11:45 AM - 12:00 PM
[G1-O-10] (entry) Strain distribution inside the granular material depend on strain rate and fracture strength variations
★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
Keywords:granular material
[はじめに]
これまで粒状体内部の歪分布は、主に数値実験によって検討されてきた(例えば、Yanほか,2021)。しかし、岩石はサイズも形状も不均質な、きわめて多数の粒子から構成されるゆえにシミュレーションでの再現には限界がある。 天然の岩石の力学試験では、アコースティック・エミッションによって亀裂の分布は報告されているが、歪速度変化による歪分布に焦点を当てた研究は行われていなかった。これは、内部の歪分布を知るための手法が無かったためである。そこで試料内部の歪分布を知る新たな手法としてカルサイト応力・歪計がある。カルサイトは外力に応じて結晶内部に双晶変形を生じさせる特性があり(Sakaguchi et al., 2011)、双晶密度は歪量に比例することから、双晶密度は歪計として使用できる(坂口・安藤, 2022)。このカルサイト応力・歪計をマイクロセンサーとして粒状体内部の歪分布を解析することができる。
[手法]
水熱合成された双晶変形を含まない合成カルサイトを高強度モルタルに2.71 %混ぜ込んだ模擬岩石を供試体とする。セメント/水の比率が標準値の場合に、このモルタル供試体の一軸圧縮強度は約100 MPaになる。また、水の比率を増やすことで50 MPaの低強度供試体も作成できる。また、カルサイトを多量に含む天然の砂岩も用いて比較する。 これらの供試体を引張圧縮試験機 (Instron 100kN)を使用し、100, 200, 300, 400, 500 mm/minの歪速度で一軸圧縮試験を行う。偏光顕微鏡を用いて、薄片におけるカルサイト粒子の座標、双晶密度を測定し、カルサイト粒子と破壊面との距離の関係について検討を行う。
[結果・議論]
破壊強度約100 MPaのモルタル供試体および50 MPaの供試体の一軸圧縮試験の結果、歪速度および破壊強度の違いによって、双晶密度の平均値に有意な違いは認められなかった。 破壊強度100 MPaの供試体の場合は、歪速度を100 mm/minから段階的に上げていくと、歪速度約400 mm/minから破壊面近縁における歪分布の偏りが顕著に現れた。その一方で、破壊強度約50 MPaの供試体の場合、破壊面近縁における歪分布の偏りは、歪速度を約500 mm/minにまで上げても顕著には現れなかった。破壊面近縁における歪分布の偏りは、歪速度がある閾値を超えると現れるが,その閾値は破壊強度や弾性率、密度、粘着力、内部摩擦角などの試料の物性もしくは試料全体に生じた歪量によって変化すると考えられる。また、カルサイト粒子を多く含む天然の砂岩の供試体は、歪み速度が遅い場合は、破壊強度が約350 MPaであるが、歪速度の増加に伴って破壊強度も上昇した。
[引用文献]
坂口有人・安藤航平,セメントを主体とする複合材における応力・歪みの履歴推定方法,国際特許,WO 2022/009957 AI,2022. Sakaguchi Arito, Sakaguchi Hide, Nishiura Daisuke, N akatani Masao, and Yoshida Shingo(2011) Elastic stress indication in elastically rebounded rock, Geophysical Re search Letters, 38, L09316
Yan Qin1, Chun Liu, Xiaoyu Zhang, Xingang Wang, Bin Shi, Yue Wang& Shang Deng(2021),A three‑dimensional discrete element model of triaxial tests based on a new fexible membrane boundary,Scientific, nature, Reports volume 11, Article number: 4753(2005)
これまで粒状体内部の歪分布は、主に数値実験によって検討されてきた(例えば、Yanほか,2021)。しかし、岩石はサイズも形状も不均質な、きわめて多数の粒子から構成されるゆえにシミュレーションでの再現には限界がある。 天然の岩石の力学試験では、アコースティック・エミッションによって亀裂の分布は報告されているが、歪速度変化による歪分布に焦点を当てた研究は行われていなかった。これは、内部の歪分布を知るための手法が無かったためである。そこで試料内部の歪分布を知る新たな手法としてカルサイト応力・歪計がある。カルサイトは外力に応じて結晶内部に双晶変形を生じさせる特性があり(Sakaguchi et al., 2011)、双晶密度は歪量に比例することから、双晶密度は歪計として使用できる(坂口・安藤, 2022)。このカルサイト応力・歪計をマイクロセンサーとして粒状体内部の歪分布を解析することができる。
[手法]
水熱合成された双晶変形を含まない合成カルサイトを高強度モルタルに2.71 %混ぜ込んだ模擬岩石を供試体とする。セメント/水の比率が標準値の場合に、このモルタル供試体の一軸圧縮強度は約100 MPaになる。また、水の比率を増やすことで50 MPaの低強度供試体も作成できる。また、カルサイトを多量に含む天然の砂岩も用いて比較する。 これらの供試体を引張圧縮試験機 (Instron 100kN)を使用し、100, 200, 300, 400, 500 mm/minの歪速度で一軸圧縮試験を行う。偏光顕微鏡を用いて、薄片におけるカルサイト粒子の座標、双晶密度を測定し、カルサイト粒子と破壊面との距離の関係について検討を行う。
[結果・議論]
破壊強度約100 MPaのモルタル供試体および50 MPaの供試体の一軸圧縮試験の結果、歪速度および破壊強度の違いによって、双晶密度の平均値に有意な違いは認められなかった。 破壊強度100 MPaの供試体の場合は、歪速度を100 mm/minから段階的に上げていくと、歪速度約400 mm/minから破壊面近縁における歪分布の偏りが顕著に現れた。その一方で、破壊強度約50 MPaの供試体の場合、破壊面近縁における歪分布の偏りは、歪速度を約500 mm/minにまで上げても顕著には現れなかった。破壊面近縁における歪分布の偏りは、歪速度がある閾値を超えると現れるが,その閾値は破壊強度や弾性率、密度、粘着力、内部摩擦角などの試料の物性もしくは試料全体に生じた歪量によって変化すると考えられる。また、カルサイト粒子を多く含む天然の砂岩の供試体は、歪み速度が遅い場合は、破壊強度が約350 MPaであるが、歪速度の増加に伴って破壊強度も上昇した。
[引用文献]
坂口有人・安藤航平,セメントを主体とする複合材における応力・歪みの履歴推定方法,国際特許,WO 2022/009957 AI,2022. Sakaguchi Arito, Sakaguchi Hide, Nishiura Daisuke, N akatani Masao, and Yoshida Shingo(2011) Elastic stress indication in elastically rebounded rock, Geophysical Re search Letters, 38, L09316
Yan Qin1, Chun Liu, Xiaoyu Zhang, Xingang Wang, Bin Shi, Yue Wang& Shang Deng(2021),A three‑dimensional discrete element model of triaxial tests based on a new fexible membrane boundary,Scientific, nature, Reports volume 11, Article number: 4753(2005)