.中部ユニットは,少なくとも数キロ規模の湖に堆積した可能性があり,泥岩に挟まれる規則的な砂岩層から,湖の周囲からの流れ込み(季節による可能性)が示唆される.そこに見られる石英を含まない泥岩と細かいラミナを持つ泥岩層は,湖の周辺部の河川部分と湖本体の地層との違いであると思われる.上部ユニットの泥岩層は厚い砂岩層に挟まれており,石英が少なく植物片を含む泥岩層から厚い砂岩層への上方粗粒化を示す.河川システムに残る氾濫原もしくは三日月湖のような泥の堆積場に河川の氾濫により徐々に砂が供給されて,最終的に斜交層理が発達する厚い砂を供給できる巨大な河川に移行するものであると考えている. このように五島層群は火山体近傍の火山砕屑物層から湖,湖に流れ込む河川,最後に巨大河川へと変化したと考えられる.
<引用文献>
植田芳朗,1961,五島層群の研究. 九州大学理学部研究報告, vol.5, p.51-61
安永雅・清川昌一・植村和彦,2007,長崎県五島列島中部(若松島及び中通島西部)の新第三系五島層群の岩相層序と植物化石の産出について.地質学研究,no.64,p.151-161
調査場所
下部ユニット(カヤバ浦):緑色の火山砕屑岩からなる.20-50cmの火山角礫岩を含むが,上方になるにつれ細粒化し,平行葉理が発達する.火山砕屑層には数10cmの泥岩を挟む.鏡下観察ではマトリックスの中にシルトサイズの石英粒子や30μmの棒状黒色有機物が確認された. 中部ユニット中部(戸岐―久賀島):厚い泥岩勝ちの砂岩泥岩互層からなる.5-10cmの互層が規則的に繰り返し,薄い砂岩層を挟む.砂岩層にはリップルが発達する部分もある.泥岩層にはシルトサイズの石英を含んでおり,シリカやアルミニウムに富む粘土鉱物や有機物の粒子も多く含まれる.層内ではコンボリューションが発達する層も見られる. 中部ユニット上部(戸楽):リップルや地域的な斜交層理を伴う砂岩主体の砂岩泥岩互層からなる.戸楽海岸では,3次元的に砂岩層中にチャネル構造が見られ,ラグブレッチャーを伴うカットバンク構造も顕著に残る.厚い砂岩層の間に厚さ50cmの泥岩層を挟む.この泥岩層はカットバンクの外側に分布しており,砂岩層を挟まない事より氾濫原堆積物であると思われる.鏡下観察ではほとんど石英粒子が入らない粘土であり,10-40μm黒色の紐状の有機物が確認された. 上部ユニット(打折):5-10mの厚い砂岩主体と50cm-1mの泥岩層が繰り返し,上方粗粒化が少なくとも3回観察される.鏡下観察ではシルトサイズの石英粒子は少なく,10-30μm棒状黒色有機物を多く含む.
堆積場復元
下部ユニットは基本火山砕屑岩であり,薄い泥岩層は火山砕屑岩の供給がなくなる時に火山周辺にできる氾濫原などで堆積していたと思われる.中部ユニットは,少なくとも数キロ規模の湖に堆積した可能性があり,泥岩に挟まれる規則的な砂岩層から,湖の周囲からの流れ込み(季節による可能性)が示唆される.そこに見られる石英を含まない泥岩と細かいラミナを持つ泥岩層は,湖の周辺部の河川部分と湖本体の地層との違いであると思われる.上部ユニットの泥岩層は厚い砂岩層に挟まれており,石英が少なく植物片を含む泥岩層から厚い砂岩層への上方粗粒化を示す.河川システムに残る氾濫原もしくは三日月湖のような泥の堆積場に河川の氾濫により徐々に砂が供給されて,最終的に斜交層理が発達する厚い砂を供給できる巨大な河川に移行するものであると考えている. このように五島層群は火山体近傍の火山砕屑物層から湖,湖に流れ込む河川,最後に巨大河川へと変化したと考えられる.
<引用文献>
植田芳朗,1961,五島層群の研究. 九州大学理学部研究報告, vol.5, p.51-61
安永雅・清川昌一・植村和彦,2007,長崎県五島列島中部(若松島及び中通島西部)の新第三系五島層群の岩相層序と植物化石の産出について.地質学研究,no.64,p.151-161