[G-P-2] Features of weathered sandstone in the Nago Formation, Shimanto Belt, Okinawa-jima
Keywords:Shimanto Belt, Nago Formation, Kunigami Mahji, Rock weathering, Soilhardness test
はじめに
沖縄島の北部には,国頭マージと呼ばれる赤色から黄色を呈する風化土壌が分布する.国頭マージの母材は,国頭礫層と呼ばれる段丘堆積物のほか,砂岩,頁岩,千枚岩,緑色岩等の基盤岩類の強風化部など多岐にわたる.今回沖縄島北部において,国頭マージの形成プロセスを探るために,母材のうち四万十帯相当層である名護層砂岩露頭を対象に風化の特徴を記載した. なお、四万十帯砂岩の風化の特徴については,南部九州における西山・松倉(2002)などの研究があるが,南西諸島ではなされていない.
地質概要
四万十帯は相当層も含めると、関東から南西諸島まで分布する付加体である.沖縄島の北部には,北帯に属する白亜紀後期の名護層と南帯に属する古第三紀の嘉陽層が分布している.名護層の分布や名称は研究者によって異なるものの(馬場・内間,2016),岩相は千枚岩,緑色岩,砂岩などからなる.名護層からは,堆積年代を示す化石の産出報告はないが,再結晶白雲母のK-Ar年代が測定され,77.0~61.1Maおよび54.~37.1Maの変成年代が報告されている(小島ほか,1999).この変成年代より,名護層の堆積時代は後期白亜紀とみなされている(中江ほか,2010).名護層の泥質片岩や砂岩は新鮮部では暗灰色を呈するが,地表近くでは厚い風化殻を形成する.筆者らは沖縄島北部の大宜味村南部で確認された風化砂岩露頭を名護層に属するものと考え,研究対象とした.
研究手法
研究対象の露頭は,標高約160mの丘陵地帯に位置する比高約10mの切土斜面であり,強風化した中粒砂岩が露出する(添付写真).現地では肉眼観察により,地質構造や粒度,色調を記載した.また,風化の程度を硬さとして定量的に評価することを目的として,斜面長1m毎に山中式土壌硬度計を用いて地盤工学会基準に従い土壌硬度を計測した.なお,室内試験に供する試料を斜面長で約0.5m毎に採取した.室内では,現地で採取した試料より作成した岩石薄片で鏡下観察を行い,同時代の比較的新鮮な砂岩試料(大分県,佐伯亜層群堅田層)との比較を行った.
調査結果
調査対象露頭の頂部では,ほぼ南北の走向と約20°で西側へ傾斜する片理構造が確認され,この構造は一般的な名護層の片理面構造(北東-南西走向,北西傾斜)に近似する.砂岩を構成する砂粒子は中粒であり,露頭の上部から下部まで大きな変化は認められない. 調査対象の露頭では,風化作用は低標高部から高標高部へ向けて強くなる.風化砂岩の色調は,頂部より約3.5m(斜面長,以下同じ)までは,オレンジを基調とし黄色の斑状模様を含み,黄色の斑状構造にはスポットとして直径数mmの白色の粘土を伴うことがある.3.5m以深は次第に赤褐色へと変化する.また,亀裂沿いは黄色となる.土壌硬度は風化が進行する高標高部では約25mmであるが,標高を下げるにつれ次第に増加し最終的には約30mmに達した. 頂部より1.3m,4.1m,6.5m,8.5m,10.8mの5試料で薄片を作成して鏡下観察を行った.鏡下では,古土壌組織の一つであるIntertextic組織を示し,石英,粘土鉱物化した岩片もしくは長石類が認められる.基質は,低標高部では鉄-マンガン酸化物が顕著であるが,高標高部になると粘土鉱物となる.石英粒子は長軸が定方向に配列する傾向がある.また高標高部では,内部を集積粘土と石英粒子で充填される,直径約1~2mmの同心円状の配列が確認される.これは植物根の痕跡と考えられる.
考 察
当該露頭における名護層砂岩は,風化の進行に伴い長石類及び岩片が粘土鉱物に変化することで,岩石の組織や組成が大きく変化し,最終的に国頭マージと呼ばれる風化土壌へと進行する.粘土鉱物への変化は土壌硬度の減少として現れる.また,風化が進行することにより植物が育成することが可能となり,植物根の侵入がさらなる粘土鉱物の生成を助長していると考えられる. 今後は,X線分析による粘土鉱物の同定を行い,風化の進行過程との関係の整理を進める.
引用文献
馬場・内間,2016,沖縄島北部・名護層に産する含ザクロ石泥質片岩.地質学雑誌,122,127-132.
小島ほか, 1999,沖縄諸島, 名護層の変成作用とK–Ar 年代.日本地質学会関西支部会報No.125・西日本支部会報No. 113 合併号.
中江ほか,2010,20万分の1地質図幅「与論島及び那覇」,産総研地質調査総合センター.
