[G-P-20] Characterization of internal structure of stratified tephra landslide using ground penetrating radar -An example of Nakashibetsu, Hokkaido, Japan
Keywords:ground penetrating radar, stratified tephra landslides, earthquake-induced landslides, landslide bodies, internal structures
【はじめに】
2018年北海道胆振東部地震で改めて認識された降下火砕堆積物のスライド(テフラ層すべり)の特徴は,移動体の大部分が崩壊前の層序を保ったまま移動・堆積していることである.一方,豪雨による斜面崩壊では移動体が流動化する場合が多いため,元の層序が保たれる可能性は低い.このような観点から,地すべり移動体の内部構造は,その成因を反映していると考えられるが,内部構造を露頭断面で確認できる機会は少ないため,検討例は少ない(田近,1995).著者らは,地すべり移動体の内部構造を非破壊かつ三次元的に可視化することを目的に,北海道中標津町武佐で見出されたテフラ層すべりの移動体を対象に,地中レーダー(Ground Penetrating Radar: GPR)探査ならびに地形・地質解析を行った.
【手法】
まず,テフラ層すべりの規模および移動体の形状を把握するため,UAVを用いたSfM-MVSによりDEMを作成し,地形解析を行った.次に,移動体末端付近を縦断する方向に露頭断面の一部が露出している箇所で詳細な露頭観察を実施し,移動体を構成する地質,層序,内部構造の記載を行った.
GPR探査は,pulseEKKO Proを使用し,100 MHzのアンテナを用いた.調査測線は,移動体を縦断・横断するように設定した(Fig. 1).a-a´測線は,GPR探査で得られた深度プロファイルと露頭で観察された移動体の内部構造の対比を行うため,露頭断面に沿うように設定した.
【結果】
地すべりの規模は,幅約150 m,長さ約350 m,高さ約30 mである.地すべりの最上部では比高数mの明瞭な滑落崖,その背後には後背亀裂,滑落崖直下には凹状地形(池),移動体中腹部には横断亀裂,末端部付近には現地表面からの比高2.5 m程度の圧縮リッジ,尖端部にはローブ状の地形がそれぞれ認められる.
露頭観察の結果,斜面下方の移動体(前方移動体と呼ぶ)が,斜面上方の移動体(後方移動体と呼ぶ)に逆断層を介して乗り上げる産状が複数認められる.この逆断層は,直線的に斜面下方へ25°程度で傾斜するものや,円弧を描いて直立に近い形態を示すものがある.後方移動体は,摩周l降下火砕堆積物(Ma-l; 14 ka)とそれ以降の摩周テフラ(Ma-k; 12 ka, Ma-i–j; 7.7–7.8 ka)を挟在する黒色土で構成され,変形を受けずに成層構造を示す.移動体の最下部には,粘土化した白色風化部が最大層厚10 cm程度で発達し,下位の礫混じり火山灰質土を覆う.移動体の最上部は排土・整地されているが,確認できるだけで層厚約2.5 mである.前方移動体は,逆断層付近の区間では,層理面が断層の傾斜方向に沿うように傾斜するが,それ以外の区間では局所的な斜面上方へ傾斜する逆断層が認められるものの,全体として変形は受けておらず,成層構造は保たれる.層序は後方移動体と同様である.
測線a-a´におけるGPR探査の結果,(1)深度約3 m以浅では,斜面なりに側方への比較的連続性の良い反射面群(Continuous reflective surfaces: CRSs),(2)CRSsの基底には,特に連続性の良い反射面(Continuous base surface: CBS)が認められる(Fig. 2).また,CRSsの不連続性が複数の境界面(Boundary surface: BS)を介して認められるが,CBSはBSに切られていない.CBSよりも深い深度では,放物線を描く反射面が卓越する. 他の測線においても,測線a-a´と同様,移動体の大部分でCRSs,一部で斜面下方・上方へ傾斜するBSが認められる.また,圧縮リッジやローブでは,CRSsがBSを介して積み重なる.
【考察】
測線a-a`の深度プロファイルと露頭観察の地質構造の対比に基づくと,CRSsは成層したテフラ構造,CBSは移動体とその下位の礫混じり火山灰質土との境界にそれぞれ対応する.BSは,露頭で観察される断層の位置・深度・傾斜方向が一致すること,移動体の下限であるCBSを切っていないことから,逆断層に対応する.CBSよりも下位に見られる放物線は,礫を特徴づける反射面としてよく知られており,礫混じり火山灰質土の層相と整合する.
他の測線で得られた深度プロファイルにおいても,CRSsが卓越することから,移動体の大部分は成層したテフラ構造を保っていると理解される.BSは,(1)滑落崖の後背や移動体中腹部の引張場では正断層系の変形でホルスト-グラーベン構造,(2)圧縮リッジやローブの圧縮場では逆断層系の変形で覆瓦構造を示すと解釈される.講演では,これらの結果からGPR探査の有用性やテフラ層すべりの成因について議論する予定である.
