11:30 AM - 11:45 AM
[T3-O-6] Inclusive Adventures: Pioneering Outdoor Geotourism for All
Keywords:Geopark, Universal, Adaptive, Tourism, Outdoor
山口県中央部には, 東西約15km南北約8kmの広がりをもつ秋吉石灰岩が分布している.この石灰岩は,前期石炭紀から中期ペルム紀の化石を含み,当時世界最大の海洋であったパンサラッサ海において噴火した海底火山の頂部に形成された石灰礁を起源としている. プレートの移動によって, ペルム紀中-後期に日本周辺の収束境界において海溝充填堆積物とともに付加したとされる.秋吉石灰岩は, 小澤(1923)によって層序が逆転していることが明らかにされ,長い間地質学の重要課題として議論されてきた国際的に価値の高い地質遺産である(藤川ほか, 2019).一方, この石灰岩は, 現在カルスト台地を形成し, 地下には秋芳洞を初めとする400を超す鍾乳洞が形成されている.秋吉台のカルスト台地や地下の鍾乳洞は, 学術的に貴重な地質遺産であると同時に, その美しい景観が観光客を魅了するツーリズムサイトにもなっており, 年間3000万人超の観光客が訪れている(注:コロナ以前2015-2018年).カルスト台地の上では, トレッキングやトレイルラン, マラソンやサイクリングなど, 様々なアウトドアスポーツが行われ, 鍾乳洞では観光洞窟の散策やケービングなども楽しまれている.しかしながら, カルスト台地は全体としてなだらかな地形であるが, それでも多く急傾斜地や段差などが多く, 障害者や高齢者などが参加する機会は限られている.ジオパークは, 国連のユネスコの傘下にある活動であり,「誰一人取り残さない」というSDGsの中核理念に則って活動をする必要がある.そのためには, 障害・性別・年齢・宗教などの多様性を受け入れ, 誰も排除しないユニバーサルあるいはインクルーシブという考え方を導入することが望ましい. ユニバーサルツーリズムには大きく分けて, バリアフリーツーリズムとアダプティブツーリズムがある. 都市観光においては, 障害者や高齢者に対応して安全な場所や設備を提供するバリアフリー対応がしばしば進められている. しかし自然体験を中核としたアウトドアツーリズムにおいては, 障害者や高齢者一人一人の状態や条件に適応させるアダプティブツーリズムのスタンスが望ましい. Mine秋吉台ジオパークでは2021年にアダプティブツーリズムの実験を行った. Mine秋吉台ジオパークではこれまで秋芳洞のごく限られた場所のみで車椅子による洞内観光を行ったことがあったが, 今回初めて, 秋芳洞のうち一般公開している観光洞窟の全ルートと秋吉台科学博物館から若竹山山頂までのカルスト台地の台上ルートを, 障害者とともに観光する試みを実施した.この試みでは, ユニバーサルツーリズムのトライアルのために, アウトドア用車椅子「ヒッポキャンプ」を借用し使用した.この車いすを安全に運用するために, インクルーシブ野外教育研究所の小泉二郎氏や信州大学の加藤彩乃氏の指導の下, 事前トレーニングを実施し, 障害者の方を安全に案内するための技能や知識を習得した.現地では, この「ヒッポキャンプ」を組み立て, 障害者に通常の車椅子から移動してもらい, 事前トレーニングを受講した案内者が中心になり, さらに車椅子に連結したロープを使って, 数名がサポートに回った.今回は, 初めての試みだったため, 対象者は一人であったが, 今後体制を充実させて, 複数の障害者に対応できることを目指したい.これまで, 地域のジオパークイベントは, 家族連れや子ども達が中心であったが, 地元の高齢者矢障害者も参加できるイベントを増やし, 「誰一人取り残さない」ジオパーク活動を展開していきたいと考えている.今後は, 日本国内外のジオパークと連携し, ユニバーサル アウトドア アウトドア ジオツーリズムの在り方を, ジオパークネットワークの枠組みの中で検討を進めていきたいと思う.
引用文献
藤川将之・中澤 努・上野勝美(2019)石炭-ペルム系秋吉石灰岩の堆積作用とカルスト化作用,地質学雑誌, 125, 609-631.
小澤儀明(1923) 秋吉台石灰岩を含む所謂上部秩父古生層の層位学的研究, 地質学雑誌, 30,227-243.
引用文献
藤川将之・中澤 努・上野勝美(2019)石炭-ペルム系秋吉石灰岩の堆積作用とカルスト化作用,地質学雑誌, 125, 609-631.
小澤儀明(1923) 秋吉台石灰岩を含む所謂上部秩父古生層の層位学的研究, 地質学雑誌, 30,227-243.