10:00 AM - 10:15 AM
[T14-O-4] Literature survey for high radioactive waste final repository at Suttsu and Kamoenai districts, Hokkaido, Japan
Keywords:Literature survey, High radioactive waste, Suttsu, Kamoenai
原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場を選ぶ第一段階の文献調査が,2020年11月から北海道寿都町と神恵内村で行われ,調査報告を待つ段階となった。筆者は、両地域の地質について、対象となるのは新第三紀後期中新世の火山性砕屑岩が主体であり、これらは層相変化に富み,再堆積性の岩相を示すことが多く、さらに多数の岩脈が認められることから、亀裂に富み高透水性の岩盤であるため、地層処分場には適さない脆弱な地質であることを主張してきた(文献1)。しかし、経産省が示す「文献調査段階の評価の考え方(案)」(以下、評価の考え方)(文献2)では、上記の脆弱な岩盤について、明確な評価基準が示されていない。本発表では、寿都町と神恵内村の「対話の場」で公表された検討事例をもとに、「評価の考え方」の問題点を考察した。
水冷破砕岩の脆弱性
寿都町で実施の「対話の場」で配布された文献調査の進捗状況資料(以下、文献調査の進捗)(文献3)によれば、水冷破砕岩の地質特性の検討として、「地下深部のデータが少なく、十分な評価のためには、現地調査によるデータの取得が必要」として「概要調査に際して留意すべき」としている。しかし、水冷破砕岩主体の不均質で脆弱な地質特性は、地質図幅などの文献から評価可能であり、同種の岩盤のトンネル崩落事故の調査報告(文献4)からも、岩相によって未固結堆積物にも匹敵する強度が指摘されている。
断層の基準
寿都町の「文献調査の進捗」では、断層の事例として、処分場を設置する深さに分布する「可能性が高い」のは、黒松内低地断層帯のうち「白炭西・白炭東」のみであり、それ以外(樽岸、丸山東、歌棄など)は、「可能性が高いとは言えない」としている。しかし、白炭西・白炭東の両断層は、トレンチ調査や地震探査によって変動が明らかにされている事例なのであり、地震調査研究推進本部が認定した黒松内低地断層帯の活動範囲を、意図的に狭く認定し、地層処分の安全性を重視した見解とは考えられない。 尻別川断層は、寿都町の東隣に接する蘭越町との境界の尻別川に沿って走り、これについては対象外とされている。しかし、本断層は、北海道電力の調査資料(文献6)によって、中期更新世以降に活動し南北約16kmで60度西傾斜の逆断層であることが示されている。このことは「評価の考え方」が示す処分場として避けるべき基準に合致していることは明らかである。
第四紀火山の基準
「評価の考え方」の基準では、第四紀火山とその活動中心から約15km以内を不適地としている。「文献調査の進捗」では、寿都町北東部に「磯谷溶岩」が第四紀火山の候補として指摘されているが、「該当することが明らかまたは可能性が高いとは言えない」とされている。しかし、磯谷溶岩の下位に堆積する礒谷層中の岩脈から2.3Ma(文献7)が報告され、本溶岩がその磯谷層の上位に重なることから、更新世火山とされている(文献8)。したがって、磯谷溶岩を第四紀火山と認定し、その分布範囲を中心とした15km圏内を不適地とすべきである。
新たな火山の基準
寿都湾の内陸側では、地下10kmと30kmを震央とする地震が確認されている。このうち30km震度は低周波地震からなり、地殻深部の部分溶融域やそこから上昇する流体の存在が指摘されている。しかし、この観測データに関する見解は、「評価の考え方」の基準の「新たな火山が生じる」可能性と照合し、「該当することが明らかまたは可能性が高い」と言えないとされている。仮に、この観測データが、地層処分地の不適地の評価にあたらないのであれば、本基準が、地層処分の安全性を保証する基準にはなり得ないことは明らかである。能登半島珠州岬周辺で頻発する深部低周波地震由来の地震災害を想起すれば、この「評価の考え方」の誤謬は誰の目にも明らかである。
