日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッションポスター発表

T13.[トピック]都市地質学:自然と社会の融合領域

[8poster36-39] T13.[トピック]都市地質学:自然と社会の融合領域

2022年9月11日(日) 09:00 〜 13:00 ポスター会場 (ポスター会場)


フラッシュトーク有り 9:00-10:00頃/ポスターコアタイム 11:00-13:00

[T13-P-4] (エントリー)阿蘇カルデラ西部に位置する出ノ口断層の東方延長の検討 ~九州中部におけるvolcano tectonics~

*辛島 康大1、辻 智大1 (1. 山口大学理学部地球圏システム科学科)


キーワード:大分-熊本構造線、別府-島原地溝、2016年熊本地震、阿蘇カルデラ、活断層

【はじめに】熊本県中部に発達する出ノ口断層は2016年熊本地震を引き起こした布田川断層帯とSlip partitioningの関係であると解釈されている(Toda et al., 2016)。布田川断層帯は大分-熊本構造線の一部とされており(鎌田, 1992)、別府-島原地溝の南限を担う(松本, 1993)ことや地溝と横ずれ断層の複合体を基本構造とする中部九州剪断帯の南限を布田川断層帯が成している(大橋ほか, 2020)ことが指摘されている。また、カルデラ形成のマグマ供給系と断層は深く関わるとされており、Miyoshi et al., 2013では阿蘇カルデラ形成時のマグマ供給系に対し、大分-熊本構造線に沿うように阿蘇カルデラ中心から20㎞以上マグマが移動したと述べられている。これらのことから、大分-熊本構造線は九州中部の地質構造を語るうえで必要不可欠な構造線及び断層であるといえる。布田川断層帯は2016年熊本地震の影響により、阿蘇カルデラ内部にて新たに約3.5㎞にわたって地表地震断層が表れた(遠田ほか, 2019)。しかし、布田川断層帯とSlip partitioningの関係である出ノ口断層に関しては、2016年熊本地震において布田川断層帯に沿うように約10㎞にわたって活動が確認されたが、俵山北部を東限に、阿蘇カルデラ西壁・阿蘇カルデラ内部では確認されていない。そのため、出ノ口断層の東方延長を発見・観察することで、大分-熊本構造線を明確にし、九州中部に発達する阿蘇カルデラの形成・発達や別府-島原地溝などの詳細な検討を行うことができる。本研究では熊本県西原村地域で東限となる出ノ口断層の阿蘇カルデラ西壁においての分布と構造について考察する。

【研究手法】南阿蘇村地域の阿蘇カルデラ西壁において、地表の土壌分布を詳細に記載した。また、地形判読を用いて当該地域の地形区分を行った。

【結果】阿蘇カルデラ西壁にあたる南阿蘇村柏野地域において、沢沿いに~60㎝程の小段が観察された。小段は走向N40~70°Eで連続して露出し、中角~高角な北傾斜を成しており、北側が低下する正断層として発達していた。撓曲のようになだらかに地表高が変化する場所もあったが、新鮮な土壌が露出するように小段が形成されている場所も観察することができた。

【考察・今後の課題】今回観察された小段は新鮮な土壌が露出している、新鮮な土壌中に草や木の根がむき出しになっているなどの観察結果と地形判読の結果から、2016年熊本地震に伴って形成された小段であると考えられる。また、出ノ口断層の延長上で出ノ口断層と調和的な走向傾斜・変位方向を持つ小段が形成されたことを考慮すると、本研究によって確認された小段は出ノ口断層の延長であると推定できる。このように阿蘇カルデラ西壁で出ノ口断層の延長を観察されたため、大分-熊本構造線が阿蘇カルデラ中心・阿蘇カルデラ東壁でも観察される可能性がある。今後の課題として、出ノ口断層を阿蘇カルデラ東壁にて発見・観察を行うとともに、大分-熊本構造線を成す断層が阿蘇カルデラの形成・発達や別府-島原地溝などの地質構造発達にどのように関係しているかなどが挙げられる。

【引用文献】 鎌田浩毅(1992)地質学論集, 40,53-63.松本徰夫(1993)地質学論集 ,41, 175-192.Miyoshi et al.(2013)Chemical Geology ,352, 202-210.大橋ほか(2020)地学雑誌,129(4),565-589.Toda et al.(2016)Earth,Planets and Space,68:188.遠田ほか(2019)活断層研究,51,13-25.