130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

G-1.sub-Session 01

[1oral601-11] G-1.sub-Session 01

Sun. Sep 17, 2023 9:00 AM - 12:15 PM oral-06 (37-North Wing, Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

Chiar:Kenji Matsuzaki(Univ. of Tokyo), Daisuke Sato(AIST/GSJ), Atsushi Noda(AIST/GSJ), Tetsuya TOKIWA

11:15 AM - 11:30 AM

[G1-O-8] Formation process of pseudotachylyte within the Asuke shear zone in the Ryoke metamorphic belt, Aichi Prefecture

Tomohiro ISHII1, *Katsuyoshi MICHIBAYASHI1 (1. Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University)

Keywords:Pseudotachylite, Asuke Shear Zone

【はじめに】シュードタキライトは、断層運動時の摩擦熱により岩石が溶融し、急冷したガラス質の岩石である。断層面に沿って形成脈、鉱物の割れ目に沿って注入脈が形成される。溶融時に溶け残った鉱物粒子は岩片となる。シュードタキライトは、一般的に無水条件で形成される[1]。しかし、近年の研究で水の存在下でもシュードタキライトは形成されることが指摘された[2]。シュードタキライトが見られる国内の代表的な露頭に領家変成帯足助剪断帯がある。本研究では足助剪断帯シュードタキライトについて、水の影響を含めてその形成過程を考察した。
【地質概説】愛知県豊田市の足助剪断帯は中央構造線の北西約50 kmに位置し、総延長は約14 kmである[3]。主に花崗閃緑岩で構成され、カタクレーサイトを主体にシュードタキライトとマイロナイトが共存している。本研究では香嵐渓と大島の露頭でシュードタキライトを採取した。
【研究試料・方法】香嵐渓と大島の露頭で花崗閃緑岩4試料を採取し、その中からシュードタキライトが確認できた大島の試料を詳細に分析した。組織的特徴や鉱物の種類、元素の存在量を明らかにするため、偏光顕微鏡およびSEMとFE-SEMによる観察、ラマン分光分析、元素マッピングを行った。
【結果】本研究では注入脈の先を先端部、形成脈に近い根元を基部として扱う。偏光顕微鏡で脆性から延性変形までの多様な組織が観察された。形成脈中には硫化鉄が確認された。SEMとFE-SEM観察では注入脈に気泡が確認され、分布の偏りが見られた。気泡は先端部に少なく、基部に多かった。ラマン分光分析で注入脈と形成脈内の岩片を調べた結果、黒雲母と石英、斜長石が確認された。元素マッピングの結果、注入脈の基質部に組成差が認められた。FeとMgは先端部に富んでおり、基部に乏しかった。観察した全注入脈で同様の分布を示した。一方、SiとCaは先端部に乏しく、基部に富んでいた。Siに富む注入脈はCaに乏しく、Caに富む注入脈はSiに乏しかった。SiやCaが多い基部は気泡も多く、SiやCaが少ない先端部は気泡も少なかった。
【考察】先端部にFeとMgが、基部にSiやCaが多かった。黒雲母が比較的低温で優先的に溶融し、石英と斜長石がより高温で後から溶ける選択的溶融が生じたことを示す。また、注入脈と形成脈内に硫化鉄と気泡が確認された。硫化鉄は水の存在を示し[4]、メルト中に水が0.5 wt.%以上存在すれば気泡が形成される[5]。水は低温だとメルト中に溶け込むが、温度が高くなると脱水することから[6]、高温メルトが存在した基部で気泡が発生したことが考えられる。
【結論】足助剪断帯のシュードタキライトは、含水状態で選択的溶融しながら形成されたことが明らかになった。
【引用文献】[1] Sibson (1975) Geophys. J.R. Astron. Soc., 43: 775-794. [2] Gomila et al. (2021) Geochem. Geophys. Geosyst. 22, e2021GC009743. [3] 高木・酒巻 (2003) 日本地質学会第110年学術大会見学旅行案内書, A-1, 1-10. [4] Tracy and Robinson (1988) American Jour. Sci., 288, 45-74. [5] Dixon and Dixon (1989) Lithos, 23, 225-229. [6] Yamashita (1999) Jour. Petrol., 40(10), 1497-1507.