(文献1)岡村 聡(2021)日本地球惑星科学連合2021年大会(文献2)経産省 文献調査段階の評価の考え方(案)https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000255891(文献3)https://www.numo.or.jp/chisoushobun/survey_status/suttu/m_asset/haifushiryo_20230509_suttu.pdf(文献4) 豊浜トンネル事故調査委員会(1996)豊浜トンネル事故調査委員会報告書.(文献5)北海道電力 「7.尻別川断層の評価」
https://wwwc.hepco.co.jp/hepcowwwsite/energy/atomic/info/pdf/examination_meeting_18_1_3.pdf
水冷破砕岩の脆弱性
寿都町で実施の「対話の場」で配布された文献調査の進捗状況資料(以下、文献調査の進捗)(文献3)によれば、水冷破砕岩の地質特性の検討として、「地下深部のデータが少なく、十分な評価のためには、現地調査によるデータの取得が必要」として「概要調査に際して留意すべき」としている。しかし、水冷破砕岩主体の不均質で脆弱な地質特性は、地質図幅などの文献から評価可能であり、同種の岩盤のトンネル崩落事故の調査報告(文献4)からも、岩相によって未固結堆積物にも匹敵する強度が指摘されている。
断層の基準
寿都町の「文献調査の進捗」では、断層の事例として、処分場を設置する深さに分布する「可能性が高い」のは、黒松内低地断層帯のうち「白炭西・白炭東」のみであり、それ以外(樽岸、丸山東、歌棄など)は、「可能性が高いとは言えない」としている。しかし、白炭西・白炭東の両断層は、トレンチ調査や地震探査によって変動が明らかにされている事例なのであり、地震調査研究推進本部が認定した黒松内低地断層帯の活動範囲を、意図的に狭く認定し、地層処分の安全性を重視した見解とは考えられない。 尻別川断層は、寿都町の東隣に接する蘭越町との境界の尻別川に沿って走り、これについては対象外とされている。しかし、本断層は、北海道電力の調査資料(文献6)によって、中期更新世以降に活動し南北約16kmで60度西傾斜の逆断層であることが示されている。このことは「評価の考え方」が示す処分場として避けるべき基準に合致していることは明らかである。
第四紀火山の基準
「評価の考え方」の基準では、第四紀火山とその活動中心から約15km以内を不適地としている。「文献調査の進捗」では、寿都町北東部に「磯谷溶岩」が第四紀火山の候補として指摘されているが、「該当することが明らかまたは可能性が高いとは言えない」とされている。しかし、磯谷溶岩の下位に堆積する礒谷層中の岩脈から2.3Ma(文献7)が報告され、本溶岩がその磯谷層の上位に重なることから、更新世火山とされている(文献8)。したがって、磯谷溶岩を第四紀火山と認定し、その分布範囲を中心とした15km圏内を不適地とすべきである。
新たな火山の基準
寿都湾の内陸側では、地下10kmと30kmを震央とする地震が確認されている。このうち30km震度は低周波地震からなり、地殻深部の部分溶融域やそこから上昇する流体の存在が指摘されている。しかし、この観測データに関する見解は、「評価の考え方」の基準の「新たな火山が生じる」可能性と照合し、「該当することが明らかまたは可能性が高い」と言えないとされている。仮に、この観測データが、地層処分地の不適地の評価にあたらないのであれば、本基準が、地層処分の安全性を保証する基準にはなり得ないことは明らかである。能登半島珠州岬周辺で頻発する深部低周波地震由来の地震災害を想起すれば、この「評価の考え方」の誤謬は誰の目にも明らかである。
(文献1)岡村 聡(2021)日本地球惑星科学連合2021年大会(文献2)経産省 文献調査段階の評価の考え方(案)https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000255891(文献3)https://www.numo.or.jp/chisoushobun/survey_status/suttu/m_asset/haifushiryo_20230509_suttu.pdf(文献4) 豊浜トンネル事故調査委員会(1996)豊浜トンネル事故調査委員会報告書.(文献5)北海道電力 「7.尻別川断層の評価」
https://wwwc.hepco.co.jp/hepcowwwsite/energy/atomic/info/pdf/examination_meeting_18_1_3.pdf