[G-P-14] Structural analysis of distributed faults at the trench in Nishihara Village, Kumamoto Prefecture.
Keywords:distributed fault, Kumamoto earthquake, trench survey, structural analysis, composite planar fabric
1.はじめに
2016年熊本地震で大きな被害を与えた布田川断層沿いには明瞭な変位を伴う地表地震断層が出現し、多くのトレンチ調査が実施されている(堤ほか,2018,上田ほか,2017など)。これまで我々は、メイントレースから離れた箇所での変位(副断層)を対象としたトレンチについても実施してきた。今回、LC-InSARによる「位相不連続ライン」(小俣ほか, 2017)が検出された熊本県阿蘇郡西原村小園地区において、メイントレースから離れた箇所での副断層の性状把握をおこなうためにトレンチ調査を実施した。また、フィールド調査で用いられる場合が多い構造解析をトレンチサイト内で実施し、断層メイントレースから離れたトレンチ地点における変位形成場の検討をおこなった。
2.断層と地層の概要
トレンチ内に認められる断層について、それぞれの性状よりF1、F2、F3に分類した。F1は1~8cm程度の開口部をもち、開口部には充填物を含まない。F2は剪断面の間隙に物質が充填する構造で、充填物は周囲の堆積物から構成される。F3は地層に変形を与え、密着した剪断面をもつ。見かけ10~30cmの変位を地層に与えており、フラワーストラクチャーが発達する箇所もみられる。
3.構造解析
トレンチ内で見出されたF1およびF3の断層データについて、シュミットネットによる下半球等面積投影を実施し、トレンドの解析を実施した。F1およびF3は概ねWNW-ESEからE-W走向(N80°W±10°)のものが多く、LC-InSARによる位相不連続ライン(約N60°E方向)とは斜交する。また、シュミットネットからは、F1はF3に比べて剪断面の傾斜角が大きい傾向が読み取れる。
4.活動履歴と変位形成場について
トレンチ内で見出された断層は不連続ラインと同様の方向のものは少なく、40°〜80°程度で斜交する方向が卓越する。これは剪断作用によって形成される複合面構造と類似しており、F1はT面、F3はR面に相当すると考えられる。よって、メイントレースから離れた箇所における副断層でも横ずれ変位が形成されていると考えられる。また、F1(熊本地震イベント)の構造解析から南北に近い引張応力方向が推定され、熊本地震の震源断層と同様に現在の九州中部の一般的な応力場(Matsumoto et, al. 2015)において形成されたと考えられる。
[引用] Matsumoto et, al.(2015) Earth, Planets and Space, 67:172. 小俣ほか (2017) 日本活断層学会2017年秋季学術大会講演予稿集 P-4. 堤ほか(2018)活断層研究49, P.31-39. 上田ほか(2017)日本地質学会第124 年学術大会講演要旨,p253.
2016年熊本地震で大きな被害を与えた布田川断層沿いには明瞭な変位を伴う地表地震断層が出現し、多くのトレンチ調査が実施されている(堤ほか,2018,上田ほか,2017など)。これまで我々は、メイントレースから離れた箇所での変位(副断層)を対象としたトレンチについても実施してきた。今回、LC-InSARによる「位相不連続ライン」(小俣ほか, 2017)が検出された熊本県阿蘇郡西原村小園地区において、メイントレースから離れた箇所での副断層の性状把握をおこなうためにトレンチ調査を実施した。また、フィールド調査で用いられる場合が多い構造解析をトレンチサイト内で実施し、断層メイントレースから離れたトレンチ地点における変位形成場の検討をおこなった。
2.断層と地層の概要
トレンチ内に認められる断層について、それぞれの性状よりF1、F2、F3に分類した。F1は1~8cm程度の開口部をもち、開口部には充填物を含まない。F2は剪断面の間隙に物質が充填する構造で、充填物は周囲の堆積物から構成される。F3は地層に変形を与え、密着した剪断面をもつ。見かけ10~30cmの変位を地層に与えており、フラワーストラクチャーが発達する箇所もみられる。
3.構造解析
トレンチ内で見出されたF1およびF3の断層データについて、シュミットネットによる下半球等面積投影を実施し、トレンドの解析を実施した。F1およびF3は概ねWNW-ESEからE-W走向(N80°W±10°)のものが多く、LC-InSARによる位相不連続ライン(約N60°E方向)とは斜交する。また、シュミットネットからは、F1はF3に比べて剪断面の傾斜角が大きい傾向が読み取れる。
4.活動履歴と変位形成場について
トレンチ内で見出された断層は不連続ラインと同様の方向のものは少なく、40°〜80°程度で斜交する方向が卓越する。これは剪断作用によって形成される複合面構造と類似しており、F1はT面、F3はR面に相当すると考えられる。よって、メイントレースから離れた箇所における副断層でも横ずれ変位が形成されていると考えられる。また、F1(熊本地震イベント)の構造解析から南北に近い引張応力方向が推定され、熊本地震の震源断層と同様に現在の九州中部の一般的な応力場(Matsumoto et, al. 2015)において形成されたと考えられる。
[引用] Matsumoto et, al.(2015) Earth, Planets and Space, 67:172. 小俣ほか (2017) 日本活断層学会2017年秋季学術大会講演予稿集 P-4. 堤ほか(2018)活断層研究49, P.31-39. 上田ほか(2017)日本地質学会第124 年学術大会講演要旨,p253.