[G-P-17] Research on groundwater quality and flow using microbiome analysis (Environmental DNA)
Keywords:Groundwater Flow, Microbiota Analysis, Environmental DNA, Next Generation Sequencer, PCoA Analysis
【1.はじめに】
微生物はあらゆる環境に生息しており、地下水においても存在が報告1)されている。細菌叢解析は、地下水に含まれるDNAから生息する細菌を検出・分類することができ、地下水の流動経路・混合率等を把握する先端技術として発展が期待されている。
本稿では、建設工事(トンネル、地すべり対策工)が予定されている周辺地下水を対象に細菌叢解析を行うことで、地下水の水質分類および流動検討に基づいて地下水影響を予察した事例を紹介する。
【2.トンネル工事による地下水影響の予察(水質分類)】
トンネル工事による渇水・減水の可能性を検討するため、湧水・井戸水・河川水を対象に主要イオン分析および細菌叢解析を実施した。当該地区は花崗閃緑岩を基盤とし、土石流堆積物・段丘堆積物が覆っている。イオン分析結果は、殆どの地点で炭酸カルシウム型(一般的な河川水~浅い地下水タイプ)に分類され、明瞭に区分することが困難であった。次に細菌叢解析を実施し細菌叢の門における相対存在量を比較した結果、河川近傍に位置する井戸水と河川の細菌叢パターンに類似性が見られ、河川水の地下水への混入が示唆された。これらの分析結果より、トンネル工事による井戸への影響は軽微と結論づけた。
【3.地すべり対策工による地下水影響の予察(地下流動検討)】
地すべり対策予定地の上流に位置する池水への工事影響を検討するため、細菌叢解析を実施し主座標解析を用いて池と地下水の関係性を把握し地下水流動を考察した。主座標解析の結果、細菌叢の特徴は第1と第2主成分に縮約され、第1主成分得点は池の水の寄与を反映していると考えられた。池より南側に位置する地下水サンプルは池サンプルの近くに配置された。北から南側への地下水の流動が推察でき、これは、地形および地下水等高線図による地下水流動方向と調和的である。一方、南東側に位置する地すべりブロック周辺では池とは大きく異なる得点であった。池の浸透水は地すべりブロックへの流向は想定されないものと考えられ、地すべり対策工事による地下水影響は軽微と結論づけた。
【4.まとめ】
地下水中の細菌叢を詳細に分類することにより、地下水の起源や分類の検討に適用できることが示された。また、特徴的な生物種に着目することにより、地下水流動(浸透経路)の検討にも適用可能であることが示された。今後、同様の細菌叢解析が数多く実施され、知見が更に蓄積されることで、有用な地下水流動検討手法として確立されることが期待される。
文献
杉山歩、辻村真貴、加藤憲二 2020 地下水流動系という視点からみる微生物動態研究の課題と展望 地下水学会誌 第62巻第3号p431~448
微生物はあらゆる環境に生息しており、地下水においても存在が報告1)されている。細菌叢解析は、地下水に含まれるDNAから生息する細菌を検出・分類することができ、地下水の流動経路・混合率等を把握する先端技術として発展が期待されている。
本稿では、建設工事(トンネル、地すべり対策工)が予定されている周辺地下水を対象に細菌叢解析を行うことで、地下水の水質分類および流動検討に基づいて地下水影響を予察した事例を紹介する。
【2.トンネル工事による地下水影響の予察(水質分類)】
トンネル工事による渇水・減水の可能性を検討するため、湧水・井戸水・河川水を対象に主要イオン分析および細菌叢解析を実施した。当該地区は花崗閃緑岩を基盤とし、土石流堆積物・段丘堆積物が覆っている。イオン分析結果は、殆どの地点で炭酸カルシウム型(一般的な河川水~浅い地下水タイプ)に分類され、明瞭に区分することが困難であった。次に細菌叢解析を実施し細菌叢の門における相対存在量を比較した結果、河川近傍に位置する井戸水と河川の細菌叢パターンに類似性が見られ、河川水の地下水への混入が示唆された。これらの分析結果より、トンネル工事による井戸への影響は軽微と結論づけた。
【3.地すべり対策工による地下水影響の予察(地下流動検討)】
地すべり対策予定地の上流に位置する池水への工事影響を検討するため、細菌叢解析を実施し主座標解析を用いて池と地下水の関係性を把握し地下水流動を考察した。主座標解析の結果、細菌叢の特徴は第1と第2主成分に縮約され、第1主成分得点は池の水の寄与を反映していると考えられた。池より南側に位置する地下水サンプルは池サンプルの近くに配置された。北から南側への地下水の流動が推察でき、これは、地形および地下水等高線図による地下水流動方向と調和的である。一方、南東側に位置する地すべりブロック周辺では池とは大きく異なる得点であった。池の浸透水は地すべりブロックへの流向は想定されないものと考えられ、地すべり対策工事による地下水影響は軽微と結論づけた。
【4.まとめ】
地下水中の細菌叢を詳細に分類することにより、地下水の起源や分類の検討に適用できることが示された。また、特徴的な生物種に着目することにより、地下水流動(浸透経路)の検討にも適用可能であることが示された。今後、同様の細菌叢解析が数多く実施され、知見が更に蓄積されることで、有用な地下水流動検討手法として確立されることが期待される。
文献
杉山歩、辻村真貴、加藤憲二 2020 地下水流動系という視点からみる微生物動態研究の課題と展望 地下水学会誌 第62巻第3号p431~448