【文献】田近,1995,所報告.
2018年北海道胆振東部地震で改めて認識された降下火砕堆積物のスライド(テフラ層すべり)の特徴は,移動体の大部分が崩壊前の層序を保ったまま移動・堆積していることである.一方,豪雨による斜面崩壊では移動体が流動化する場合が多いため,元の層序が保たれる可能性は低い.このような観点から,地すべり移動体の内部構造は,その成因を反映していると考えられるが,内部構造を露頭断面で確認できる機会は少ないため,検討例は少ない(田近,1995).著者らは,地すべり移動体の内部構造を非破壊かつ三次元的に可視化することを目的に,北海道中標津町武佐で見出されたテフラ層すべりの移動体を対象に,地中レーダー(Ground Penetrating Radar: GPR)探査ならびに地形・地質解析を行った.
【手法】
まず,テフラ層すべりの規模および移動体の形状を把握するため,UAVを用いたSfM-MVSによりDEMを作成し,地形解析を行った.次に,移動体末端付近を縦断する方向に露頭断面の一部が露出している箇所で詳細な露頭観察を実施し,移動体を構成する地質,層序,内部構造の記載を行った.
GPR探査は,pulseEKKO Proを使用し,100 MHzのアンテナを用いた.調査測線は,移動体を縦断・横断するように設定した(Fig. 1).a-a´測線は,GPR探査で得られた深度プロファイルと露頭で観察された移動体の内部構造の対比を行うため,露頭断面に沿うように設定した.
【結果】
地すべりの規模は,幅約150 m,長さ約350 m,高さ約30 mである.地すべりの最上部では比高数mの明瞭な滑落崖,その背後には後背亀裂,滑落崖直下には凹状地形(池),移動体中腹部には横断亀裂,末端部付近には現地表面からの比高2.5 m程度の圧縮リッジ,尖端部にはローブ状の地形がそれぞれ認められる.
露頭観察の結果,斜面下方の移動体(前方移動体と呼ぶ)が,斜面上方の移動体(後方移動体と呼ぶ)に逆断層を介して乗り上げる産状が複数認められる.この逆断層は,直線的に斜面下方へ25°程度で傾斜するものや,円弧を描いて直立に近い形態を示すものがある.後方移動体は,摩周l降下火砕堆積物(Ma-l; 14 ka)とそれ以降の摩周テフラ(Ma-k; 12 ka, Ma-i–j; 7.7–7.8 ka)を挟在する黒色土で構成され,変形を受けずに成層構造を示す.移動体の最下部には,粘土化した白色風化部が最大層厚10 cm程度で発達し,下位の礫混じり火山灰質土を覆う.移動体の最上部は排土・整地されているが,確認できるだけで層厚約2.5 mである.前方移動体は,逆断層付近の区間では,層理面が断層の傾斜方向に沿うように傾斜するが,それ以外の区間では局所的な斜面上方へ傾斜する逆断層が認められるものの,全体として変形は受けておらず,成層構造は保たれる.層序は後方移動体と同様である.
測線a-a´におけるGPR探査の結果,(1)深度約3 m以浅では,斜面なりに側方への比較的連続性の良い反射面群(Continuous reflective surfaces: CRSs),(2)CRSsの基底には,特に連続性の良い反射面(Continuous base surface: CBS)が認められる(Fig. 2).また,CRSsの不連続性が複数の境界面(Boundary surface: BS)を介して認められるが,CBSはBSに切られていない.CBSよりも深い深度では,放物線を描く反射面が卓越する. 他の測線においても,測線a-a´と同様,移動体の大部分でCRSs,一部で斜面下方・上方へ傾斜するBSが認められる.また,圧縮リッジやローブでは,CRSsがBSを介して積み重なる.
【考察】
測線a-a`の深度プロファイルと露頭観察の地質構造の対比に基づくと,CRSsは成層したテフラ構造,CBSは移動体とその下位の礫混じり火山灰質土との境界にそれぞれ対応する.BSは,露頭で観察される断層の位置・深度・傾斜方向が一致すること,移動体の下限であるCBSを切っていないことから,逆断層に対応する.CBSよりも下位に見られる放物線は,礫を特徴づける反射面としてよく知られており,礫混じり火山灰質土の層相と整合する.
他の測線で得られた深度プロファイルにおいても,CRSsが卓越することから,移動体の大部分は成層したテフラ構造を保っていると理解される.BSは,(1)滑落崖の後背や移動体中腹部の引張場では正断層系の変形でホルスト-グラーベン構造,(2)圧縮リッジやローブの圧縮場では逆断層系の変形で覆瓦構造を示すと解釈される.講演では,これらの結果からGPR探査の有用性やテフラ層すべりの成因について議論する予定である.
【文献】田近,1995,所報告.