129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Poster

T7.[Topic Session]From magma source to magma plumbing system

[8poster26-33] T7.[Topic Session]From magma source to magma plumbing system

Sun. Sep 11, 2022 9:00 AM - 1:00 PM poster (poster)


フラッシュトーク有り 9:00-10:00頃/ポスターコアタイム 11:00-13:00

[T7-P-6] (Entry) Petrological characteristics and genetic relationships of plutonic rocks in the Hakata Island, Ehime prefecture.

*Toko FUKUI1, Satoshi SAITO1 (1. Graduate School of Science and Engineering, Ehime University )

【zoomによるフラッシュトーク有り】9/11(日)9:40-9:45

Keywords:Hakata Island, Granite, Syenite

はじめに
白亜紀後期のユーラシア大陸東縁では大規模火成活動がおこり,西南日本内帯の領家帯と山陽帯を構成する花崗岩類を形成した.この大規模火成活動に伴う大陸地殻の成長過程を理解するためには,花崗岩類を形成した火成作用やそれに引き続く交代変質作用などの地殻深部プロセスについて明らかにする必要がある.愛媛県北部伯方島は西南日本内帯に位置し,多様な岩相を示す深成岩類がみられることから,白亜紀後期における地殻深部プロセスの検討に適した研究地域である.当地域について,越智(1991),桃井ほか(1991),松浦ほか(2002)などの先行研究では,それぞれ花崗岩類の岩相区分などの記載岩石学的研究がなされてきた.しかしながら,火成作用や交代変質作用の考察に必要な全岩化学組成や鉱物化学組成などについての検討はこれまでなされていない.そこで本研究では,伯方島の深成岩類を形成した地殻深部プロセスを明らかにするために,野外調査,岩石記載,全岩化学組成分析,鉱物化学組成分析をおこない,当地域の深成岩類の岩石学的特徴を検討するとともに,その成因関係を考察した.
岩相区分と岩石記載
野外産状,構成鉱物及びモード組成から,当地域の深成岩類は黒雲母花崗岩,黒雲母花崗閃緑岩,角閃石閃長岩,苦鉄質岩脈,花崗斑岩脈の5岩相に区分できる.黒雲母花崗岩および黒雲母花崗閃緑岩中には苦鉄質包有物が多数みられ,鏡下ではいずれもカリ長石にポイキリティック組織がみられる.また黒雲母花崗岩中にはしばしば優黒質な岩相がみられ,それらは角閃石黒雲母トーナル岩の組成を持つ.鏡下ではこれらの優黒質部には,斜長石の汚濁帯やポイキリティック組織がみられる.一方,角閃石閃長岩は,周囲の黒雲母花崗岩との境界域に漸移的な岩相変化がみられる.鏡下では構成鉱物としてアルカリ長石,斜長石,角閃石,石英,燐灰石,ジルコン,柘榴石,スフェーンなどが認められ,角閃石には粒状集合組織がみられる.
全岩化学組成と鉱物化学組成
全岩化学組成については,深成岩類及び岩脈類でSiO2含有量が52~80 wt%と組成範囲が広く,ハーカー図上で単一の組成トレンドを形成しない.特に角閃石閃長岩はNa2O含有量が6.1~6.5 wt%と他の岩相(4.2 wt % 以下)に比べ著しく高い.また,黒雲母花崗閃緑岩中の苦鉄質包有物については,ノルムAn-Ab-Or花崗岩分類図でトーナル岩の組成を示す.一方,黒雲母花崗岩については,固有の組成トレンドを形成する.鉱物化学組成については,角閃石黒雲母トーナル岩中の汚濁帯をもつ斜長石のAn成分が,汚濁帯付近で急激に増加する特徴がみられる.
考察
当地域の黒雲母花崗岩には,トーナル岩の組成を持つ優黒質部がみられ,花崗岩質マグマとトーナル岩質マグマの共存及び混合を示唆する.また,優黒質部にみられるAn成分に富む汚濁帯をもつ斜長石は,高温のマグマとの接触を示唆している(例えば, 池田ほか, 2019).さらに,黒雲母花崗閃緑岩とその苦鉄質包有物が,黒雲母花崗岩と優黒質部との中間的な組成を示すことから,これらが上記の2つのマグマの混合により形成されたことが示唆される.このような野外産状と岩石記載の特徴から,当地域の花崗岩類について,「花崗岩質マグマとトーナル岩質マグマとの混合による花崗閃緑岩質マグマの形成」の成因関係が考えられる. 一方,黒雲母花崗岩にみられる主要元素の組成トレンドについては,マスバランス計算から,黒雲母,斜長石,カリ長石,燐灰石の分別により説明でき,黒雲母花崗岩のマグマ過程として結晶分化作用がおきたと考えられる. 角閃石閃長岩については,周囲の黒雲母花崗岩からの漸移的な岩相変化や角閃石の粒状集合組織,Na2Oに富む特異な全岩化学組成といった特徴が交代変質作用による花崗岩質岩の変化が示唆される(村上, 1976).また,当地域の角閃石閃長岩は構成鉱物や組成的特徴から,村上(1958)に記載されたType Bの閃長岩に相当すると考えられる.以上のことから,角閃石閃長岩の成因は黒雲母花崗岩に高温でNa2Oに富むアルカリ揮発性成分が関与した交代変質作用であると考えられる.
まとめ
伯方島にみられる多様な深成岩類を形成した地殻深部プロセスとして,①結晶分化作用(花崗岩質マグマの結晶分化),②マグマ混合(花崗岩質マグマとトーナル岩質マグマの混合),③交代変質作用(Na2O流体による交代変質)の3つが関与したと考えられる.
引用文献
池田ほか 2019 地雑 125 167-182.松浦ほか 2002 20万分の1地質図幅「岡山及丸亀」 産総研.桃井ほか 1991 愛媛県地質図(20万分の1)第4版 トモエヤ.村上 1958 岩鉱 42 309-318.村上 1976 岩石鉱物鉱床学会誌 特別号 1 261-281.越智 1991 日本の地質8 四国地方 共立出版 6-12.