9:30 AM - 9:45 AM
[G1-O-3] Mantle peridotite exposure in the Philippine Sea backarc basins and perspective for future research
Keywords:mantle peridotite, backarc basin, Philippine Sea, Oceanic Core Complex
フィリピン海プレートは複数の背弧海盆で構成されている。背弧海盆の海底拡大では水の存在がマグマの生成に対して重要な役割を持つ点で、大洋中央海嶺の海底拡大とは大きく相違している。このことから、背弧海盆拡大系の理解により、世界の海底拡大系に対する理解をより深めることができるはずである。1940 年代から大西洋中央海嶺を始めとする大洋中央海嶺の多くの断裂帯や海洋コアコンプレックス(OCC)は、 テクニックウィンドウとして上部マントル物質である蛇紋岩化したマントルかんらん岩を産出し、それらは「海洋底かんらん岩」と呼ばれて来た(Dick, 1989など)。一方、それまで「背弧海盆かんらん岩」についての詳細な報告は皆無であったが、1990 年代後半から海上保安庁海洋情報部の大陸棚調査プロジェクトの進展によってフィリピン海背弧海盆のテクトニクスの詳細が明らかになるとともに(Okino et al., 1999など)、限られた数ではあるが、フィリピン海背弧海盆かんらん岩の特徴が明らかになりつつあった (Ohara et al., 2003など)。
2020年時点でのフィリピン海背弧海盆かんらん岩の産出地として、パレスベラ海盆のOCCであるゴジラメガムリオンや四国海盆のOCCであるマドメガムリオンなど9箇所が記載されていた(小原, 2020)。その後、筆者らの研究チームは、2023年4月までの間に、北緯25度近傍の四国海盆西部の調査を集中的に実施し、北緯25度近傍の四国海盆西部には南海道メガムリオン群と称した多数のOCCが存在することを明らかにした(Moriguchi et al., 2023など)。南海道メガムリオン群からは、大量の斜長石かんらん岩が産出する一方、はんれい岩類の産出はごく限られており、北緯25度近傍の四国海盆西部が非マグマ的な拡大テクトニクスにより形成され、この場の海洋地殻が主に蛇紋岩から構成されるという、いわゆる「ヘスモデル」型の海洋地殻(Dick et al., 2006)であることを示している。さらに、南海道メガムリオン群の一部からは、非常に新鮮なマントルかんらん岩が得られた。
本講演では、南海道メガムリオン群を始め、フィリピン海背弧海盆におけるマントルかんらん岩の最新の産出状況をレビューすると共に、将来の海洋科学掘削を含む研究の展望について議論する。
引用文献
Dick, H.J.B., Abyssal peridotites, very slow spreading ridges and ocean ridge magmatism, Geological Society, London, Special Publications, 42, 71-105, 1989.
Dick H.J.B. et al., Past and future impact of deep drilling in the oceanic crust and mantle, Oceanography, 19(4), 72-80, 2006.
Moriguchi T., et al., Geophysical characteristics of Nankaido Megamullions in the Shikoku Basin: tectonic implications for backarc spreading initiation, SCG52-15, JpGU 2023, Makuhari Messe, 2023.
Ohara, Y., et al., Peridotites and gabbros from the Parece Vela backarc basin: unique tectonic window in an extinct backarc spreading ridge, Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 4 (7), 8611, 10.1029/2002GC000469, 2003.
小原泰彦, フィリピン海背弧拡大系のマントルかんらん岩(第2版), 新地球, 1, 46-56, 2020.
Okino, K., et al., The Philippine Sea: new survey results reveal the structure and the history of the marginal basins, Geophysical Research Letters, 26, 2287-2290, 1999.
2020年時点でのフィリピン海背弧海盆かんらん岩の産出地として、パレスベラ海盆のOCCであるゴジラメガムリオンや四国海盆のOCCであるマドメガムリオンなど9箇所が記載されていた(小原, 2020)。その後、筆者らの研究チームは、2023年4月までの間に、北緯25度近傍の四国海盆西部の調査を集中的に実施し、北緯25度近傍の四国海盆西部には南海道メガムリオン群と称した多数のOCCが存在することを明らかにした(Moriguchi et al., 2023など)。南海道メガムリオン群からは、大量の斜長石かんらん岩が産出する一方、はんれい岩類の産出はごく限られており、北緯25度近傍の四国海盆西部が非マグマ的な拡大テクトニクスにより形成され、この場の海洋地殻が主に蛇紋岩から構成されるという、いわゆる「ヘスモデル」型の海洋地殻(Dick et al., 2006)であることを示している。さらに、南海道メガムリオン群の一部からは、非常に新鮮なマントルかんらん岩が得られた。
本講演では、南海道メガムリオン群を始め、フィリピン海背弧海盆におけるマントルかんらん岩の最新の産出状況をレビューすると共に、将来の海洋科学掘削を含む研究の展望について議論する。
引用文献
Dick, H.J.B., Abyssal peridotites, very slow spreading ridges and ocean ridge magmatism, Geological Society, London, Special Publications, 42, 71-105, 1989.
Dick H.J.B. et al., Past and future impact of deep drilling in the oceanic crust and mantle, Oceanography, 19(4), 72-80, 2006.
Moriguchi T., et al., Geophysical characteristics of Nankaido Megamullions in the Shikoku Basin: tectonic implications for backarc spreading initiation, SCG52-15, JpGU 2023, Makuhari Messe, 2023.
Ohara, Y., et al., Peridotites and gabbros from the Parece Vela backarc basin: unique tectonic window in an extinct backarc spreading ridge, Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 4 (7), 8611, 10.1029/2002GC000469, 2003.
小原泰彦, フィリピン海背弧拡大系のマントルかんらん岩(第2版), 新地球, 1, 46-56, 2020.
Okino, K., et al., The Philippine Sea: new survey results reveal the structure and the history of the marginal basins, Geophysical Research Letters, 26, 2287-2290, 1999.