[T7-P-1] Tectonic setting of the Nonowaki and Mio bedded cupriferous iron sulfide deposits in the Outer Zone of Southwest Japan
Keywords:bedded cupriferous iron sulfide deposit, Nonowaki deposit, Mio deposit, host rocks of deposit, tectonic setting
1.はじめに
別子鉱山を中心とする層状含銅硫化鉄鉱鉱床の研究は明治時代に始まるが、層準規制型鉱床であることが明らかになり同生説が定着している。その後の地球化学的研究をもとにSato and Kase(1996)は鉱床の硫黄同位体の特徴から2タイプに分類する提案をおこなった(グループA:陸源性堆積物をともなわない海嶺での鉱床、グループB:陸源性堆積物に覆われた海嶺での鉱床)。本研究では西南日本外帯の層状含銅硫化鉄鉱鉱床である野々脇鉱床・三尾鉱床の地質および鉱床母岩の岩石学的検討を行った。
2.鉱床および周辺地質
野々脇鉱床は四国東部三波川帯に、三尾鉱床は紀伊半島中央部四万十帯北帯に位置する。野々脇鉱床は三繩ユニット下部の野々脇緑色片岩層に胚胎されており、露頭において鉱床と上下の母岩との整合的な関係が観察できる。また、三尾鉱床は麦谷コンプレックス中の玄武岩質火山岩中に胚胎される。珪酸塩鉱物組合せから野々脇および三尾両地域の変成作用はpumpellyite-actinolite相であることがわかる。
野々脇・三尾鉱床の鉱石鉱物は黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱から成り、磁硫鉄鉱は両鉱床とも六方磁硫鉄鉱および単斜磁硫鉄鉱のラメラから成ることが磁性コロイド法およびEPMA組成像から確認できた。両鉱床はpumpellyite-actinolite相の同一変成相であるが塊状鉱中の黄鉄鉱の粒径は、三尾鉱床の方がより小さく、またフランボイダル状組織が観察できることから、三尾鉱床が野々脇鉱床より低変成度で一部に鉱床生成時の初生的組織を保存していると考えられる。
三波川帯野々脇鉱床母岩の緑色片岩について主要元素および一部の希土類元素を含む微量元素について全岩化学組成分析を行った。主要酸化物組成、微量元素およびREE組成の特徴から野々脇鉱床の母岩となった玄武岩はN-MORBとしての特徴を有することが明らかになった。また、紀伊半島四万十帯北帯三尾鉱床周辺の玄武岩については残留単斜輝石判別図や発泡組織の検討を行った。その結果は四万十帯北帯の緑色岩類に関する先行研究とも調和的であり、鉱床母岩はN-MORBであると判断できる。しかし、鉱床から約1km離れた地点でアルカリ玄武岩も存在することが残留単斜輝石の組成から明らかになった。この岩石は混在岩中の玄武岩岩塊であり付加した海山起源の玄武岩と考えられる。
3.野々脇および三尾鉱床のテクトニックセッティング
野々脇鉱床周辺(三波川帯三繩ユニット下部)および三尾鉱床周辺(四万十帯北帯)では,広域変成作用の影響で原岩年代決定に有効な化石を見いだすことができないが、近年両地域周辺でのジルコン年代が報告されている(四国東部三波川帯三繩ユニット下部 : 約81Ma , Nagata et. al., 2019、紀伊半島中央部四万十帯北帯麦谷コンプレックス : 約90Ma, Shimura et. al., 2019)。ジルコン年代および四万十帯のプレート層序をもとにすれば、両鉱床とも四国四万十帯北帯、手結―谷山ユニットに相当すると推定される。野々脇鉱床および三尾鉱床はSato and Kase(1996)のジュラ紀末から白亜紀最初期に生成された層状含銅硫化鉄鉱鉱床と判断した。これらの鉱床は大陸からはなれた中央海嶺上(イザナギ-太平洋海嶺)で生成されたグループA型鉱床と指摘できる。
引用文献
Nagata, M., et. al., 2019, Island Arc, 28:e12306.
