129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Poster

T12.[Topic Session]火Volcanic phenomena deciphered from volcanic products and their application to disaster prevention

[8poster34-35] T12.[Topic Session]火Volcanic phenomena deciphered from volcanic products and their application to disaster prevention

Sun. Sep 11, 2022 9:00 AM - 1:00 PM poster (poster)


フラッシュトーク有り 9:00-10:00頃/ポスターコアタイム 11:00-13:00

[T12-P-2] Stratigraphy and eruptive history of Azumakofuji, Azuma Volcanic Group, Fukushima, Japan

*Kazuma SUZUKI1, Atsuharu TOMARU2, Takeshi HASEGAWA1 (1. Graduate School of Science and Engineering, Ibaraki University, 2. Department of Science, Ibaraki University)

【zoomによるフラッシュトーク有り】9/11(日)9:05-9:10

Keywords:eruption history, pyroclastic cone, lava flow, Azuma volcano group, Jododaira volcano, Azumakofuji

1.はじめに 吾妻火山群は福島県と山形県にまたがる大型の複合火山群であり,最新の活動は,約7,000年前から活動したとされる浄土平火山で発生している(山元, 2005;松本他, 2018).浄土平火山は吾妻火山群東部に位置し,吾妻小富士火砕丘を代表とする複数の火口と溶岩流で特徴づけられている.本火山のテフラ層序は山元(2005)により報告されており,溶岩流を含めた吾妻小富士噴出物(Az-KF)は全体の99%以上を占めるとされている.しかし,溶岩流については年代や層序関係を示す地質学的証拠に乏しいため,本火山全体の層序に組み込まれていない.そのため,吾妻小富士火砕丘については,東麓に流出する溶岩流(以降,吾妻小富士溶岩)とテフラ層との時間的関係は不明であり,浄土平火山全体の噴火層序も不完全であった.今回,浄土平火山を調査し,室内分析の結果も参考にして溶岩流を含めた吾妻小富士の新たな層序と形成史を検討した.
2.露頭記載 吾妻小富士溶岩上に位置する登山道沿いの露頭(loc.2)では,浄土平火山由来のテフラ層が7層(下位からL2-1 ~ L2-7)確認できる.L2-5の直上には層厚1 cmの黄色細粒火山灰層が,L2-7上位にはロームを挟み層厚2 cmの白色軽石層が存在する.これらは層相・岩質と火山ガラス組成から,それぞれ,十和田―中掫テフラ(To-Cu:6 ka),沼沢―沼沢湖テフラ(Nm-NK:5.4ka)と認定できる.L2-1は層厚2 m以上で基質支持の火山灰火山岩塊層である.本層は淘汰が悪く,発泡した溶岩片と同質の粗粒火山灰からなり,流理構造をもつ溶岩岩塊も含まれる.この層相はHasegawa・Suzuki(2021)が吾妻小富士で報告した溶岩流末端崩壊型の火山岩塊火山灰流堆積物(loc.3)に酷似しており,本層も同様の発生機構が示唆される.両者の分布域を考慮すると同一のユニットではなく,異なる溶岩ローブの崩壊に由来すると考えられる.L2-2 ~ L2-7(L2-4を除く)は層厚5 cm~23 cmで淘汰の良い火山灰または火山礫からなる層で,構成粒子は最大粒径約4 cmの角ばった安山岩質溶岩片であり,ブルカノ式噴火に由来する降下テフラと解釈できる.L2-4は層厚が50 cmで比較的淘汰が悪く,炭化木片も含まれることからブルカノ式噴火に伴う火砕流堆積物である可能性がある.
3.議論 これまで吾妻小富士溶岩の層序・年代は不明であったが,その末端崩壊による火山岩塊火山灰流堆積物がTo-Cuに覆われることから6 ka以前と結論できる.その上位のブルカノ式噴火堆積物を主とするテフラ層については,山元(2005)で報告されている露頭(loc. 1)と比較すると,To-Cu直下のL2-5と,To-CuとNm-NKに挟まるL2-6,L2-7はAz-KFに対比されると考えられる(Fig.).L2-2 ~ L2-4については既報のテフラとの対比が不明であるが,層序や分布域,層相や岩石学的特徴(全岩化学組成等)の類似性から吾妻小富士由来の可能性が高い. これらのデータを統合すると吾妻小富士火砕丘の活動は,大きく①溶岩流ステージと②爆発的噴火ステージに分けることができる.溶岩流ステージでは,安山岩質の塊状溶岩(吾妻小富士溶岩)を広範囲に流出し,吾妻小富士火口東麓に溶岩台地を形成した.この活動では溶岩流末端崖の崩壊により,複数の火砕流も発生した.溶岩流の流出が終息した後は,ブルカノ式噴火を主な噴火様式としてテフラを生成する爆発的噴火を頻発した.
4.今後の課題 観察した露頭数が少ないことや,既報のAz-KFとの対比が完全ではないことから,溶岩流ステージ以前,または同時期に爆発的噴火が発生していた可能性は否定できない.一方で,既報のAz-KF以外のテフラが,吾妻小富士由来である可能性についても再検討が必要である.また,吾妻小富士火砕丘内ではストロンボリ式噴火堆積物が露出しており,火砕丘を構築している主要な堆積物であると考えられるが,こちらもAz-KFとの対比はされていない.したがって,火砕丘を構成する堆積物と,溶岩流・ブルカノ式噴火堆積物との前後関係は不明であり,今後の課題である.今後は火砕丘内の調査を行い,地質学的・岩石学的な対比により吾妻小富士全体の噴火履歴を構築する.

引用文献 
Hasegawa・Suzuki(2021)日本地球惑星科学連合2021年大会講演要旨
松本・中野・古川・山元(2018)地質調査報告,69,153-163.
山元(2005)地質学雑誌,111,94-110.