西山・松倉,2002,風化による砂岩の岩石組織の変化:南九州における四万十帯砂岩の例,地質学雑誌,108,410-413.
沖縄島の北部には,国頭マージと呼ばれる赤色から黄色を呈する風化土壌が分布する.国頭マージの母材は,国頭礫層と呼ばれる段丘堆積物のほか,砂岩,頁岩,千枚岩,緑色岩等の基盤岩類の強風化部など多岐にわたる.今回沖縄島北部において,国頭マージの形成プロセスを探るために,母材のうち四万十帯相当層である名護層砂岩露頭を対象に風化の特徴を記載した. なお、四万十帯砂岩の風化の特徴については,南部九州における西山・松倉(2002)などの研究があるが,南西諸島ではなされていない.
地質概要
四万十帯は相当層も含めると、関東から南西諸島まで分布する付加体である.沖縄島の北部には,北帯に属する白亜紀後期の名護層と南帯に属する古第三紀の嘉陽層が分布している.名護層の分布や名称は研究者によって異なるものの(馬場・内間,2016),岩相は千枚岩,緑色岩,砂岩などからなる.名護層からは,堆積年代を示す化石の産出報告はないが,再結晶白雲母のK-Ar年代が測定され,77.0~61.1Maおよび54.~37.1Maの変成年代が報告されている(小島ほか,1999).この変成年代より,名護層の堆積時代は後期白亜紀とみなされている(中江ほか,2010).名護層の泥質片岩や砂岩は新鮮部では暗灰色を呈するが,地表近くでは厚い風化殻を形成する.筆者らは沖縄島北部の大宜味村南部で確認された風化砂岩露頭を名護層に属するものと考え,研究対象とした.
研究手法
研究対象の露頭は,標高約160mの丘陵地帯に位置する比高約10mの切土斜面であり,強風化した中粒砂岩が露出する(添付写真).現地では肉眼観察により,地質構造や粒度,色調を記載した.また,風化の程度を硬さとして定量的に評価することを目的として,斜面長1m毎に山中式土壌硬度計を用いて地盤工学会基準に従い土壌硬度を計測した.なお,室内試験に供する試料を斜面長で約0.5m毎に採取した.室内では,現地で採取した試料より作成した岩石薄片で鏡下観察を行い,同時代の比較的新鮮な砂岩試料(大分県,佐伯亜層群堅田層)との比較を行った.
調査結果
調査対象露頭の頂部では,ほぼ南北の走向と約20°で西側へ傾斜する片理構造が確認され,この構造は一般的な名護層の片理面構造(北東-南西走向,北西傾斜)に近似する.砂岩を構成する砂粒子は中粒であり,露頭の上部から下部まで大きな変化は認められない. 調査対象の露頭では,風化作用は低標高部から高標高部へ向けて強くなる.風化砂岩の色調は,頂部より約3.5m(斜面長,以下同じ)までは,オレンジを基調とし黄色の斑状模様を含み,黄色の斑状構造にはスポットとして直径数mmの白色の粘土を伴うことがある.3.5m以深は次第に赤褐色へと変化する.また,亀裂沿いは黄色となる.土壌硬度は風化が進行する高標高部では約25mmであるが,標高を下げるにつれ次第に増加し最終的には約30mmに達した. 頂部より1.3m,4.1m,6.5m,8.5m,10.8mの5試料で薄片を作成して鏡下観察を行った.鏡下では,古土壌組織の一つであるIntertextic組織を示し,石英,粘土鉱物化した岩片もしくは長石類が認められる.基質は,低標高部では鉄-マンガン酸化物が顕著であるが,高標高部になると粘土鉱物となる.石英粒子は長軸が定方向に配列する傾向がある.また高標高部では,内部を集積粘土と石英粒子で充填される,直径約1~2mmの同心円状の配列が確認される.これは植物根の痕跡と考えられる.
考 察
当該露頭における名護層砂岩は,風化の進行に伴い長石類及び岩片が粘土鉱物に変化することで,岩石の組織や組成が大きく変化し,最終的に国頭マージと呼ばれる風化土壌へと進行する.粘土鉱物への変化は土壌硬度の減少として現れる.また,風化が進行することにより植物が育成することが可能となり,植物根の侵入がさらなる粘土鉱物の生成を助長していると考えられる. 今後は,X線分析による粘土鉱物の同定を行い,風化の進行過程との関係の整理を進める.
引用文献
馬場・内間,2016,沖縄島北部・名護層に産する含ザクロ石泥質片岩.地質学雑誌,122,127-132.
小島ほか, 1999,沖縄諸島, 名護層の変成作用とK–Ar 年代.日本地質学会関西支部会報No.125・西日本支部会報No. 113 合併号.
中江ほか,2010,20万分の1地質図幅「与論島及び那覇」,産総研地質調査総合センター.
西山・松倉,2002,風化による砂岩の岩石組織の変化:南九州における四万十帯砂岩の例,地質学雑誌,108,410-413.