129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Poster

T13.[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments

[8poster36-39] T13.[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments

Sun. Sep 11, 2022 9:00 AM - 1:00 PM poster (poster)


フラッシュトーク有り 9:00-10:00頃/ポスターコアタイム 11:00-13:00

[T13-P-2] Three-dimensional geological mapping of the Tsukuba City and its surroundings, Ibaraki Prefecture.

*Kentaro Sakata1, Susumu Nonogaki1, Masanori Ozaki1, Tsutomu Nakazawa1, Yoshinori Miyachi1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)

【zoomによるフラッシュトーク有り】9/11(日)9:10-9:15

Keywords:3D geological model, Quaternary, Buried valley, Tsukuba

これまで地質図といえば地質構造を平面図と断面図という2次元図面で表現することが一般的であった.しかし,都市平野部においてはその地形の平坦さゆえに2次元での表現には限度があった.一方,近年の情報技術の進歩を考慮すれば3次元的な地質図の表示や,それをウェブで配信することは技術的に十分可能と考えられる.これらを踏まえ,よりわかりやすく使いやすい地質情報の整備を目的として産業技術総合研究所地質調査総合センター(以下,産総研)は3次元地質地盤図を作成した.これはその名が示す通り対象地域の地質構造をコンピュータ上に3次元地質モデルで表現した地質図である.この3次元地質モデルは産総研が実施した層序ボーリング調査のデータ(基準ボーリングデータ)を基準に,自治体などが公開している公共工事等のボーリングデータを用いて地層の広域な対比を行い,さらにコンピュータ処理により3次元分布形態を解析することで作成される(中澤ほか,2016).またウェブを用いて容易に閲覧および利用することが可能であり,現在のところ千葉県北部および東京都区部の2つの地域が公開されている[URL1].  

茨城県南部に位置するつくば市およびその周辺地域の地質構造もまた上記の2つの地域と同様に都市平野部の特徴を持ち,そのため従来の2次元的表現ではその詳細を把握することは難しかった.現在演者らは本地域の地質構造の理解を深める目的で3次元地質地盤図の作成を試みている.検討したのは茨城県南部のつくば市および土浦市の市街地を含む範囲で,主に筑波台地と桜川低地からなる.本地域の地質については宇野沢ほか(1988)により調査が行われており,その報告によれば筑波台地の地下浅部には更新統下総層群が分布し,下位より地蔵堂層,薮層,上泉層,上岩橋層,木下層,常総層の6層に区分されている.また,つくば市真瀬付近から土浦市街地を経由し霞ケ浦方面に向かい東西に分布する埋没谷の存在が示され,この谷は上岩橋層(清川層)の堆積物が充填するとした.一方,坂田ほか(2018)は宇野沢ほか(1988)が基準ボーリングとして利用したGS-TS-1およびGS-TS-2コアと新たに掘削したGS-GM-1コアについてテフラおよび花粉分析を用いて本地域の地質層序の再検討を行い,薮層,上泉層および常総層においては概ね宇野沢ほか(1988)の層序区分を踏襲したものの,上岩橋層(清川層)および木下層については異なる解釈を提示した.坂田ほか(2018)は宇野沢ほか(1988)が上岩橋層(清川層)とした深度についてGS-TS-1では全て,GS-TS-2では一部を木下層とし,筑波台地地下に分布する谷埋め堆積物は上岩橋層(清川層)ではなく木下層に相当するものとした.木下層の谷埋め堆積物は近辺では千葉県柏市から成田市にかけての地域などにもみられ,更新統であるにもかかわらずN値の低い軟弱な泥層を含み,台地の軟弱地盤として懸念が持たれている(中澤ほか,2014; Nakazawa et al., 2017).よって本地域の木下層の谷埋め堆積物の分布を詳細に把握することは地質の理解にとどまらず,工学的な地盤リスク評価においても有用な情報となる.

つくば市域の3次元地質地盤図の作成にあたっては,坂田ほか(2018)の層序区分を基準として,宇野沢ほか(1988)が報告したボーリングデータやウェブで公開されている公共工事のボーリングデータを見直して層序対比作業を行うことで,最新の層序区分に基づく,本地域の全く新しい3次元地質モデルの作成を試みている.数値データとして供与される3次元地質モデルは,スマートシティ等の都市DXに親和性の高いデータであり,地質地盤情報の社会実装をより効果的に推進するものと考える.このような3次元地質地盤情報が,災害リスク評価やインフラメンテナンス,また市民や行政担当者といった非専門家のステークホルダーへの地質・地盤の理解の向上に資するだろう.

文献
中澤ほか(2014)地質調査総合センター速報,66,207-228.
中澤ほか(2016)Synthesiology9,73-85.
Nakazawa et al. (2017)Quat. Int., 456, 85-101.
坂田ほか(2018)地質雑,124,331-346.
宇野沢ほか(1988)2万5千分の1筑波研究学園都市及び周辺地域の環境地質図説明書
[URL1] 都市域の地質地盤図,https://gbank.gsj.jp/urbangeol/