Sato, K. and Kase, K., 1996, The Islanid Arc, 5, 216-228
Shimura, Y., Tokiwa, T., Takeuchi, M., Mori, H. and Yamamoto, 2019, Island Arc, 28, e12325.
別子鉱山を中心とする層状含銅硫化鉄鉱鉱床の研究は明治時代に始まるが、層準規制型鉱床であることが明らかになり同生説が定着している。その後の地球化学的研究をもとにSato and Kase(1996)は鉱床の硫黄同位体の特徴から2タイプに分類する提案をおこなった(グループA:陸源性堆積物をともなわない海嶺での鉱床、グループB:陸源性堆積物に覆われた海嶺での鉱床)。本研究では西南日本外帯の層状含銅硫化鉄鉱鉱床である野々脇鉱床・三尾鉱床の地質および鉱床母岩の岩石学的検討を行った。
2.鉱床および周辺地質
野々脇鉱床は四国東部三波川帯に、三尾鉱床は紀伊半島中央部四万十帯北帯に位置する。野々脇鉱床は三繩ユニット下部の野々脇緑色片岩層に胚胎されており、露頭において鉱床と上下の母岩との整合的な関係が観察できる。また、三尾鉱床は麦谷コンプレックス中の玄武岩質火山岩中に胚胎される。珪酸塩鉱物組合せから野々脇および三尾両地域の変成作用はpumpellyite-actinolite相であることがわかる。
野々脇・三尾鉱床の鉱石鉱物は黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱から成り、磁硫鉄鉱は両鉱床とも六方磁硫鉄鉱および単斜磁硫鉄鉱のラメラから成ることが磁性コロイド法およびEPMA組成像から確認できた。両鉱床はpumpellyite-actinolite相の同一変成相であるが塊状鉱中の黄鉄鉱の粒径は、三尾鉱床の方がより小さく、またフランボイダル状組織が観察できることから、三尾鉱床が野々脇鉱床より低変成度で一部に鉱床生成時の初生的組織を保存していると考えられる。
三波川帯野々脇鉱床母岩の緑色片岩について主要元素および一部の希土類元素を含む微量元素について全岩化学組成分析を行った。主要酸化物組成、微量元素およびREE組成の特徴から野々脇鉱床の母岩となった玄武岩はN-MORBとしての特徴を有することが明らかになった。また、紀伊半島四万十帯北帯三尾鉱床周辺の玄武岩については残留単斜輝石判別図や発泡組織の検討を行った。その結果は四万十帯北帯の緑色岩類に関する先行研究とも調和的であり、鉱床母岩はN-MORBであると判断できる。しかし、鉱床から約1km離れた地点でアルカリ玄武岩も存在することが残留単斜輝石の組成から明らかになった。この岩石は混在岩中の玄武岩岩塊であり付加した海山起源の玄武岩と考えられる。
3.野々脇および三尾鉱床のテクトニックセッティング
野々脇鉱床周辺(三波川帯三繩ユニット下部)および三尾鉱床周辺(四万十帯北帯)では,広域変成作用の影響で原岩年代決定に有効な化石を見いだすことができないが、近年両地域周辺でのジルコン年代が報告されている(四国東部三波川帯三繩ユニット下部 : 約81Ma , Nagata et. al., 2019、紀伊半島中央部四万十帯北帯麦谷コンプレックス : 約90Ma, Shimura et. al., 2019)。ジルコン年代および四万十帯のプレート層序をもとにすれば、両鉱床とも四国四万十帯北帯、手結―谷山ユニットに相当すると推定される。野々脇鉱床および三尾鉱床はSato and Kase(1996)のジュラ紀末から白亜紀最初期に生成された層状含銅硫化鉄鉱鉱床と判断した。これらの鉱床は大陸からはなれた中央海嶺上(イザナギ-太平洋海嶺)で生成されたグループA型鉱床と指摘できる。
引用文献
Nagata, M., et. al., 2019, Island Arc, 28:e12306.
Sato, K. and Kase, K., 1996, The Islanid Arc, 5, 216-228
Shimura, Y., Tokiwa, T., Takeuchi, M., Mori, H. and Yamamoto, 2019, Island Arc, 28, e12325.