130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T4[Topic Session]Paleogeographic and geotectonic link between Mesozoic Japan and Far East Asia: a new view for the post-20st century

[1poster23-24] T4[Topic Session]Paleogeographic and geotectonic link between Mesozoic Japan and Far East Asia: a new view for the post-20st century

Sun. Sep 17, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T4_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T4-P-1] Detrital zircon U–Pb dating in the Early Carboniferous Tsunatori Unit of the Nedamo Belt in the NE Japan

*Shogo AOKI1, Takayuki UCHINO2, Mayuko FUKUYAMA3, Ryu Nakano1 (1. Graduate School of International Resource Sciences, Akita University, 2. Geological Survey of Japan, AIST, 3. Graduate School of Engineering Science)

Keywords:Detrital zircon, U–Pb dating, Early Carboniferous, Nedamo Belt

日本列島を含むアジア大陸東縁部は、約5.2億年前に受動的大陸縁から活動的大陸縁へと移行し、それにともない付加体形成や弧火成活動が開始した。活動的大陸縁への移行後のテクトニクスや沈み込み帯内部の物質構造の進化は、付加体や火成岩体の地質学・岩石鉱物学・地球化学的な情報から推定することができる。しかしながら構造侵食や火成活動にともなう地殻の改変プロセスにより、現在の日本列島を含めたユーラシア大陸にはペルム紀以前の地質体は断片的にしか残されていないため、その推定の妨げとなっている。
東北日本北上山地には、ジュラ紀付加体からなる北部北上帯と先シルル紀基盤岩類およびシルル系-白亜系堆積岩から構成される南部北上帯に挟まれて、前期石炭紀と後期ペルム紀-前期三畳紀の付加体から構成される根田茂帯が狭長に分布する(永広・鈴木, 2003; 内野ほか, 2005など)。本研究では、日本列島最古の付加体である東北日本根田茂帯の前期石炭紀綱取ユニットの砕屑岩に着目し、それらに含まれる砕屑性ジルコンの複合化学分析(U–Pb年代、Hf同位体比、微量元素濃度)に基づき、同時代に形成された低温高圧型変成帯との比較から綱取ユニットのアジア大陸東縁部における位置付けを明らかにするとともに後背地火成活動史の復元を試みた。
綱取ユニットの砂岩は、ユニットの主岩相である凝灰岩-泥岩互層中に厚さ数mから十数mでレンズ状に散在する。それらの砂岩は、構成鉱物のモード組成によると、火山岩岩片から構成される“火山性砂岩”(QmFLt三角図上でLt成分が90%を超えるもの)と石英と堆積・火山岩片を豊富に含む岩片質砂岩(Qm成分が10-20%、Lt成分が80-90%)に大別される。本研究では、岩片質砂岩5試料と火山性砂岩1試料から、それぞれ344粒子と3粒子のジルコンを分離し、秋田大学大学院理工学研究科に設置されたLA-ICP-MSを用いてU–Pb年代測定を行った。その結果、岩片質砂岩のジルコンは400-3000 Maの広い年代値を示し、ヒストグラム上で400-550 Maに大きなピークを示す。これらの試料の最若クラスター年代は、それぞれ402.9±5.6 Ma、461.9±4.1 Ma、452.0±5.7 Ma、452.9±4.5 Ma、477.7±4.9 Maであった。火山性砂岩1試料は、2粒子が400-450 Ma、1粒子が約860 Maの年代値を示した。全ての試料で、付加体形成年代である前期石炭紀の年代値を示すジルコンは含まれていなかった。
400-550 Maにピークを示すという年代ヒストグラムの特徴は、西南日本に分布する低温高圧型変成岩体である三郡-蓮華帯や黒瀬川帯の砂質片岩に含まれるジルコンのコア年代においてもみられる (Tsutsumi et al., 2003, 2011; Yoshida et al., 2020; Matsunaga et al., 2021)。これらの地質体の低温高圧型変成作用は、後期デボン紀-前期石炭紀(370-340 Ma)に起きたことがジルコンの変成リム年代から示されており、これらの原岩が綱取ユニットと同時期に堆積し、堆積年代を示す火成ジルコンが含まれていないことが示唆される。
以上の砕屑性ジルコンU–Pb年代の類似性から、綱取ユニットと三郡-蓮華帯、黒瀬川帯木頭名片岩はいずれも同じ弧-海溝システム縁辺部で形成されたことを示唆する。そして、最若クラスター年代と堆積年代との年代ギャップは、中期デボン紀から石炭紀初期にかけて、後背地においてジルコン形成をともなう珪長質火成活動が行われていなかった、あるいは極小規模であったことを示唆する。
綱取ユニット砂岩に含まれる400-550 Maのジルコンは、当時ゴンドワナ大陸周縁部に位置した東アジア大陸東縁部において、海洋プレートが沈み込みを開始してから1億年間分の記録を保持している。本発表では、年代測定を行ったジルコンのHf同位体比や微量元素組成から、この時代の詳細な火成活動史の復元を試みた成果を発表する。
参考文献: 永広・鈴木 (2003), 構造地質 vol.47, 13-21; 内野ほか (2005), 地質学雑誌 vol.111, 249-252; Tsutsumi et al. (2003), JMPS vol.98, 181-193; Tsutsumi et al. (2011), Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., C, vol.37, 5-16; Yoshida et al. (2020), J. Metmorph. Geol. vol.39, 77-100; Matsunaga et al. (2021), Lithos, vol. 380-381, 105898