130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T14[Topic Session]Nuclear Energy and Geological Sciences

[1oral301-11] T14[Topic Session]Nuclear Energy and Geological Sciences

Sun. Sep 17, 2023 9:00 AM - 12:15 PM oral room 3 (4-30, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Shinji Takeuchi, Hidekazu Yoshida, Koji Umeda(Hirosaki University)

12:00 PM - 12:15 PM

[T14-O-11] Albitization of plagioclase and mineral vein method of capable fault evaluation in the ground of nuclear power plants in Japan

*Akira ISHIWATARI1 (1. Nuclear Regulation Authority)

Keywords:nuclear power plants, on-site capable fault evaluation, mineral vein method, albitization of plagioclase, veins of clay minerals and calcite

斜長石は300oC前後の温度で熱水変質や変成作用を受けると曹長石化することが知られている。小論ではAn10(100Ca/(Ca+Na)=10)以下の斜長石を曹長石、An10を超える斜長石をCa斜長石と呼ぶ。一般に変成岩では、沸石相の低温部(100oC前後)では曹長石は現れず、濁沸石が出現する温度で曹長石が現れる。ブドウ石パンペリー石相、緑色片岩相、緑簾石角閃岩相では曹長石のみで、角閃岩相(>500oC)になるとCa斜長石が再結晶する。
 原子力発電所の新規制基準適合性審査では、敷地内断層の後期更新世以後の活動の有無の評価に鉱物脈法を用いる場合がある。小論では原子力規制委員会のホームページで公開されている審査資料をもとに、各敷地の地盤における斜長石の曹長石化と鉱物脈法との関係を考察する。

【曹長石化が見られる発電所】
1.美浜(2016.05.20審査会合資料1-2, p. 41-45, 関西電力)
 敷地は後期白亜紀の花崗岩類からなり、中新世のドレライトが貫く。断層破砕帯近傍の斜長石186個のEPMA分析値はAn0-15、平均An3.5、その周辺の97個の斜長石もAn0-11、平均An4.8の曹長石だったが、断層から遠い新鮮な花崗岩ではAn7-25, 平均An13.2のCa斜長石だった。敷地内断層の活動性はその最新面を横断する雲母粘土鉱物(イライト)脈やスメクタイト脈により否定された。
2.女川(2019.09.27審査会合資料1-2-1, p. 183-187, 東北電力)
 敷地は南部北上帯のジュラ紀の荻の浜累層の砂岩・泥岩互層よりなり、白亜紀のひん岩が貫く。敷地の褶曲軸や他の断層を切るTF-1断層の破砕部中の斜長石7個はAn0-18, 平均An6.4±7.6の曹長石だった。一方、新鮮な砂岩の斜長石15個はAn0-41, 平均An20.8±14.4のCa斜長石だった。TF-1断層の最新活動面は白亜紀の方解石、緑泥石、粘土鉱物の脈に切られ、活動性が否定された。
3.島根(2021.04.30審査会合資料4-2, p. 204-255, 中国電力)
 敷地は中新世の成相寺層の砂岩、泥岩、凝灰岩などの互層よりなり、中新世のドレライトが貫く。地表の凝灰岩の斜長石18個はAn15-50, 平均An28.7±8.7のCa斜長石だったが、地表のドレライト岩床の斜長石17個(Kに富む1個を除く)はAn2-17, 平均An6.1±3.7の曹長石だった。地下-232mのドレライト岩床の斜長石8個(Kに富む2個を除く)もAn2-7, 平均An5.0±1.8の曹長石だった。このドレライトの上盤側に接する凝灰岩(-203m)にはCaに富むざくろ石が含まれ、斜長石25個はAn0-1, 平均An0.75±0.28の曹長石だった。成相寺層には層面滑り断層が発達するが、その最新面を横断する方解石や濁沸石の脈により活動性が否定された。

【曹長石化が見られない発電所】
4.志賀(2023.03.03審査会合資料1-1, p. 5-39, 北陸電力)(審査中)
 敷地は中新世の別所岳安山岩類よりなり、段丘堆積物に覆われる。敷地内破砕帯の固結した破砕部、粘土状破砕部、その近傍の母岩の安山岩、白色変質部の斜長石はいずれもAn48-80のCa斜長石であり、曹長石は全くなかった。「よって、敷地は、少なくとも斜長石が曹長石化するような高温の熱水の影響を受けていないと考えられる」。敷地内断層の活動性は最新面を横断するイライト・スメクタイト混合層鉱物脈によって否定された。オパール脈や砕屑岩脈も存在する。段丘堆積物は断層と鉱物脈を被覆する。

【敷地内断層の活動性評価に鉱物脈法を用いたが、斜長石のデータがない発電所】
5.川内(2014.04.23審査会合資料1-3, p. 83-143, 九州電力)
 敷地は秩父帯(黒瀬川帯)の白亜紀の礫岩、砂岩、泥岩を主とし、変斑れい岩等を含む蛇紋岩メランジュが一部に分布する。敷地内断層の活動性は最新面を貫く石英、緑泥石、イライト、方解石、菱鉄鉱等の脈により否定された。斜長石のデータはない。
6.伊方(2015.03.20審査会合資料3-2, p. 99, 103, 四国電力)
 敷地は三波川帯の白亜紀の緑色片岩である。敷地内断層の活動性は最新面を横断する緑泥石・スメクタイト混合層鉱物脈によって否定された。資料の鉱物表の「斜長石」は曹長石と考えられる。

【まとめ】 日本の原子力発電所の敷地内の鉱物脈法による断層活動性評価において、粘土鉱物脈は曹長石化の有無に関わらず用いられるが、方解石脈や濁沸石脈は曹長石化が見られる場合に限って用いられ、曹長石化の有無と鉱物脈の種類には変質温度の高低を反映した関係があるようだ。更なる岩石学的・鉱物学的データの充実が望まれる。