[G-P-22] Hazard monitoring using InSAR analysis and slope vector analysis
近年日本国内において、台風、ゲリラ豪雨、地震などに伴う洪水や土砂災害が毎年のように発生している。本研究は、主にDEM とSARデータを用いて土砂災害に関する防災・減災に寄与する方法を考察するものである。具体的には、干渉SAR解析の結果とDEMデータを用いた土砂災害発生前後の地盤変動の抽出とモニタリングの可能性を考察するものであり、発災危険地域の迅速な把握を目指すものである。これまで、2021年7月3日に土石流が発生した静岡県熱海市伊豆山地区の逢初川周辺地域や平成30年北海道胆振東部地震により被災した北海道厚真町などを中心に、過去に土砂災害が発生した場所で、さらに台風19号の被災地である宮城県、関東北部地域、長野県、愛知県、広島県南西部、岡山県南部、愛媛県、佐賀県などをテスト解析地として選定してきた。これらの地域は、近年、地震や台風による豪雨などが引き金となって土砂災害が発生または河川の決壊や砂防ダムの放水などで洪水に見舞われた地域である。これらの地域は、土砂災害の原因やタイプなどにより分類することもできる。使用データは各種DEMデータとALOS-2/PALSAR-2(レベル1.1,偏波:HH,入射角:34.3°)、Sentinel-1A/1B(VV:水平偏波とVH:クロス偏波)などを用いた。解析結果からは、崩壊跡だけでなく、未崩壊の変位地点を抽出できる可能性がある。また、Sentinel-1A/1BのVHクロス偏波画像からは水害の分布区域がかなり正確に抽出され、ハザードマップとの対比でもよい一致を示していることが分かっており、これらの画像データは土石流などの水分を多く含んだ土砂の流出域、つまり崩壊の危険性が高い地点の抽出にも大変有効である。また、解析結果の表示手法においてHISカラーモデルを応用することによって、単純でわかり易く直感的理解が可能な表示を目指し表現方法の工夫を試みることで、その効果を確認した。データ解析を用いたモニタリングを実運用するためには、対象地域の地質や地形、起こりうる地質現象や気象現象の特徴を十分考慮し、平時から対象地域に関するベースとなる情報を蓄積整備し、またそれらの地域的特性に合った解析パラメータを決定することが重要であると思われる。しかし、特にSARデータなどはデータ取得時の地形や天候など様々な要因がデータの質に及ぼす影響が強く、例えば崩壊地と非崩壊地の分離性が不安定で誤検出が多いことなどいまだ問題点も多く、改善の余地がありそれらは今後の課題である。