130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Poster

T3[Topic Session]Geopark to enjoy and learn about the earth and human activities

[1poster17-22] T3[Topic Session]Geopark to enjoy and learn about the earth and human activities

Sun. Sep 17, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T3_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T3-P-3] A special exhibition of stones at the Itoigawa Fossa Magna Museum where participants learn by touching using 3D printers

*Takahiko Ogawara1, Yosuke Ibaraki1, Suzuka Koriyama1, Takuma Katori1, Ko Takenouchi1 (1. Fossa Magna Museum)

Keywords:Itoigawa UNESCO Grobal Geopark, Fossa Magna Museum, 3D printer, Radiolarian

新潟県糸魚川市は,国石や新潟県の石に認定された宝石「ヒスイ」や,日本列島を東西に分断する大断層である糸魚川-静岡構造線など,地質資源に恵まれた町である.2009年には,日本初の世界ジオパークに認定され,地質資源を活かした地域開発を実践している.
糸魚川ジオパークの研究活動で中核となる施設が,糸魚川フォッサマグナミュージアムである.1994年に開館し,2015年にリニューアルした地質系の博物館として,糸魚川産のヒスイ,石灰岩の化石,糸魚川-静岡構造線と日本列島の誕生などのコンテンツを展示している.人口4万人の糸魚川市にある地方博物館として,企画展などの展示活動,ジオ講演会やジオツアーなど市民への普及活動,ヒスイ中の新鉱物の研究(糸魚川石の発見等)や新たな資料の発掘など収蔵研究活動の3本柱を軸に活動を推進している.

フォッサマグナミュージアムでは,年一回程度の間隔で特別展を開催してきた.近年の特別展の内容は,新潟焼山展(2016年),手取層群の化石展(2017年),宝石の国展・ヒスイ展(2018年),日本列島を変えた石展(2019年),栂海新道展(2021年),海のアート展・太古の海の化石展(2022年)である.
宝石の国展は,講談社で市川春子氏が連載している漫画とコラボレーションし,漫画とキャラクターと実際の宝石を展示するなどした.栂海新道展は,文化庁の補助金を活用し,大学・研究機関・博物館・地元山岳団体が協力して新潟県・富山県境の朝日岳周辺の調査を実施し,その成果を特別展として公表した.また,登山のバリアフリー化を目指し,360度カメラで登山風景を撮影し超広角プロジェクターで放映することで,特別展来館者が実際に山を歩いているような臨場感のある展示を実現できた.海のアート展は,現在問題となっている海洋プラスチックを利用したアート作品の展示会であり,地元小学校やアート作家と協力し展示物を製作した.

2023年7月15日から9月3日の期間,フォッサマグナミュージアムでは,特別展「石のまち糸魚川展」を開催した.市内を流れる河川である姫川沿いに存在する糸魚川-静岡構造線は,日本列島を地質的に分断する大断層であり,西側(青海地域)には日本が大陸時代に形成された古い時代の地層が,東側にはフォッサマグナを埋立てた新しい時代の地層が存在する.この糸魚川の大地を作っていた地層は,風雨や河川によって削剥され,長い年月をかけて海や川などの自然の力によって糸魚川の海岸に運ばれ,多種多様な石を海岸で探せるため「日本一の石ころタウン」・「石のまち糸魚川」と呼ばれている.
今回の石のまち糸魚川展では,このようなヒスイを始め糸魚川の石を楽しみながら学び,地質の多様性や保護保全の必要性について考える展示会となっている.また,展示物として3Dプリンタを活用したため紹介する.
糸魚川で産出するチャートは,放散虫や海綿の骨針などからなる珪質で緻密な岩石である.糸魚川市内の海岸では,赤褐色から暗緑色のチャートを採取でき,ヒスイと間違えやすいことから,来館者の興味も高い岩石である.博物館では,チャートは放散虫の化石からなる岩石であると説明しているが,放散虫は径0.05~0.1mmの微生物であり肉眼で観察することができない.また,顕微鏡や写真で形態を説明した場合も,放散虫の立体的な形状を理解することは難しい.今回の展示では,新潟大学理学部サイエンスミュージアムの協力で,チャート中の放散虫化石の3DデータについてX線マイクロCTを利用して取得し,3Dプリンタで立体的に出力した物を展示(図1)した.実物の岩石であるチャートの横に長径10cm程度の放散虫の立体模型を置き,来館者が手に取って形状を理解できるようにすることで,チャートという岩石の成因についてより良く理解することができるようになった.

今日の3Dプリンタの低価格化と高機能化によって,博物館の展示に応用する取組みが進められている(例えば,2010年に実施した九州国立博物館の古代中国青銅器に触れる展示など).3Dプリンタを活用することで,肉眼で観察することのできない微化石や岩石中の鉱物などを立体的に観察できる展示物を製作することができる.壊れやすく貴重な展示物など普段は手に触れることのできない物を複製し,気軽に触ることができるように工夫することも可能である.また,様々な標本の3Dデータが公開されており,これらのデータから3Dプリンタを利用して復元することで,手もとにない物品も展示することができる.
このように3Dプリンタを活用した展示活動には多くの可能性があり,色や質感,重量感,臭いなどの復元には難があるが,フォッサマグナミュージアムにおける今後の展示活動に積極的に取入れていけるよう,今後とも研究を進めていきたい.