[T7-P-2] Age determination of chemostratigraphic units in REY-rich mud around Minamitorishima Island using ichthyolith biostratigraphy via a deep learning-based image detection system
Keywords:ichthyolith, biostratigraphy, chemostratigraphy, deep learning, REY-rich mud
2011年にKato et al. [1] は太平洋広域にレアアースを高濃度で含む「レアアース泥」を発見し,新たなレアアース資源となりうることを報告した.さらに,Takaya et al. [2] により,南鳥島周辺の日本の排他的経済水域南部に位置する約2,500 km2の海域に世界年間需要の数百倍ものレアアースが胚胎していると見積もられ,その開発に向けた期待が高まっている. Tanaka et al. [3] は,上述の南鳥島周辺海域で採取された49本の堆積物コアの全岩化学組成を検討し,多元素の特徴に基づく堆積層序 (化学層序) を定義することで,南鳥島レアアース泥を5つのユニットと3つのレアアース濃度ピークに分類した.これにより,レアアース泥を含む遠洋性粘土層同士を相互に対応づけることが可能となった. 南鳥島周辺海域のレアアース泥の堆積史を明らかにし,資源として重要なレアアースピーク層の成因を解明するためには,この化学層序の各ユニットの堆積年代が極めて重要な鍵を握る.各堆積層の年代を決定することによって,それぞれの化学層序ユニットの地球化学的な特徴が,いつ・どこで・どのようなイベントによって形成されたのかを議論できるようになると期待される.しかし,レアアース泥の堆積学上の区分である遠洋性粘土は,堆積年代の決定が非常に困難であることが知られている.遠洋性粘土は,海洋表層の生物生産性が低く大水深の環境で堆積するため,海底堆積物の年代決定に一般的に用いられる珪質・石灰質の微化石がほとんど産出しない.また,堆積速度が非常に遅いことから,地磁気の逆転を読み取ることも難しく,古地磁気層序年代の適用も困難である.これらの理由から,化学層序の各ユニットがいつ堆積したのかは未だ十分に解明されていない. この問題に対する解決策の1つとして,イクチオリス層序年代を用いたアプローチが有望と考えられる.イクチオリスとは魚類の歯や鱗の微化石を指し,通常の海水の条件下で溶解度が非常に小さいリン酸カルシウムで構成されているため,珪質や石灰質の微化石 (放散虫,有孔虫等) が溶解してしまう高圧の深海環境下でも良く保存される[4].先行研究 [5] において,これらの形態的特徴が広範に調べられ,体系的な分類が確立されている.実際に,発表者らのグループによる近年の研究でも,イクチオリス層序がレアアース泥の堆積年代決定に有効であることが確認された [6].しかし一方で,堆積物からのイクチオリスの検出には多大な労力を要することから,解析の効率化が新たな課題となっていた. そこでMimura et al. [7, 8] は,深層学習を用いて顕微鏡画像からイクチオリスを自動で検出する手法を提案した.これにより,イクチオリス検出の手間が大幅に低減し,多数の試料に対して効率的にイクチオリス年代決定を行うことが可能になった.北澤ら[9]は,この検出手法を南鳥島周辺で採取された3本のコア試料に適用した結果,最下層にあたるUnit V の堆積年代は64 Ma以前であることを示した. 本研究では,この年代決定手法をさらに南鳥島周辺海域の11サイトで採取されたコアに拡張することにより,南鳥島レアアース泥に見られる全ての化学層序ユニットの堆積年代を決定することを目的とする.本発表では,現在までに年代決定を完了したユニットの時代を報告し,南鳥島レアアース泥の堆積史について議論する.
<引用文献> [1] Kato et al. (2011) Nature Geoscience 4, 535-539. [2] Takaya et al. (2018) Scientific Reports 8, 5763. [3] Tanaka et al. (2020) Ore Geology Reviews 119, 103392. [4] Sibert and Norris (2015) Proceedings of the National Academy of Sciences 112(28), 8537-8542. [5] Doyle and Riedel. Scripps Inst. Oceanogr. 1-231 pp (1979). [6] Ohta et al. (2020) Scientific Reports, 10, 9896. [7] Mimura et al. (2022) Applied Computing and Geosciences 16, 100092. [8] Mimura et al. (2023) ESS Open Archive. DOI: 10.22541/essoar.168500340.03413762/v1 [9] 北澤ほか (2023), 日本地球惑星科学連合2023年大会.
<引用文献> [1] Kato et al. (2011) Nature Geoscience 4, 535-539. [2] Takaya et al. (2018) Scientific Reports 8, 5763. [3] Tanaka et al. (2020) Ore Geology Reviews 119, 103392. [4] Sibert and Norris (2015) Proceedings of the National Academy of Sciences 112(28), 8537-8542. [5] Doyle and Riedel. Scripps Inst. Oceanogr. 1-231 pp (1979). [6] Ohta et al. (2020) Scientific Reports, 10, 9896. [7] Mimura et al. (2022) Applied Computing and Geosciences 16, 100092. [8] Mimura et al. (2023) ESS Open Archive. DOI: 10.22541/essoar.168500340.03413762/v1 [9] 北澤ほか (2023), 日本地球惑星科学連合2023年大会.