[G-P-24] Efforts of Local Government Research Institution for Improving General Public's Disaster Literacy.
Keywords:Disaster Literacy, Active Fault, Local Goverment Research Insiteution, Miura Peninsula
「活断層」という言葉が一般市民に認知されたのは、おそらく1995年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)以降であろうと思われる。しかしながらその大多数が活断層という言葉は知っていてもこれを正しく理解しているかと言えばそうとも限らない。一例として、活断層とは一般に第四紀(後期)に活動し今後も活動する可能性のある断層のことであるが、多くは断層すべてを活断層と捉えてしまっている場面がよく見られる。 神奈川県温泉地学研究所では、研究所の成果の普及啓発や一般市民の防災リテラシー向上を目的として、地震、火山、温泉、地下水、地質に関する講演会への講師派遣や所内見学と併せた講話等を行っている。地震や地質分野の学習ニーズは、神奈川県内の地元自治会、自主防災隊、消防などに高く存在しており、年間で平均70件程度、直近に地震災害等があれば年間100件を超える依頼を受けて実施している。例えば筆者がとくに活断層について講話を行う場合、まずは断層とは何か?から始めて、断層と活断層の違い、海溝型地震と活断層型地震の違いなどを説明し、次に実際に近年発生した活断層型地震(2016年熊本地震、2008年岩手宮城内陸地震、1995年兵庫県南部地震など)を事例に地震の被害状況などを紹介する。そして神奈川県内にどれくらいの活断層が存在し、それぞれの活断層が政府の地震調査委員会でどのように長期評価されているのか(地震規模や30年確率など)、さらには神奈川県地震被害想定においてどのような被害が想定されているのかを説明する。しかしながら、これだけで講話を終えるとその瞬間は理解したとしても、しばらくすればまた忘れてしまうことになるので、最後に聞き手にとって最も身近な防災対策の重要性、例えば発災直後に即死しないよう家を耐震化し家具を固定する、3日分の水と食料を備蓄する、自助・共助・公助の大切さなどを話すことにしている。 文部科学省では、令和5年度より3か年計画で「三浦半島活断層群(主部/武山断層帯)における重点的な調査観測」(研究代表者:東京大学地震研究所 石山達也准教授、参画機関:東京大学地震研究所、防災科学技術研究所、神奈川県温泉地学研究所)が実施されることとなり、温泉地学研究所はサブテーマ4「地域連携勉強会」でメンバーとして参画することとなった。本プロジェクトの公募要項では、地震規模及び長期的な発生時期の予測精度の高度化、断層帯周辺における地殻活動の現状把握の高度化、強震動の予測精度の高度化等の調査観測研究を実施することはもちろんのこと、「効率的かつ効果的な活断層調査を実施するため、関係の自治体等と連携を図るとともに、研究成果を地域へ普及・還元する観点から、必要に応じ、これら事業期間を通じて自治体等と連携し、広報等の情報発信を実施する。」ことが求められている。温泉地学研究所は神奈川県くらし安全防災局という広域自治体組織の一部を成す研究機関であることから、基礎自治体である市町を巻き込んだ効果的な情報発信を行う上でアドバンテージがあるものと考えている。 そこでまず初年度は自治体、市民団体、インフラ事業者等と協働・連携し、一般市民の活断層に関する認識およびニーズ調査をアンケート形式で実施することを想定している。活断層に関する認識については、どれくらい活断層や地震防災について理解しているかを問い、ニーズについては、プロジェクトメンバーを講師とした講演会、活断層型地震を想定した図上訓練などの防災訓練、トレンチ調査や物理探査などの見学会、関連する地質巡検などにどれくらいのニーズがあるのかを調査したいと考えている。2年目ではそのアンケート結果をもとに地域の防災対応を考える上での課題とニーズを掘り下げて地域連携勉強会を実施したいと考えている。最終年度はさらにそれを発展させて、地域の防災対策への反映、DIG形式等を用いたワークショップによる検証などを行い、本プロジェクトを契機とした地域ネットワークが構築されることを期待している。本発表では、これまでの温泉地学研究所におけるアウトリーチ活動の内容について紹介し、「三浦半島活断層群(主部/武山断層帯)における重点的な調査観測」プロジェクトにおける初年度の取り組みの経過報告を行う。